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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1159話:神話級の魔物

 クララの飛行魔法により、美少女精霊使いユーラシアと愉快な仲間達の一行は、文字通り帝都を飛び出した。

 とゆーナレーションふうの入り。


「ふーん、帝都の外側は広い田園地帯なんだねえ」

「メルエルからタムポートに至る地域は、巨大な消費都市帯だからね。賄わねばならない農作物も莫大な量になるのさ」

「理想的な田園都市って感じだわ」


 最初足元が不安定なこととスピードにビックリしてたライナー君も、すぐ慣れて余裕が出てきたらしい。

 新聞記者も高速『フライ』を楽しんでるし、実につまらん。


「うわ、ヒツジかな? すげーたくさんいる!」

「羊毛の衣服は高級品だ。冬でも暖かいからな」

「ドーラは温暖だからヒツジが少ないのかも」


 白の民の村にはヒツジがいるはずだ。

 ヒツジ肉は食べたことないから、機会があったら食べてみたいな。

 二〇分も最高速で飛び続けた頃、案内役の兵士が言う。


「このあたりのはずですが……見えました! あいつです!」

「あれ? 思ったよりデカい個体だな。とゆーか、頭の数多くない?」


 キングヒドラって頭の数三個じゃなかったっけ?

 個体によって違うのかな?

 メルヒオールさんが舌打ちする。


「……最悪だ。キングヒドラではない。ヤマタノオロチだ」

「災害級どころか、神話級の魔物です!」


 八つの頭を持ち多角的に攻撃してくる、多頭ヒドラの中でも最大最強の種。

 伝承として知られてはいるが、信頼できる出現記録はないらしい。

 へー、神話級の魔物か。

 『精霊使いユーラシアのサーガ』の伝説を飾るに相応しい魔物かな?


「クララ、スピード落としてもう少し近付いてくれる?」

「はい」


 情報が欲しい。

 ヒドラの類なら再生能力や毒攻撃は当然持ってるんだろうけど、他の特徴を知りたい。

 記録がないなら近寄って、雰囲気を肌で感じるしかないんだな。

 ヤマタノオロチの上空をゆっくり旋回する。

 上空を飛び回るあたし達に気がついてはいるようだが、まだ敵意は向けてこない。


 ふむふむ、確かに強いじゃないか。

 プレッシャーがキングヒドラの比ではないのだ。

 頭の数が倍以上だから当たり前だが。

 あたしも知らん魔物を舐めたりはしないが……。


「うん、特に問題なさそう」

「「「「「「「「えっ?」」」」」」」」

「倒すのに支障はないな」


 ライナー君が噛みついてくる。


「どこが問題ないんだ! 神話級の魔物だぞ!」

「だってヒドラと弱点一緒なんだもん」


 メルヒオールさんが聞いてくる。


「弱点とは?」

「真竜と違って鱗が貧弱だから、防御力が弱いの。動きがとろいこともふつーのヒドラと一緒」

「しかし再生力が桁違いであろう? 一般に頭の数が多いほど再生力は強力と言われている」

「再生力が高いのはボーナスポイントだよ」

「「「「「「「「は?」」」」」」」」


 おわかりでないらしい。

 帝国の人は魔物退治で稼ぐ冒険者の作法にお馴染みではないからな。

 経済的な魔物狩りとゆーものの見本を見せた方が早いだろ。

 着地する。


「ヒドラ倒すのはコツがあるんだよ。やって見せるから、次ヒドラが出たらこうやって倒すんだぞっていう参考にしてよ。いくぞお!」


 うちのパーティーがヤマタノオロチの間合いに入る。

 レッツファイッ!


「薙ぎ払い×二っ!」

「おお、見事!」


 ヤマタノオロチの首を全部落とすと、ボクデンさんから感嘆の声が上がる。


「ば、バカな! 首が再生する?」

「ライナー君何焦ってるんだよ。ヒドラなら再生して当然だろーが」

「どうするんだ!」

「生えてきた首を再生限界まで落とし続けるに決まってるだろ。皆は首から牙抜いといてね。高く売れるんだ」

「……もしかして、手伝いって牙の回収?」

「そーだよ。首再生途中は攻撃してこないから安全だと思うけど、油断は禁物だぞ?」

「油断って……」

「あはははは! 大儲けだっ!」


          ◇


 ……と、思っていた夢見る少女時代がありました。


「まずったなー」


 首が八本もあると、どーしても同じ位置で切れない。

 とゆーかヤマタノオロチはキングヒドラと違って、全部の首で一斉攻撃っていう習性がないみたい。

 首ごとに再生する時間が変わっちゃうから、再生しきってない頭部をも狩らなきゃいけないことも多くなってしまった。

 しかも下の方で切断すると再生に多くのパワーを使ってしまうのか、思ったほど生え代わらなかったのだ。

 さすがに神話級の魔物だけのことはある。

 難しさが段違いだった。


「まだまだ修行が足りなかった」

「何の修行だよ!」

「全ての頭がこっち向いて攻撃してくる直前に落とすべきだったなー」

「危険過ぎるだろう!」

「次ヤマタノオロチと戦う時は今日の反省を生かさないと」

「神話級の魔物と戦う機会なんかそうそうないから!」

「ライナー君ってツッコミ属性だったんだ? 天然ボケの人かと思ってたよ」


 新聞記者トリオがメチャメチャ張り切ってメモしてるがな。

 メルヒオールさんが笑う。


「ハハッ、これが精霊使いユーラシアか。噂話が色褪せて聞こえるな」

「そお? かっちょいい噂に上書きしといてよ」


 さて、牙は、と。


「一二〇本くらいですかね。どこまでを牙と認めるかですけれども」

「失敗したなー。マジで時間戻してもう一度首狩りたい」


 カモが現れたもんだから、あたしもはしゃぎ過ぎちゃったわ。

 未熟な牙が多くなってしまった。

 滅多に出るもんじゃないボーナス魔物なのになー。

 売却価格安くなっちゃいそう。


「数があるから、大きい店じゃないと買い取ってもらえそうにないな。『ケーニッヒバウム』って買い取りやってる?」

「もちろんですよ」

「せっかくフーゴーさんと知り合ったんだ。『ケーニッヒバウム』で売ろうか。これ周辺の集落に被害出ちゃってるの?」


 道案内の兵士が言う。


「被害を受けたのは、ヒドラの出現した場所に最も近い集落一ヶ所だけです。対応が早かったのが幸いでした」

「売却金はその集落に寄付しちゃっていいかな?」

「いいかなって……君のパーティーが倒したんじゃないか」

「皆手伝ってくれたじゃん。こういう場合、ドーラでは山分けだぞ?」


 皆が顔を見回し、メルヒオールさんが言う。


「よいのではないか? ユーラシアに従おう」

「じゃ、帰ろうか。まだ大広場で待ってる人いそうだし」


 クララの高速『フライ』でびゅーんと帝都メルエル中央大広場へ。

 あ、亡骸放ってあるけどいいのかな?

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