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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1164話:世界を我が手に

「サイナスさん、こんばんはー」

『ああ、こんばんは』


 毎晩恒例のヴィル通信だ。

 まったり。


『まずこちらの話からしとこうか。アレクからの報告で、スキルスクロールの用紙は問題なく使えるそうだ。デスさんにも確認済み』

「やたっ! 量産すると一枚いくらくらいになるかな? 印刷できる?」

『えっ? 細かいところはまだアレクも聞いてないと思うけど』

「まだだったかー」

『焦り過ぎだろ。まだ試作品の段階だからな?』

「わかってるんだけどさ。他人をタダで使ってるかと思うと、どんどん働かせたくなってしまう」


 笑うサイナスさん。

 あたしはせっかちだからな。

 あたしもスクロール紙については、ペペさんの意見も聞いといた方がよさそう。

 いや、デス爺がオーケー出してるなら、ペペさんはアーティスティックな活動に専念してもらった方がいいのか?

 試作の紙をもらってアレクの話聞きたいけど、やること一杯あって埋もれちゃうな。


「次回の輸送隊、アレクは出かな? 待機かな?」

『アレクもケスも待機だよ』

「アレク達って塔の村で冒険者活動の時は、帰りいつ頃になるの?」

『大体向こうで夕御飯を食べてから帰ってくる』

「だよね。むーん?」


 案外会うのも難しいな?

 いや、エルが追われていることをデス爺には話しておきたいから、一度塔の村に行ってもいいが……。


「ま、いいや。どうしても必要ならヴィルで連絡とってもいいし」

『便利だなあ』

『便利ぬよ?』

「よしよし、ヴィルいい子」


 ヴィルが喜んで働いてくれるのは嬉しいことだ。

 あたしもたくさん可愛がってやらないとな。


「青の民セレシアさんのファッション、帝国に輸出できるかもしれないんだ。帝都一の大店の店主が興味を持ってくれた」

『ほう?』

「正確には店主の孫が、画集に載ってた変わったファッションに気付いてたんだ」

『店主の孫って、昨日公開処刑された貴公子か? スイーツ対決の』 

「そうそう。昨日こてんぱんにされたピット君。セレシアさんのファッションは実際に着てるところを見せないと、真価をわかってもらえないと思うんだよね」


 とゆーかイシュトバーンさんの絵は、女性の真価を発揮することに特化しているのだ。

 あんまり衣装まで目が行かない。


「いずれセレシアさん連れて帝都に行くと思う。ただこの話まだセレシアさんに伝えてないんだよね」

『舞い上がると手に負えないってことだな』

「うん。先にディオ君にだけ話しといてくれる? 他言無用で」

『わかった』


 事前情報さえあれば、ディオ君なら何か手を打つだろ。

 ディオ君と会って話せる機会があったら一番いいけど。


「じゃーん! 本日のメインイベントのお話だよ!」

『模擬剣でチャンバラだろう? 結果が見えてるじゃないか。ユーラシアのテンションがそんなに上がるようなことがあったのかい?』

「あったんだよ。今日ハプニングがあってチャンバラは中止になったの。どういうことだと思う?」

『君の起こすハプニングなんて想像がつかない』

「あたしが起こしたわけじゃないってば」


 この無礼者め。

 模擬剣で峰打ちしてくれるぞ。


「何と超強い魔物ヤマタノオロチが出現してしまったのでした!」

『当たるわけがないじゃないか。考えなくて正解だった』

「つれないなー」


 まー考えても当たらないってのはその通りだろうけれども。

 あたしのエンターテインメントに付き合うってことも考えてよ。


「帝国にも魔境みたいなところがあるんだって。もちろん危ないから立ち入り禁止なんだけど、周辺でも魔力溜まりができることがあって、一〇年に一度くらい強い魔物が発生することがあるんだそーな」

『今日がたまたま強大な魔物の現れる日で、君が倒したってことか? 帝国軍は何してたんだ?』

「いや、協力してくれ、歩兵一万と共同作戦取ってくれって言われたんだよ。けど、どう考えても現地まで行くの遅くなっちゃうじゃん? お昼御飯を食べそびれそうだから、今回はサービスで倒した」

『君のパーティーだけでか?』

「あと道案内と検分役の兵士さんが一人ずつ、今日の対戦相手だった天才剣士とその師匠、メルヒオール辺境侯、新聞記者三人かな。それくらいの人数ならクララの『フライ』で飛べるから」

『何だ、新聞記者って?』

「サービスで魔物退治だぞ? あたしの勇姿を記事にしてくれるくらいの恩恵があったっていいと思わない?」

『なるほど?』


 納得いってるようないってないような声ですね?

 あたしの活躍を広めてくれると、知名度が上がって動きやすくなるし。


『でもヤマタノオロチって神話に出てくるような魔物だろう? 誰もケガしなかったか?』

「強いは強いけど所詮ヒドラだから、ケガするようなことはないよ。でもキングヒドラよりはかなり難易度高いね」

『神話級って言われてるくらいなんだろう?』

「首の数が多いじゃん? どうしても再生のタイミングがバラバラになっちゃうんだよ。思ったほど牙が取れなかった」

『そんなオチなのか』

「おまけに牙も被害に遭った集落への寄付にしたから、骨折り損のくたびれ儲け」

『損なオチなのか』


 アハハと笑い合う。


『まあいいじゃないか。いいことしたと思えば』

「被災した人もいるからこんなこと言っちゃいけないのかもしれないけど、大事になんなくてよかった。被害を受けた村も一ヶ所だけなんだって。天才剣士も戦わずしてギブアップしたから、これにて貴公子撫で斬りイベントは一件落着」

『ただ働きにはならないだろう。帝国政府から御褒美くらいは出るんじゃないか?』

「あれ? お楽しみが残ってるのか」


 となると政権に絡む人と会う機会ができるかな?

 人脈が広がりそーで嬉しいけど。


『ちなみに君は何をもらえると大喜びなんだ?』

「えっ、現金?」

『エンターテインメント要素がない。極めて予想通りの答えで全然面白くない』

「待ってよ、不意打ち気味にいきなり聞かれたからだよ。今だったら世界を我が手にって言える」

『それを帝国のお偉いさんの前で言うところを想像すると面白いな』

「上質のエンターテインメントを供給したったぞ?」


 アハハと笑い合う。


「何だかんだで今日は疲れたよ。サイナスさん、おやすみなさい」

『ああ、おやすみ』

「ヴィル、ありがとう。通常任務に戻ってね」

『了解だぬ!』


 明日はゼムリヤで魔物退治。

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