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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1160話:ライナー君の課題

 フワリと中央広場噴水前に降り立つ。

 張りつめたような空気の中、見物人の皆さんがまだすげー残ってるじゃん。

 検分役の兵士が拡声器を使う。


『御安心ください! 出現していた神話級の魔物ヤマタノオロチは、ドーラの冒険者ユーラシア殿が見事打ち倒しました!』

「「「「「「「「うおー!」」」」」」」」


 あれ? 当面の危機が去って喜ぶのはまあわかるよ?

 でも実際に倒したとこ見たわけでもないのに、すげえ盛り上がってるじゃん。

 どうなってんの?

 やっぱドーラ人とはエンターテインメントに対する感性が違うのかな?


『美少女冒険者ユーラシアのコメントを聞こうじゃないか!』


 司会の声に静まるオーディエンス。

 まーあたしも空気の読めない子じゃないから。


『帝都の皆さんの心のアイドル、美少女冒険者ユーラシアが約束通り昼前に戻ってまいりました』

「「「「「「「「パチパチパチパチパチパチ!」」」」」」」」

『心配してた人いるかもしれないけど、もう大丈夫だからね。詳しいことは明日の新聞でお楽しみください。以上です』


 それだけ? みたいなオーディエンス。

 つってもあたし的には上手に首を狩れなくて反省点がたくさんある。

 あんまり喜んでもいられないとゆーか。


「嬢ちゃんテンション低いぞ?」

「ケガでもしてるのかい?」

『お腹が減って力が出ないの』


 爆笑。

 こんなところだろ。

 あれ、ライナー君どーした?


『皆さん、聞いてください』


 何事かとざわめきが小さくなるオーディエンス。

 これから『技』の勝負やるつもり?

 せめてお弁当食べてからにしてよ。


『残念ながら私ではユーラシア君に勝てない。リリー様を諦めるのは胸が苦しいが、敗北を認める!』

「諦める必要ないから頑張れ」

『えっ?』


 ライナー君から拡声器を受け取る。


『今回のリリーを巡る貴公子三人との対決は、もっといい男になって出直せという趣旨なんだ。再チャレンジ大歓迎だよ。リリーもそれでいいね?』

「うむ、もちろんなのだ!」

『ヘルムート君、ピット君、ライナー君に拍手!』

「「「「「「「「パチパチパチパチパチパチ!」」」」」」」」


 ふう、マジで腹減った。

 ライナー君が聞いてくる。


「今の私では努力が足りないということなのか? どの辺が?」

「ごめん、あとにしてくれる? とは、あたしのお腹の切なる願いです」


          ◇


「ごちそーさまっ! おいしかった!」


 帝都のお弁当は品数が多いっていう特徴があるな。

 いろんな味を楽しめるとゆーのは、ひっじょーにいいところ。

 お腹もようやく満足です。

 ライナー君が話しかけてくる。


「先ほどの話だが。私は剣術に関してかなり打ち込んでいるつもりなんだ。努力と言われても……」

「うん、リリーはどう思う?」

「ライナー殿のストイックな姿勢は知っておる。が……」

「ほら、『が……』の後ろを読み取らなきゃ女心は掴めないぞ?」

「そ、それはそうだが」


 色男が困ってる様子はオツだなあ。


「まーライナー君見てりゃ確かに所作に隙が少ない。剣術もなかなかやるんだろうなってことはわかるよ」

「だろう? ならば……」

「てか、周りの人に言われてない? 伯爵家の跡継ぎが剣術だけにのめり込んでていいわけないだろ」

「く……」


 言葉につまるライナー君。

 お師匠さんも大きく頷いてるがな。

 やはりそこに問題ありと考えてるのか。

 武術のお師匠さんだろうに、担当範囲以外を心配するって大変だなあ。

 

「一つのことだけやってりゃいいのは専門職の人だけだよ」

「し、しかし君は冒険者に専心してそれだけのレベルを手に入れたんだろう?」

「違う違う。あたしは兼業冒険者だよ。レベル上がったのはおまけみたいなもん」

「ふうん? 意外だな」


 あれ、解せぬ顔してるのはライナー君だけじゃないな。


「あたしはいい世の中にしたいんだよ。いい世界の実現のために動いてるの」


 ユー様にとって都合のいい世の中ですよねって顔をクララがしているが、まあその通りだ。

 魔宝玉クエストがどうのこうので勝手にレベル上がっちゃった、なんて言う必要ないだろ。

 いや、やれることが多くなるという意味で、特にドーラでレベルが重要なのは否定できないけれども。


「統治とか人脈とか伯爵として必要な要件は置いておくとしても、何でこんな優れたお師匠さんがついててライナー君みたいな弟子ができちゃうのよ?」

「そ、それはひどいだろう。私はこれでも武道大会剣術二〇歳以下の部二年連続のチャンピオンなんだぞ!」

「だから何で一対一の対人戦技術しか受け継いでないのよ? あんたのお師匠さんは一対多数でも魔物戦でも達人だぞ? 多分多数対多数の指揮や兵法にもかなりの心得があるはず」

「あ……」


 足捌きや体重移動の滑らかさ、周囲を警戒する視野の広さ、いずれも特級品です。

 剣術以外の武道でも達人なんだろうけどな。

 まるで隙の見えない人ってのは初めて会ったわ。


「師匠のいいとこを盗んでいかないで何が弟子だ」

「……」

「まー今回の三人の求婚者の内、改善すべき点が一番多いのはライナー君だわ」

「……」

「伸び代も多いってことだぞ?」

「え?」

「頑張れ」

「期待しておるのだ!」

「は、はい」


 リリーの言葉に嬉しそうになるライナー君。

 ちょろいぜ。

 お師匠のボクデンさんが歩み寄ってくる。


「ユーラシア殿、ありがとうございます。ライナーは優れた資質を持ちながら、悪く言えば頭の固いところがありまして」

「いやいや、ボクデンさんみたいな師匠がいるライナー君は幸せだよ」


 兵法も修めれば人生にすげえ応用利きそうだしな。

 あたしも教わりたいくらいだけど、眠くなっちゃいそう。

 イコールあたしには向いてない。


「ユーラシア殿も今後よろしくお願いしますぞ」

「こちらこそ」


 ボクデンさんが手を差し伸べてくるが?


「どうして握手しないんだ?」

「ライナー君のダメなのはそーゆーとこだぞ? お師匠さんと握手してみなさい」

「うん? あっ!」


 手首を捻られ転がされるライナー君。

 まだまだだなー。


「いやあ、見破られてしまいましたか」

「たまたまだよ。ほとんど気配なかったし」


 アハハと笑い合う。

 ケスの落とし穴より遥かに微細な違和感。

 武道家としてあたしに興味があるんだろう。

 ヤマタノオロチとの戦闘中にも度々あたしに注意が向けられていた。

 あれなかったら気付けなかったかも。

 今度こそ握手。

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