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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1158話:『技』の勝負?

 ――――――――――二〇〇日目。


 ユーラシアが本領を発揮し、ピンチをチャンスに変える日。


          ◇


 フイィィーンシュパパパッ。

 皇宮にとうちゃーく。

 今日は貴公子こてんぱんイベント最終日だ。

 過ぎてしまえば呆気ないものだと、もう勝った気でいるお茶目なあたし。


「おっはよー」

「やあ、精霊使い君。おはよう。ちょっといいか?」

「どうしたの? 木々のざわめきが風雲急を告げているけど」

「エセ詩人っぽいな」


 アハハと笑い合う。

 どうしたんだろ?

 土魔法使い近衛兵が少しだけ真面目ぶり、声を潜めて言う。


「昨日、大型の魔物が出現したとのことだ。君に協力の要請がきている」

「大変だね。魔物の種類と数、場所は?」

「俺じゃ詳しいことはわからん。詰め所に来てくれ」

「待って。魔物退治になるならうちの子達呼んでくる」


          ◇


「避難住民の目撃証言からすると、おそらく多頭ヒドラ一体です」


 軍の連絡兵からの情報だ。

 詰め所の面々は皆深刻そうな顔をしている。

 近衛兵長さんが言う。


「キングヒドラか。準災害級の魔物ですぞ」

「何でヒドラが出るようなところに住民がいるのよ?」


 魔境に住んでるようなもんじゃん。

 魔物の多いドーラだってそんなバカなことしないぞ?

 リモネスさんが説明してくれる。


「普段から魔物が住み着いている場所、ということではないのです。近隣にあるヴォルヴァヘイムという場所が問題でして」


 原因は不明だが、魔力濃度の高い場所らしい。

 魔境かあるいは『永久鉱山』のような仕組みなのだろう。


「ヴォルヴァヘイムには多くの凶悪な魔物が生息しており、無論立ち入り禁止です。しかし成因は不明ですが、ヴォルヴァヘイムの外部にも大きな魔力溜まりができることがあるのですぞ。たまたまそれが魔物の発生条件を満たしてしまうことがあるようなのです」

「しょっちゅうでっかい魔物が湧いちゃうんだ?」

「キングヒドラほどの魔物となると、一〇年に一度くらいでしょうか」


 ふーん。

 しかし魔物退治のために軍隊があると思えば。

 連絡兵が言う。


「ユーラシア殿には、歩兵隊一万と共同行動を取っていただきたく」

「りょーかいでーす。場所は近いの?」

「北へ強歩約二日です」


 人口の多い帝都から強歩二日の距離しかないところに、キングヒドラが出るよーなヤバめのエリアがあるのは驚きだな。


「一万人の歩兵と行動をともにって、つまり帝都から兵を出すってことでしょ? 着くまでに三日はかかるだろーが。被害が広がっちゃうぞ?」

「し、しかし……」


 一万人いたって、一度に戦闘状態に入れる人数は一〇〇人二〇〇人くらいだろうしな。

 魔物退治のプロであるあたしからすると、兵隊さんはいるだけ邪魔だし。


「今回はサービスだぞ? うちのパーティーで倒しとくよ」

「えっ?」


 ハハッ、驚いてるの連絡兵だけだわ。

 キングヒドラなら、バアルが召喚した時に見たことがある。

 倒し方はわかってる。


「その代わりヒドラの牙はもらっていいかな? 結構高く売れるんだ」

「構わぬ。予が許す」

「殿下おっとこまえー!」


 前の時は牙七〇本以上取れた。

 帝国本土で売ればドーラより高く売れるだろ。


「さて、大広場行こうか」

「「「「「「「「えっ?」」」」」」」」


 今度は全員驚かしたった。

 今日は本来、ライナー君と『技』の勝負だからね。


「もう観客たくさんいるんでしょ? 断り入れとかないと。不戦敗扱いにされたらかなわんもん」

「……まあ市民に状況を知らせておくことも必要か」


 大広場へゴー。


          ◇


『レディースアンドジェントルメーン!』


 大広場に着くなり拡声器を借り、オーディエンスの皆さんに説明する。

 注目されると気分がいいなあ。


『皆さんのヒロイン、ドーラの美少女冒険者ユーラシアです。緊急事態勃発でーす』

「緊急事態?」


 ざわざわする。


『ヴォルヴァヘイム近隣でキングヒドラが発生したらしいです』

「キングヒドラ?」

「さ、災害級の魔物かい?」


 帝国の魔物の分類はどうなってるんだろうな?

 近衛兵長さんは準災害級って言ってたけど。


『倒しに行かなきゃならないので、申し訳ないけど今日の対戦は中止ね』


 司会が困惑したように言う。


「そんな悠長な事態じゃないだろう。大丈夫なのかい?」

「あたしは冒険者だぞ? 有利な位置取りが可能なら」


 ヒドラは毒を吐くので、風上取られるのは気味が悪いのだ。


「ユーラシア君、私も行こう!」


 ライナー君でした。

 まあ騎士は魔物退治訓練もあるんだろうから、キングヒドラを見とくのも勉強になるだろうな。

 お師匠のボクデンさんも行く気満々ですね。


「手伝ってくれる? ありがたいなー」

「俺も連れていけ。必ず役に立つ」


 メルヒオールさんもか。

 うちのパーティーが四人で道案内と検分役の兵士が一人ずつ。

 ライナー君ボクデンさんメルヒオールさんを加えて計九人か。

 あと三人は問題なくクララの『フライ』で同行可能だな。


「新聞記者さん達も行く? 面白い記事が書けると思うよ。飛行魔法で行くからさほど時間もかかんない」

「いいんですか?」

「危なくないでしょうか?」

「ヒドラだぞ? 敏捷性はないし、怖いのは毒攻撃くらい。遠距離攻撃手段も持ってないから、離れてりゃ平気」

「「「お供させてください!」」」


 リリーが言う。


「我もついて行きたいが」

「定員オーバーだな。今回は勝利の女神に祈るプリンセス役で我慢しなよ。ちなみに勝利の女神ってあたしのことだぞ?」


 アハハと笑い合う。

 もう一度拡声器に声を張り上げる。


『では皆さんさようなら。お昼までには戻ってきて吉報を届けると約束しよう!』

「お昼までって?」

「ヴォルヴァヘイムは遠いぞ?」


 半信半疑のオーディエンス。

 世界一の飛行魔法のスピードを知らんから。


『あたしの名誉にかけて、お弁当を食べ損なうなんてことはないのだ!』

「「「「「「「「……」」」」」」」」


 あれ? ドーラならバカウケだけどな?

 帝都の人は笑いのツボが違うんだろうか。

 拡声器を司会に返す。


「ま、いいや。クララ、お願い」

「はい、フライ!」


 一二人の身体がフワッと浮き上がる。


「と、飛んでる?」

「きっと飛行魔法の使い手がいるんだ!」


 正解です。

 今日チャンバライベントがなくなっちゃったから、せめて世界一の飛行魔法を見て楽しんでよ。

 オーディエンスの拍手喝采を受け、兵士の案内に従い目的地へ飛ぶ。

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