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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1161話:ウィンウィンの寄付

 メルヒオールさんが言う。


「いいものを見せてもらった。これだけで帝都に来た甲斐があったというものだ」

「そお? じっちゃんは欲がないな」


 アハハと笑い合う。

 まーでも神話級の魔物が突然割り込んでくるとは、あたしの人生も愉快な要素で構成されてるもんだ。

 ん? リリー何?


「やはり隙はない方がいいのか?」

「基本的に自分でペース握れた方がよくない?」

「しかしユーラシアはいつもツッコむ隙を与えるではないか」

「女はちょっと隙がある方がモテるんだよ」


 再びの笑い。

 計算してオープンに見せてる部分は隙じゃないけどな。


「ユーラシアさん!」

「ピット君とフーゴーさんも?」


 今日広場では何もなかったのに、わざわざ出てきてくれたのか?

 好都合だ。


「凱旋されたと聞いたので」

「凱旋て。大げさだなー」

「ヤマタノオロチの討伐とか。大変な偉業でしたな」

「冒険者の専売特許みたいなものだから。また大物の魔物が出るようなら任せてくれていいんだよ。ドロップ品はもらうとゆー条件で引き受けるから」


 ハハッ、好き勝手吹いてるけど政府関係者いないわ。

 大物の魔物退治はマジで任せてもらっていいけど、ライナー君が言ってた通り、神話級の魔物がそうそう現れるわけないわな。


「フーゴーさん、ヒドラの牙を買い取ってもらいたいんだ。品質にバラツキがあるんだけど」

「ほう? 店の方へ来ていただけませんか? 『道具屋の目』持ちがおります」


 リリー達と別れ、帝都一の大店という『ケーニッヒバウム』へゴー。


          ◇



「精霊を見るのは初めてです」


 うちの子達とメルヒオールさんライナー君ボクデンさんを伴って店へ行く途中だ。 

 ピット君が精霊に注目している。

 うちの子達には居心地が悪いかなあ?


「精霊は人見知りだから、普通の人間とは喋らないんだ。ごめんね」

「ユーラシア君と精霊が使っていた不思議な武器は何なんだ?」

「今頃かい。あれはパワーカードだよ。装備者の魔力で起動してブレードとか具現化するってやつ。精霊は実体を持たないから、普通の武器を思いっきり振るおうとすると、武器の方に力を吸われちゃうらしいんだよね。パワーカードだと精霊でも使えるの」


 皆感心してるけど、帝国は一般人の武器所持禁止だったわ。

 黙ってりゃスルーされるかな?

 フーゴーさんが言う。


「最近帝都にも入ってきている、持っているだけで温まる不思議な暖房器具と同じ原理ですな?」

「あっ、そうそう。『ウォームプレート』は元々エルフの発明したカードなんだよ」

「何と、エルフですか」

「作り方を教えてもらって輸出用に作ってるんだ。でも職人の数が少ないから、月に三〇〇枚くらいが精一杯だね。全部ベンノさんっていう商人に任せてあるんで、必要なら問い合わせてね」

「ふむ、ベンノ君か。エルフの珍しい品が……」


 ドーラのエキゾチックな魅力を感じてください。

 お店にとうちゃーくって、え?


「これ全部『ケーニッヒバウム』なんだ?」

「さようです」

「ほへー」


 ここ目抜き通りだろうに、通りの両側がびっしり店舗なのだ。

 すげーいろんなもの売ってるんだけど?


「品揃え豊富だねえ」

「何でも買えるというコンセプトなのですぞ」

「なるほどー」


 『ケーニッヒバウム』なら何でも手に入るとなれば、わざわざ他へ行くことないもんな。

 おゼゼがあるとそんな力技の商売ができるのか。

 勉強になったよ。


「しかし、ここのところ『ケーニッヒバウム』商法が揺らいでおるのです」

「何で?」

「ドーラ産の魅力的な商品を仕入れるのが困難なのですな」


 あ、なるほど。


「ドーラの物産は買い叩かれると嫌だから、大使のプリンスルキウスの伝手で帝国に輸出しようぜってことになってるの。そのプリンスが一番信頼してる商人がさっきのベンノさんなんだ」

「ふむ、ベンノ君とのパイプは強くしておかねばなりませんな」


 ピット君が言う。


「まだベンノさんが目をつけていない、有望なドーラのものはありますか?」

「ピット君やるじゃないか。研究あるいは試用段階のものを除いても一つあるよ」

「何です?」

「ファッション」

「ファッション? あっ、画集の!」

「ピット君の新しいものを見つけるアンテナは大したもんだなあ」

「変わった服だなと思ったのが何枚かあったので」


 食いついた。

 見てる人はいるなあ。


「ドーラの首都レイノスでは結構な人気なんだ。でも着てるとこ見せないと服売るのは難しいから、まだベンノさんにも紹介してないの」

「お爺様。面白いと思います!」

「ふむ、紹介していただけますかな?」

「向こうの店がお休みの時にでも、店長を連れてくるね」


 思わぬ展開になった。

 まあこれも成り行きだ。


「ここが買い取り専門店です」

「お願いしまーす」


 無限ナップザックからゴソっとヒドラの牙を取り出す。


「えっ? そのナップザックおかしくないですか? とんでもない量が出てきましたけど」

「これいくらでもものが入るマジックアイテムなんだ。クエストのお宝として手に入れたもので、探索にすごく便利なの」

「道理で。容量が変だと思った」


 ライナー君も今頃何なんだよ。

 とぼけてるなー。


「……少々時間がかかりそうですが、査定は今すぐがよろしいですかな?」

「いや、ヤマタノオロチの出現地点近くの集落が被害受けちゃってるんだ。そこへの寄付にするからいつでもいいよ。フーゴーさんの方から送ってあげてくれる?」


 フーゴーさんと二秒ほど視線が交わる。


「「あははっ!」」


 フーゴーさんと二人して大笑い。

 わけがわかってなさそうなピット君ライナー君記者トリオ。

 頷くメルヒオールさんとボクデンさん。


「やられましたぞ。色をつけて寄付しろということですな?」

「お願いしまーす。被害に遭った人達が気の毒だからね」

「では『ケーニッヒバウム』から五〇万ゴールド出しましょう」

「おーフーゴーさん太っ腹!」


 多分これは帝都中の多くの人に知られる美談になる。

 フーゴーさんもイメージを良くするために乗っておきたいだろうし、被害者のためにもなることだ。

 ウィンウィンってやつだよ。


「記者さん達わかってるね? ちゃんと『ケーニッヒバウム』が義捐金出してくれたところまで記事にするんだよ?」

「「「了解です!」」」

「じゃ、あたし達帰る。またね」


 新しい転移の玉を起動、メルヒオールさんを連れて帰宅する。

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