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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1176話:さらに突っ込んだ話

「……ヤバいな」

「何がです?」

「飛空艇の話がまるで漏れてこないことがだよ。どうやら今でも機密扱いみたいだね」


 記者トリオがひどい目に遭っても可哀そうだから。

 そしてあたしも記者トリオを使えなくなると損だから。


「主席執政官閣下は、わざわざ記者さん達のいるところで飛空艇の話を出したでしょ?」

「「「!」」」

「飛空艇計画自体が秘密なのか、落とされたことが内緒なのか。あるいは魔力炉っていう先進技術が使われてたんだけど、その情報が漏れちゃいけないのかもしれないな。あたしも帝国政府の事情や魔道研究については知らないから、どこに地雷があるかわかんない。この件に関しては頭から尻尾まで他言無用だよ」

「「「わかりました」」」

「この前の侍女誘拐事件についてはシャレですんでも、今回はマジだぞ? 国家機密漏洩がどんだけの罪になるか知らんけど」

「「「はい」」」

「主席執政官ドミティウス殿下が優秀な人だってことは今日会ってわかった。その彼が今後の新聞記事をチェックしないなんてことは絶対にないぞ? スクープに目が眩んだり油断してポロっと記事にしちゃったりなんて厳禁ね」

「「「は、はい……」」」

「あたしも首ちょんぱされた記者さん達と面会なんて嫌だからさー。美少女精霊使いを泣かせんなよ?」

「「「……」」」


 こんだけ脅しとけば大丈夫だろ。

 飛空艇については事前もかなり厳密な秘密が守られていた。

 今だっていくら注意してもし足りない。


「し、しかし何故ドミティウス主席執政官閣下は、私達に飛空艇についてのヒントを?」

「記事にしていいことダメなことを、記者さんがどれほど把握できるかを知りたかったってこともあるだろうけど……」


 もっと意地悪く考えれば、新聞を潰すために罠張ったとも考えられるが?

 ただ実際に飛空艇のことが市民に漏れたって、実は帝国政府にダメージがあるわけじゃない。

 だから言っても構わないって頭があったんだろう。


「……それは二次的な理由だろうな。まー政権のイメージを良くしたいんじゃないの? ヤマタノオロチ退治のヒロインであるあたしに言うこと聞かせたくて、お前の悪事は知ってるぞーっていう先制の奇襲をかけたい。記者さん達がいたけど、計画は変更しなかったということじゃないかな」

「なるほど?」

「わかりにくい? つまり次期皇帝レースを見据えて、時の人のあたしが主席執政官閣下の下についたってことを演出したいがための印象操作だぞ?」

「「「あっ!」」」


 なかなか主席執政官第二皇子は凝ったことをしてきたのだ。


「記者さん達は巻き添え食ったようなもん。ごめんね」

「でもユーラシアさんは男爵を断っていらしたですよね?」

「そりゃそーだ。あたしはプリンスルキウスを応援したいじゃん? 主席執政官サイドだぞーって見られるのは嫌だもん」

「先ほどの会見の水面下でそんな攻防が……」

「で、ではフィフィリア嬢とヘルムート様については?」


 あたしの撒いたエサだ。

 うまいことかかったので、第二皇子がトリックに気付く前に話を進めておかないと。


「フィフィが新男爵になれば、ババドーン元男爵の恥は雪がれたってことだよ。閣下はババドーン元男爵の実家エーレンベルク伯爵家にすげー感謝されるじゃん?」

「はい、わかります」

「ヘルムート君でも同じだよ。閣下は、アーベントロート公爵家を味方にできる可能性が高いと考える。魔物退治に功があったあたしが、自分が男爵になる代わりにどっちかをお勧めするって言ったなら、多分通っちゃうんだな」


 今日の手応えからしてこれは間違いない。


「閣下にすれば、あたしはどこぞのウマの骨に過ぎないんだよ。今注目されてるだけで門地のないあたしが、後々まで頼りになるかなんてわかんないと考えてる。でもエーレンベルク伯爵家やアーベントロート公爵家に恩を売れるなら、次期皇帝を争う身としては確実な利益でしょ?」

「だからユーラシアさんを男爵にという案を撤回した……」

「そゆこと。角が立たないように断るのって難しいんだぞ? さすがあたし!」


 ん? まだ納得いかないことある?


「一つわからないことが」

「何だろ?」

「エーレンベルク伯爵家やアーベントロート公爵家がドミティウス主席執政官派になってしまうことは、ルキウス様を推したいユーラシアさんにとって都合がよろしくないのでは?」

「そう思う?」

「「「ヒッ!」」」


 ニッとキメ顔を見せると、記者トリオが一斉に息を呑む。

 怖くないとゆーのに。


「詳細はまだ言えないけど、新男爵が決まるとプリンスルキウスにとって追い風になるんだ」

「ええ? 何故でしょう?」

「言えることだけ教えてあげる。あたしの提案に乗って新男爵を決めると、叙爵や人事に関してあたしは影響力を持つって、周りの人に思われちゃうんだな」

「「「あっ!」」」


 これ多分主席執政官閣下は気付いてないか、軽視しているのだ。

 実績があると説得力が違うぞ?

 次期皇帝争いには関係ないかもしれんけど、あたしが帝国で人脈を形成するのにかなり有効と思われる。


「以上でお話はお終いでーす」

「最後にルキウス様について教えてもらいたいのですが」

「あ、忘れてた。プリンスが在ドーラ大使に就任した時って、帝都で発表がなかったらしいじゃん?」

「はい」

「だけじゃなくて、随員が一人もなかったんだよ」

「「「えっ?」」」


 これはドーラ側もビックリでした。


「異常でしょ? つまり事実上の島流しで、仕事するなっていう帝国政府の意思表示だったわけ。でも大使が働いてくれないんじゃドーラは困っちゃうし、かといってドーラがプリンスに人をつけたら、帝国に恨まれそうじゃん?」

「ありそうですね」

「だからプリンスのレベルを五〇まで上げて、暴漢とかには自分で対処してもらうことにしたんだ。第一皇子のお葬式ですごく注目されるようになったのは、レベル上昇で固有能力の『威厳』が効くようになったから」

「レベルを上げたというのはよくわかりませんが」

「プリンスはドーラへ来て一皮剥けたと、簡単に考えりゃいいよ。クリークさんとマックスさんは、プリンスが私費で雇う形になってる」


 さて、リリーも待ってるだろうし。


「じゃねー。また明日も帝都に来るよ」

「「「ありがとうございました!」」」

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