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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1166話:兵士と冒険者の違い

「これはテストなのだろう? オレが次期辺境侯爵に相応しいかどうかの」


 さらに西へ向かう途中でのヒゲピンの言だ。

 まーぶっちゃけ相応しくないという、メルヒオールさんの判断なのだが。

 おまけにあたしは相応しくないことをヒゲピンにわからせろという、愉快な役割を担っているのだが。


「そこんとこは気付いてたんだ?」

「気付かいでか。伯父上もいい歳だ。誰が後継者になるかについては、しょっちゅう取り沙汰されている。主に酒の席でだがな」

「当然跡継ぎの話題は出るわな。有力候補と言われているのは誰なん?」

「といっても伯父上に子はカレンシー皇妃様しかいない。跡継ぎはオレか、さもなくば従兄弟の内の誰かだな。まあオレが最有力だ」


 このヒゲピンのおっちゃん、常識人だけど調子に乗りやすいとウルピウス殿下は言ってたな。

 ただ自然と人をまとめる立場になりそうな雰囲気はあるから、バアルが言うほど凡庸だとは思わない。

 でも難治の地であるゼムリヤの領主が務まるかって言われるとどーだろ?

 かなり不安だな。


「おっちゃんは確か、じっちゃんの弟さんの子なんだっけ?」

「うむ」

「血筋からは有力候補だね。辺境侯爵になりたいの?」

「当たり前だ。何といってもカル帝国一の大貴族だぞ? 当主の座に憧れぬ者などおるまい」

「ふーん。ゼムリヤは大変だぞ? 苦労性だなー」

「ハハハ、小娘にはわからんか。華麗なる男の生き様が」


 調子いいなー。

 能力はともかく、一緒にいて気持ちいい。

 周りの雰囲気を良くして盛り上げる力量はある。


「今日の魔物退治は、テストには違いないよ。でも次期辺境侯爵に相応しいかどうかじゃなくて、これクリアできなきゃ話になんないってことだと思う」

「何だと? どういうことだ?」

「ゼムリヤは帝国の中でも魔物と共存しなきゃいけない地域で、住民からの要望で退治しなきゃいけないこともあるんでしょ? 今日みたいに」

「うむ、その通りだ」

「魔物も知らん人が退治の指揮なんか執れるわけないじゃん。軍人でもない人が軍司令官になるようなもんだぞ? だからとりあえず魔物退治を一度やってみろってことでしょ」

「む……伯父上はほぼ一人か、もしくは若い領兵や麓の壮丁を訓練がてらに率いて魔物退治を行っていたはずだ」

「まー魔物退治する組織がしっかりしてりゃ、トップが魔物退治しなくていいんだけどさ」


 多分メルヒオールさんには、変事に備えて自らを鍛えておくっていう考えがあるんだと思う。


「こんな小規模な魔物退治で後継者を決めるというのもおかしな話か」

「おっちゃんが腕の立つ兵士さん達を連れてくることを、じっちゃんはわかってたんじゃないかな。それでも魔物退治は兵士さんの普段やってないことで危なっかしいから、プロであるあたしがお供でついて行けってことだと思う」

「「「「……」」」」

「あ、魔獣だ。クマかな?」


 ほいっと倒してヴィルに運んでもらう。


「じっちゃんほどでなくてもいいけど、ゼムリヤの領主にある程度のレベルは必要だと思うよ。でないと暗殺されちゃうぞ?」

「あ、暗殺?」

「北の王国にとってゼムリヤは欲しい土地でしょ。逆に帝国にとって本土との境の山脈より北は守りづらい土地だよ。地理的にはちょっとムリがある統治状態になってる」

「辺境侯爵が暗殺されて、ガリア王国領に編入される可能性がある?」

「領主に隙があればね。今平和なのは、じっちゃんに隙がないからだぞ?」


 ゼムリヤが帝国領なのは、歴代の辺境侯爵が優秀で帝国に利益をもたらしているからだろう。

 領有していることでよりコストがかかるとなったら、カル帝国皇帝はそんな土地見捨てるに決まってる。

 辺境侯爵がそんなに割のいい地位じゃないことがわかったか?

 よーく考えてください。


「ま、目の前のお仕事を片付けようよ」

「う、うむ。了解だ」


          ◇


「兵士さん達は揃って槍装備だねえ」


 大体東から西へ横断した位置まで来た。


「攻撃力が一番だ。冒険者は違うのか?」

「槍使いもいるけど、懐に入られて近接戦闘になることが多いから、剣の方がメジャーかな。長柄の武器は狭いダンジョンだと使いにくいってこともある」

「役割を考えるべきだったか? 例えば今日だったら弓兵を連れてくるとか」

「おっ、いい考え方だね。まあでも兵士さんと冒険者では求められてることが違うよ」


 あれ、この話題は兵士達も興味あるみたいだな。


「兵士さんはビシッとした隙間ない隊列イコール集団としての強さじゃん? 冒険者は盾役、メイン火力、回復、支援みたいな、それぞれの役割を果たすことがパーティーの強さなんだよね」


 ヒゲピンが言う。


「簡単に考え過ぎていたかもしれぬ。伯父上に言われたのだ。魔物を間引くから三人連れてこい、指揮を執れと。精鋭三人を選んだつもりだったが……」

「うん。魔物退治なんて大体レベルで解決するから、間違っちゃいない」


 おっちゃんの立場ならベストの選択じゃないかな。

 舐めてかかるよりよっぽどいい。


「一口に戦闘職といっても違うものだな。他に兵士と冒険者の異なる部分はあるか?」

「魔物だな。先に倒しちゃおうか」


 食獣植物出現。

 兵士達のレベルなら余裕の相手だ。


「全員でかかれ!」

「え? おいこら、後ろの警戒が疎かだぞ!」


 左斜め後ろの凍った石みたいなやつも魔物だ。

 スライムの一種かな?

 サービスでさくっと倒しとく。


「助かったぞ。それに引き換え、お前達は何だ!」

「兵士さん達を怒るのは筋違いだとゆーのに。軍隊でも同じでしょ? 兵士さんは指揮官の命令に従うのが仕事、伏兵に気を配るのは指揮官の仕事」

「かもしれぬが……」

「上の人が責任逃れすると、下がやる気なくしちゃうよ?」

「……」


 上下関係って難しい。

 上が無能なのは論外として、上が有能でも下を信用できなくて抱え込み過ぎちゃうのもよろしくない。

 職責をハッキリさせるべき。


「さっきの兵士と冒険者の違いってのは、その辺にも関わるなー。兵士さんは上の言うことよく聞いて、不利な状況でも持ち堪えるのが役割じゃん? 冒険者は不利なら逃げるよ。死んじゃうと話になんない」

「……」

「心配しなくていいぞ? あたしが逃げる時はおっちゃん達も連れてくからね」

「お、おう」


 ホッとしたような顔になるヒゲピン。


「先行こー」


 林に沿って南東へ。

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