第1170話:パワーカードも進化する
フイィィーンシュパパパッ。
「アルアさん、こんにちはー!」
「はいよ、アンタはいつも元気だね」
「お土産、お肉だよ」
「いつもいつもありがとうよ」
ユニコーンの平原から帰宅後、クララに夕御飯の用意を任せている間、アトムとともにパワーカード工房にやって来た。
「お姉さま!」「ユーさん!」
「エルマにもお肉あげるね。ゼンさん、『ユニコーンの角』手に入ったぞお!」
「本当かよ! さすがだぜ!」
「お姉さま、すごいです!」
「ハッハッハッ、すごいんだよ。何本いる?」
ポカンとするゼンさん。
「えっ? 一本あれば十分だぜ?」
「待った。アンタ何本『ユニコーンの角』持ってるんだい?」
「えーと、一一本だね」
「「「えっ?」」」
唖然とする三人。
以前ゲレゲレさんも、『ユニコーンの角』のクエストは高難度だって言ってたな。
一般には難しいって認識なのかもしれんけど、ウルトラチャーミングビューティーにとってはお茶の子さいさいだわ。
「ユニコーンが住処にしてる平原行ったらわーっと集まってきちゃって。ニンジンあげたら角くれたの」
「アンタだと普通じゃあり得ないことがあるんだね」
「イベントが転がり込んでくると思えば、楽しいことではあるよ」
「それにしちゃあ、ユーさん浮かない顔じゃねえか」
「うーん、ユニコーンは美少女に心を許すんだと思ってたんだよ」
「という伝説は、わたしも聞いたことがあります」
「ユニコーンの気持ちがちょっとわかったんだけど、どーも一概にそうとは言えないみたいで」
「ふうん、じゃあどういうカラクリなんだい?」
「『愉快な』美少女が好きみたい」
笑うな。
あたしもへこんでるんだから。
まーでも特に工夫しなくても、あたしはユニコーンと仲良くできるらしいとゆーことはわかった。
ナイスなことだとポジティブに捉えよう。
「素材は換金していくかい?」
「お願いしまーす」
残り交換ポイントは二一一一となる。
随分素材溜まってたからな。
「ん? 『ユニコーンの角』は二本だけの交換かい?」
「何かで使う気がするんだよね。塔の村のコルム兄も欲しいって言ってたし」
ユニコーンの角が生え変わるまでにどんだけかかるか詳しいことは知らんけど、普通に考えて何ヶ月とかかるはず。
誰かが緊急に必要になっても、今は角持ちのユニコーンがいないので手に入らない。
いざという時のためにキープしておくのが賢いだろ。
それにしても『ユニコーンの角』の買い取り価格三〇〇〇ゴールドって高いな?
「薬としての需要もあるからね」
「へー」
『スライムスキン』や『光る石』も同様だが、素材として以外の需要のあるものは価格が高い。
「カードと交換していくかい? 随分ポイントも溜まっているだろう?」
「今日はいいでーす。ちなみにゼンさんの新カードはどんなやつになる?」
ゼンさんはクララ用の[騎]カードを作ってくれるらしいが?
「内緒だ、と言いたいところだが、スキルを付与させたパワーカードだぜ」
「スキル付きなんだ?」
意外だな?
「発想が面白いですよ」
「あ、エルマも知ってるんだ?」
「『ユニコーンの角』が入ったから、すぐに完成するぜ」
ニヤニヤしてるぞ?
変わったカードができ上がってきそうだ。
楽しみだなー。
「ところでアンタ。レギュラーの交換可のカードの中で、使いにくいやつはないかい?」
実はある。
アトム何?
うん、やっぱそのシリーズだよな。
「『フレイムタン』『寒桜』『雷切』『カマイタチ』『石舞台』の五枚だねえ」
いずれも【火】とか【氷】みたいな属性に対して耐性と攻撃属性を同時に与え、さらにプラスアルファがあるカードだ。
でも焦点の絞れていない性能なんだよね。
多分製作された当時は何らかの意図があったんだろうけど、今となっちゃ何これ? って印象は拭えない。
「あたし達も氷耐性が必要だった時、『寒桜』四枚を交換してもらったことあるんだけど、もーちょっと使いやすくならんものかと」
『フレイムタン』はわかる。
攻撃属性【火】が付いて攻撃力アップだから。
でも『寒桜』の攻撃属性【氷】で魔法力アップってのは、割とわけわからん。
『雷切』『カマイタチ』『石舞台』もそう。
今となっては、もっとわかりやすいパワーカードが求められているんじゃないかな。
「エルマにも全く同じことを言われたんだ。ギルドでも一枚も売れてないパワーカードだから、レギュラーから外そうと思う。であればどんなカードを代わりに入れたらいい?」
「個々の耐性が『三光輪』や『ファイブスター』より高いなら使えるんだけど。【風】、攻撃力+二〇%みたいな、単純に攻撃属性と攻撃力二〇%の性能のカードも魔物の弱点を突くのに有効だよ。攻撃属性と属性耐性の両方を、一枚のカードの中に備えることにムリがあるんじゃないかなー」
「わたしもお姉さまと同じ意見です」
アルアさんが言う。
「……シンプルな攻撃属性付き攻撃力二〇%のカードは問題なく製作できる。しかし……」
「ユーさん、耐性を上げるのは案外難しいんだ。レア素材が必要になっちまう」
「そーなんだ?」
職人じゃなきゃわからんことだなあ。
一つの耐性を上げたいなんてのは、ボスや特殊な攻撃を持つ魔物が群れてるエリアの対策だ。
簡単に手に入れられなくちゃ困るのに、レア素材が必要では使えない。
「いや、耐性四〇%までなら可能だよ。容量的にそれプラス何かの状態異常無効なら付与できるね」
「バッチリだよ。十分使える」
状態異常無効も嫌らしい敵相手に欲しいことは多い。
特定の魔物対策のために欲しくなるパワーカードだ。
「では、早めにそういうカードに入れ替えておくよ」
「お願いしまーす」
パワーカード文化もこうして進化していくんだな。
消えたカードの中には、製法が失われただけではなく、用途がないために使われなくなったものもあるだろう。
アルアさんが言う。
「以前新人の子達のパーティーから譲り受けた『ド素人』ってカードがあったろう? あれはどうだい?」
「うちのパーティーでは使えるよ。人形系レア魔物は逃げる逃げないをこっちのレベルで判断してるみたいで、『ド素人』を装備してるとほとんど逃げなくなるの。稼ぎ放題」
「ほう、利用価値はあるんだねえ」
皆が感心してる。
「じゃ、帰ろうかな」
転移の玉を起動して帰宅する。




