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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1167話:割と死ねる

「その方らは試験官なのだろう?」


 さらに西へ進んだところでヒゲピンの問いだ。


「辺境侯爵後継者選定試験の、という意味なら違うよ」

「では何なのだ?」


 どう答えるべえ?

 まさかヒゲピンのおっちゃんに辺境侯爵失格の烙印を押すためのお茶目な死神ですよ、とは言えないし。


「じっちゃんの愛情じゃないかな」

「伯父上の愛情? どういうことだ」


 煙に巻……説明しておく。


「じっちゃんはおっちゃんの資質を見極めたいんだろうけど、ケガもして欲しくないじゃん?」


 ザムエルでは務まらんということを、本人にとくと理解させねばならんって、メルヒオールさんは言ってたけどな。

 ただし切り捨てるつもりもないみたい。

 でなきゃあたしがお供につくわけない。

 人数制限せずに大勢で魔物退治やらせるか、あるいはメルヒオールさん自身が一緒に行くと云う手もあった。

 多分外部の人間であるあたしが混ざることによって、何か気付きを与えるって目的があるんじゃないかと見た。


「で、つけられたのが小娘か。オレも軽く見られたものだ」

「おいこら。自分で言うのも何だけど、あたし達は世界最高クラスの冒険者パーティーだぞ? わかってないのおっちゃんだけだぞ?」


 首をカクカク縦に振る兵士達。

 ほらよく見てみろ。


「む、そうなのか?」

「信用しなって……ごめんよ」


 足払いしてヒゲピンを転ばす。

 今までヒゲピンの身体のあったところを太い幹が通過する。


「何をするかっ! ……え?」


 兵士三人が吹っ飛ばされた様を見て驚愕するヒゲピン。


「はーい、落ち着いて。態勢立て直すよ。ゆっくり下がって。リフレッシュ!」


 兵士達の体力を回復させる。


「な、何事だ?」

「魔物だよ。木人の類だね。攻撃力はあるけど、追撃かけてくるような機動力はない」


 クララがトレントだと教えてくれた。

 先ほどまでは普通の木に擬態してたけど、今は幹や枝をしならせて威嚇してくる。


「兵士さん達は重武装だしレベルも高いから、勉強のために攻撃を受けてもらったんだ。でもおっちゃんがあれまともに食らうと血へど吐いちゃう。てか割と死ねる」

「お、おう」

「あたしのありがたみわかった?」

「う、うむ」


 よーし、大分素直になった。


「あんなの残しとくと危険だな。不意打ちでさえなきゃ、兵士さん達が苦戦する相手じゃないよ。倒しちゃって」

「「「はい!」」」


 クララがこっそり『勇者の旋律』かけてる。

 え? 木人の亡骸はスキルスクロールの用紙に使えそうだって?

 木人の群生地域があれば役に立つアイデアかもな。

 一応覚えとこ。


「リフレッシュ! 御苦労様、よくやった!」


 今日一番の大物退治に、兵士さん達も満足感が大きいようだ。

 作戦行動にモチベーションの維持は重要だね。


「さあ、いいところまで来たね。戻ろうか」


 東へ進路を取る。


          ◇


「俺は辺境侯爵失格だろうか?」


 ヒゲピンが思いつめたように聞いてくる。

 あんたお調子者って話だったじゃん。

 いいとこなくなっちゃうから威張ってなよ。


「お世辞言っても仕方ないか。魔物退治には適性がないねえ」

「辺境侯爵には?」

「そんなこと聞いてくる時点で、自分なりの答えが出てると思うけど」

「……」


 だから暗くなるなとゆーのに。


「しかし、オレでダメなら次の辺境侯爵は……」

「メルヒオールのじっちゃんにも同じこと聞かれたんだ。俺の後継者を誰にすべきだと思う? って」

「伯父上が外部の冒険者に相談を?」

「まーあたしは只者じゃないから」


 ジョークだぞ?

 ヒゲピンも兵士も畏敬の眼差しを向けるなよ。


「ウルピウス殿下をお勧めしといた」

「……なるほど、皇妃様の御子という選択肢があるのか。確かにウルピウス殿下は才気煥発という印象があったが」

「今殿下は後ろの兵士さん達くらいのレベルはあるんだよ」

「伯父上の跡継ぎに相応しい……」


 だからガッカリするなというのに。

 ヴィルが嫌がるだろうが。


「一方でおっちゃんもかなり期待されてるのわかってる?」

「オレが? 無様を晒しただけではないか。どうしてわかる?」

「どうでもいいやつにあたしがお供でつくわけないだろ。あたしクラスの冒険者雇うのにいくらかかると思ってるんだ」

「う、うむ……」


 答え〇ゴールドです。


「物事向き不向きはあるからね」

「オレのどこに期待されていると思う?」

「一族の押さえとしてじゃないかな」

「押さえ?」

「うん。おっちゃん以外に魔物退治しろって言われた親族の人いる?」

「いないはずだ」

「じゃあじっちゃんの弟妹系の親族の中で、一番重要視されてるのはおっちゃんだな」


 ハハッ、嬉しそうになった。

 わかりやすいなあ。


「さっきも言ったけど、ゼムリヤって治めるの難しいんだ。誰が辺境侯爵になっても、一族ごたついてちゃ絶対に紛争になっちゃう。おっちゃんはトップには向いてないかもしれないけど、一族の重鎮っていう大事なところを任されようとしてるんだよ」


 大分盛ったった。

 まあメルヒオールさんの意図とあんま違わないだろうからいいだろ。


「となるとおっちゃんに求められるのは、調整力と広い視野なんだ」

「うむ、わかるぞ」

「気付いてる?」

「何に?」

「さっきから魔物が出ないことに」

「え?」


 魔物も結構敏感だな。

 危ないところには寄りつかないらしい。

 来た、地鳴りだ。


「な、何だ?」

「雪崩ってやつじゃない? ほら、あれ」


 へー、遠くから見ると大波みたいだな。

 兵士達も動揺を隠せないようだ。


「のんびりしてる場合か! 逃げるぞ!」

「焦らない焦らない。クララ」

「はい、フライ!」


 どどどどって唸りとともに、雪が雪を食べるような現象だ。

 結構な迫力だが、余裕を持って回避する。

 どうってことないわ。


「ひゃあ」

「た、助かった……」


 落ち着いてきたかな?


「地図とにらめっこしていれば、雪崩危険地域は予習できたはずだよ。あえて黙ってたけど、周りの様相からある程度察知することも可能。広い視野ってのはそういうこと」

「……」

「おっちゃんが必ずしも身につけなきゃいけないってことじゃないんだぞ?」

「え?」

「広い視野を持っている賢い人を味方にして、意見を聞く耳を持っていればいいの」

「う、うむ。道理だな」


 自分のやるべきことはわかったろ。

 さて、あたしのお仕事としてはこんなとこでいいんじゃないかな?


「クララ、このままじっちゃんのとこ戻ろう。北へ」

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