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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1175話:飛空艇の裏話

「ごちそうさまっ! おいしかった!」


 ヤマタノオロチ退治のヒロインが外を歩いていると人が集まってしまうかもとのことで、新聞社で御飯を食べさせてもらった。

 人気者はツラいぜ。

 とゆーか新聞記者トリオがもっと突っ込んだ話を聞きたいだけなんだろうけど。


「記者さん達は同じ新聞社の人達だったんだねえ。知らなかったよ」

「ええ。担当が大衆向け日刊紙、商人知識人向け日刊紙、旬刊紙の違いはありますけど」

「なるほどなー」


 客層を変えて売るという発想か。

 購買人口が多いとそんなこともできるんだな。

 帝都だけでドーラの一〇倍くらいの人口があるらしいからなー。

 やっぱ人の数はパワーだわ。


「それでですね、ユーラシアさん。聞きたいことがあるんですが」


 恐る恐るといった様子で話しかけてくる新聞記者。

 わかってるわかってる。

 もう主席執政官第二皇子が言っちゃったから、秘密にすることないわ。


「飛空艇をユーラシアさんが落としたというのは?」

「聞きたくなっちゃうよねえ。でもこれ知ると後戻りできないぞ? 記事にもできないけどいいかな?」

「「「はい」」」

「おお、ジャーナリストの顔だね」


 軽い笑い。

 どこから話そうか。


「対ドーラ決戦兵器として帝国が飛空艇を開発してたのはこの前話した通り。ただ、ドーラに投入する前に試験飛行があったんだ」

「当然ですね。どこに?」

「テンケン山岳地帯の聖火教徒の集落」

「あっ、不穏な噂のあった?」

「そうそう」


 かなり広まってる噂だな。

 パラキアスさん悪いやつ。


「たまたまあたしは『アトラスの冒険者』のクエストの関係で、山の集落を元々知ってたんだよ。汎神教徒が多い関係か知らんけど、帝国では聖火教徒があまりよく思われてないみたいだね。でも実際には山の集落は貧しくともいい人ばっかりで、帝国に対して刃向かおうなんてことはなかった」

「そうだったんですか」

「でも反乱の噂があること、飛空艇の試運転が必要なこと、山の集落を爆撃しても他に被害が及ばないことっていう条件が重なって……」

「聖火教の集落は攻撃されることになった?」

「ひどいですね!」

「ひどいんだよ。戦争なんてのは大体我が儘な思惑が絡んでるもんだ」


 あたしも自分が我が儘なことは自覚している。

 でも人口が減ると損くらいのことはわかってるわ。

 あたしは損なことが嫌い。


「罪なき知り合いがかわいそーな目に遭うとなると、あたしとしても放っておけないじゃん? 集落の住民全員を転移でドーラに連れてきて、諸悪の根源飛空艇はあたしが飛行魔法で乗り込んで落とした」

「「「……」」」

「帝国では事故で失われたことになってるのかもしれないけど、今のが真相だよ」

「衝撃的な裏事情です……」


 押し黙る記者トリオ。


「で、飛空艇の艦長がクリークさんだったんだ」

「「「えっ?」」」


 まービックリって反応になるだろう。


「クリーク少将更迭の裏にはそんな事情があったのか……」

「しかし何故ドーラの、しかもルキウス様の下に?」

「飛空艇ってかなり期待されてた計画みたいなんだ。飛空艇落とした時にクリークさんとは結構話してさ。任務失敗で左遷されちゃうって話だったから、ドーラにおいでって誘ったの」

「誘ったって……」

「あたしはドーラをいい国にしたいんだよね。優秀な人はドーラに来て欲しいの」

「ではマックス中佐も?」

「うん。飛空艇を落としてから、あたしは半月くらい山岳地帯にこもってた。ほれほれ、山で反乱だぞードーラなんかに構ってる場合じゃないぞーって作戦ね。マックスさんはその時あたしを捕まえろーって攻めてきた、歩兵部隊の隊長。やっぱり優秀だからドーラに誘った。プリンスルキウスについては事情が異なるからあとでね」


 記者トリオが唖然としてるけど、ドーラには人材が足りないんだってば。

 使えそうな人はどんどんスカウトするよ。

 敵とか味方とか関係ないわ。

 もう少し話しとくか。


「最後にリモネスのおっちゃんが一人で山登って来たの。おっちゃんと知り合ったのはその時だよ。さっきも言ったけど、あたしはドーラをいいところにしたいっていうポリシーがあるじゃん? 移民にしても貿易にしても、ドーラは帝国と仲良くしないと未来がないから、ドーラ人たるあたしが帝国内で怪しいことしてるってバレるのは大変よろしくなかった。で、おっちゃんにあたしのこと誤魔化しといてって頼んだんだ」


 実際にはリモネスさんが山に来た時には、既にドーラが独立してたわけだが。


「リモネス氏を引き込んだんですか? ど、どうやって?」

「取り引きだよ。おっちゃんが聖火教徒ってのは知ってる?」

「「「はい」」」

「テンケン山岳地帯の聖火教徒が反乱起こしたなんて広まると、他の聖火教徒も疑惑の目で見られるじゃん? だからあたしは聖火教徒じゃないよって偽装してたんだ」

「偽装なんてできるんですか?」

「うちには悪魔がいるから」

「「「あっ!」」」


 ヴィルが目立てば悪魔を嫌う聖火教徒ではなく、悪魔を使役する胡乱な団体の仕業と思わせることができる。

 当初は帝国在住の聖火教徒に対するサービスのつもりだった。


「バーターというわけですか。最初からリモネス氏が送り込まれることを予想していた行動だった?」

「そんなわけないじゃん。リモネスさんなんていうヤバい人がいるってことすら知らなかったわ。犠牲を少なくすること、なるべく迷惑をかけないことを優先してたら、たまたまうまい結果になったってだけだよ。飛空艇を落としたのだって、帝国とケンカしたかったからじゃないぞ? 一番人死にが少なくてすむからだった」

「ユーラシアさんの考え方は美しいですねえ」

「身も心も顔も美しいんだよ」


 アハハと笑い合う。


「ところで聞いときたいことがあるんだ。飛空艇についての情報って、帝国本土では流れてないの?」

「全くと言っていいほど、確実な話はありません」

「ええ、軍人からチラッとそういう噂を聞いたってくらいで。突っ込んでもそれ以上は教えてもらえませんでした」


 どうやら飛空艇は機密事項で、関係者から話は漏れないってことだな。

 そしてテンケン山岳地帯は魔物のいる渓谷で隔絶されている。

 行くのは政府関係者ばかりでわざわざ足を運ぶ物好きな一般人はいないから、現地からの情報もないんだろう。

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