第1169話:著しく納得いかない
「こんにちはー」
「おおユーラシア君、久しぶりぴょん」
ゼムリヤの魔物退治が午前中で片付いた。
お腹も一杯になったので、『ユニコーンの角』を手に入れるために行動開始だ。
ヴィルで連絡を取ってゲレゲレさん家にやって来たのだ、が?
「どしたの、ダンテ。キョロキョロしちゃって」
「ジスプレイスね!」
「何が?」
ダンテは元々この辺りに住んでいた精霊で、ゲレゲレさんの転送魔法陣を使ってギルドまで来たんだそうな。
マジかよ?
「ゲレゲレさんには知らないところでお世話になってたんだなあ。これお土産」
「やあ、すまないぴょん。……これは何ぴょん?」
「『文字を覚えるための札取りゲーム』だよ。お子さんにいいかと思って」
「そんなものがあるのかぴょん?」
「名著『精霊使いユーラシアのサーガ』を読ませるために識字率を上げよう、とゆーのがあたしのテーマの一つなんだ。このゲームは今年完成して、今は輸出にも回し始めてるんだよ」
「実に面白いぴょん」
やはり知らなかったか。
ゲレゲレさんはノーマル人社会にあんまり関わり持ってないからな。
よかった、奥さんにも喜んでもらえたようだ。
「『ユニコーンの角』が欲しいということだったぴょん?」
「そうそう。パワーカード工房の職人さんに手に入らないかって言われて」
手に入らない内は何となく工房も行きづらいから、素材が溜まってしまっているのだ。
宿題を残してると気になっちゃう乙女心。
「じゃ、転送魔法陣借りるね」
「ゆっくりしていけばいいぴょん」
「お子さん達のお昼寝邪魔しちゃ悪いでしょ」
「悪いだぬよ?」
相変わらずすげー可愛いのだ。
思わず頭撫でたくなっちゃうわ。
でも起こしちゃいけないし。
「じゃねー」
転送魔法陣でユニコーンの平原へ。
◇
一面の草原だ。
ここ太陽が出てないとマジで方向がわかんなくなるな。
枯れてる様子がほとんど見られないから、常緑の草が多いんだろうか?
ユニコーンには暮らしやすい環境なんだろうな。
「ヴィル、ここってドーラのどの辺に当たるの?」
「魔境トレーニングエリアのずっとずっと北西だぬ。もう少し北に行くと海があるぬよ」
「へー。この辺もあんまり寒くないねえ」
「ここから南の内陸部の方が寒いぬよ? 雪が積もるぬ」
「ふーん。ドーラにも寒いところはあるんだなあ」
人口が増えてきたら開発も進めていくことになるだろう。
でも大陸西側のユニコーンや亜人とは仲良くしたいな。
ならばやっぱりクー川の東と上流域が優先になるか。
どこをどう開発していくかっていう大まかなデザインは必要かも。
「ダンテはさー。元々住んでたところでは、知り合いの精霊はいなかったの?」
「いなかったね。ロンリーだったね」
「そーかー」
ハヤテも『精霊の森』で孤独だったようだ。
一人でつまんなく暮らしてる精霊も多いのかもな。
「精霊って他の精霊や『精霊の友』と暮らしてる方が楽しいのかな? それとも一人暮らしが好きな子の方が多いの?」
うちの子達が顔を見合わせる。
「全く他人と交渉を持ちたくない、という精霊はいないと思います」
「それぞれだとは思いやすがねえ。ウツツは割と一人でいるのが好きなやつでしたぜ」
「ミーは誰かとトゥギャザーがいいね」
灰の民の村にいる精霊は皆楽しそうだ。
遊びに来るハヤテも。
しかし将来、灰の民の村はなくなってしまう公算が大きいようだし。
「塔の村近郊の第二灰の民の村開村計画は積極的に進めた方がいいのかもねえ。住みたい精霊を積極的に誘致してさ。遊びに来たい精霊も呼べばいいし」
ハヤテはもちろん、コユキも羽があるから転移できるんだろうしな。
「姐御は精霊のことを考えてくれていやすね」
「精霊は人間にない力を持ってるからね。仲良くしときたいんだよ」
亜人もそうだけど、自分らと異質な知性体とは可能なら交流すべきだ。
今後ドーラが発展していく中で、精霊のポジションがどうなるかって考えてる人は少ない。
具体的にどうするってところまで踏み込んでるのは、おそらくデス爺しかいないんじゃないかな。
さほど急ぎってほどでもないが、重要な課題だ。
「ボス、ユニコーンがいるね」
「おお、本当だ。ダンテは目がいいな」
遠くにユニコーンが一頭、ちょっと警戒してるみたいだ。
「姐御だけで行きやすかい?」
「いや、いいよ。おーい、こっちだぞー!」
ハハッ、大喜びで近寄ってきた。
尻尾がピンピンしてる。
「よーし、いい子! ニンジンたくさん持ってきたからあげるね」
ムシャムシャ食べるなあ。
灰の民の村のニンジンおいしいもんな。
もう全然あたし達のことを怪しいと思ってないみたいだ。
「ユー様、もう一頭来ましたよ」
「アッチにもいるね」
「ユニコーンってナワバリとかないのかな? まあいいや。皆おいで!」
わんさか来たぞ?
大丈夫、計算の内だ。
たくさん集まっちゃうことを見越してニンジンは大量にある。
「ユー様、おかしくないですか?」
「おかしくはないよ。レベルが上がる。美少女パワーも上がる。よってユニコーンがどんどん寄ってきちゃう。以上証明終了」
角があるのは雄だって聞いたけど、ケンカしたりはしないんだな。
理性的なんだなあ。
「たまらんぬ!」
「んー?」
あれ? ヴィルのところにもユニコーンが集まってるじゃん。
ヴィルが嬉しそうなところを見ると、ユニコーンの喜悦の感情を吸ってるのかな?
それにしてもあたしやヴィルのところには来るのに、どーしてクララのところには行かないんだ?
「納得いかないです」
「あ、おかしいってそーゆー意味だったか。でもユニコーンの考えてることなんかわからんもんな?」
「ユー様なら理解できるんじゃないですか?」
「ええ? 無茶言うなあ。一応コミュニケーションを図ってみるか。おーいあんた達、何でクララを構ってやらないの?」
ふんふん。
あ、何となくわかる。
あたしすごい。
「面白みが足りないからだって。ちょっと待てよ? あたしはユニコーンに愉快な存在だと思われてるのかな?」
それはそれで著しく納得いかないな。
ヴィルが愉快なのは当たってるけど、あたしは可憐で美しく高貴な存在だろ。
「よーし、ニンジン今日は終わりだ。また会おう!」
「バイバイぬ!」
思った通り、どの子も角をお礼にくれた。
『ユニコーンの角』一一本ゲット。
転移の玉を起動し帰宅する。




