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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1157話:曲がったフラグを立てんな

「サイナスさん、こんばんはー」

『ああ、こんばんは』


 夕食後に毎晩恒例のヴィル通信だ。

 今日は行政府から帰ってきてパウリーネさんとひゃい子を帝都に送ったあと、イシュトバーンさんに今日の結果を報告、余った時間に魔境で寛いできた。

 ふう。


 ゲレゲレさんと連絡取って、ユニコーンの草原に行けるようにしとけばよかったろうって?

 だって今日疲れちゃったんだもん。

 魔境で休みたい。


「JYパークって名前は、言いやすくていいと思わない?」

『ああ。もう既にかなり広まってるんだ。今日輸送隊帰りの日だから、夕方まで人が多かったこともあるが』

「タイミングがよかったねえ」


 言いやすい覚えやすいってのは大変よろしい。

 ひゃい子の名付けはさすがだわ。

 また巡り合わせも大事だな。


『アレク達三人は明日緑の民の村を訪れ、スキルスクロール用紙の試作品を取りに行くようだ』

「あれ? 塔の村で冒険者活動はしないのかな?」

『いや、紙を持ってデスさんの意見を聞くんじゃないかな』

「うーん、スクロール紙はあたしも早めに確認して様子を知りたいけど、明日と明後日はカラーズに行けそうにないんだ」

『仕方ないな。アレクにはそう伝えておくよ』

「ごめんね」


 明日は対決後リリー関係で何かあるかもしれないしな。

 明後日は魔物退治がいつ終わるかまるでわからん。


「こっち面白いことになったよ」

『料理対決の結果がか?』

「あ、それもあったな」

『まだあるのか。ユーラシアのところへはどうして面白話が集まるのかなあ』


 (笑いの)神に愛されてるから。


「料理対決の方からいこうか。あたしも相手も出したのスイーツだったんだ」

『ほう?』

「スイーツ対決ならこっちにはバアルにもらった秘伝のレシピ集があるから」

『なるほど。向こうはどうしてスイーツ勝負に来たんだろうな?』

「冷めて不味くなっちゃう料理は出しにくい状況だったからね」


 おそらくピット君の頭の中には作り置きでも美味しい料理の構想がいくつかあって、あたしの提案した一品料理の勝負を受けたんだろう。

 ドーラに洗練されたスイーツなんかあるはずがないと思っていたから、必勝を思い描いていたはず。

 残念だったな、それは残像だ。


『相手はアレクみたいな子だったか?』

「まあプチ悪いやつだなー」

『ユーラシアはリリー皇女に相応しくないと見るのかい?』

「今はまだダメだな。リリーを丸め込むほど悪いやつにならないと」

『よくわからないけど表現がえぐい』


 アハハと笑い合う。

 いや、これは冗談ではないのだ。

 ピット君は隠すべき才気に見えちゃってるところがあって、商人としてどうなの? と思っちゃう。

 リリーもそーゆーとこを敏感に感じ取って、青いと見ているんじゃないかな。


「今日の対戦相手ピット君のお爺さんが、フーゴーさんっていう帝都一のお店の店主でさ。まずスイーツで協力することになった。料理人を貸してもらって、秘伝のレシピ集の解読を進めるんだ」

『……素晴らしいスイーツが食べられるようになると嬉しい、という理屈はわかるが』

「帝都でスイーツブームになったら、ドーラの砂糖はどんどん売れるよ」

『ああ、商売の仕掛けなのか。君の仕掛けはビックリするほど真ん中通すことがあるかと思えば、地味な搦め手もあるんだなあ』

「千変万化の魅力がある美少女ってことだよ」


 どの道砂糖の需要は増えるはず。

 西域でドカッと作って欲しいな。


『明日はチャンバラなんだな?』

「うん」

『一応天才剣士なんだろう?』

「と言われてるみたいだね。何の根拠があるのか知らんけど、自信あるみたいだよ」

『隠し技があるんじゃないか?』

「まあちょっとはあたしを楽しませてくれるようじゃないと、オーディエンスだって面白くないよね」


 つってもライナー君、レベル二〇にも届いてないくらいだしな。

 一〇〇以上のレベル差を埋めるような技量やスキルがあるなら認めてやってもいい。


「本日メインのお話なんだけどいいかな?」

『もうお腹一杯な気がするが、謹んで拝聴しよう』

「昨日対戦したヘルムート君のお姉さん、パウリーネさんって人でさ。プリンスルキウスのことが昔から好きだったんだって。プリンスと元悪役令嬢フィフィとの婚約が決まった時には倒れちゃったくらい」

『つまり公爵令嬢だな? どんな方だい?』

「長い黒髪の、存在感あるけど大人しそうな美人。喩えれば夜空に輝く星のような」

『君と真逆だな』

「あたしはあまねく恩恵を与える太陽のようだから」


 アハハと笑い合う。


「あたしの見る限り、プリンスとパウリーネさんの相性はかなりいいね」

『ははあ、プリンスとの間を取り持とうということだな?』

「いや、ひゃい子そっち連れてく前にプリンスに会わせたの」

『相変わらず行動が早いなあ』

「早くなくちゃいけない理由があるんだよね」

『ルキウス皇子のところにも多くの縁談が来るということか?』

「縁談がドカドカ来るのも本当だね。皇帝陛下が亡くなっちゃうと、この話立ち消えになるかもしれないじゃん?」

『……なるほど。きな臭いなあ』


 実際のところ、アーベントロート公爵家にどれくらいの影響力があるかは知らない。

 でもパラキアスさんがパウリーネさんとの縁談を早急に進めた方がいいみたいな言いかたしてたから、おそらくはかなりの実力者なんだろう。

 味方につけられるならば、次期皇帝争いで大きな影響があるんじゃないか?


『随分と帝国内で関わる人増えてきたんだろうに、君は今でも変わらずルキウス皇子推しなんだな?』

「うん。プリンスがいい。扱いやすい」

『仮にも次期皇帝の話なのに理由がひどい』

「皇帝の話だからだとゆーのに」


 帝国のトップに相応しくてドーラにとって都合のいい人間が、あっちこっちに転がってるわけないだろーが。


「昨日今日はいい感じで対戦相手をこてんぱんにしながら仲良くなれたから、明日も同じように終えるんだ。リリーニッコリ」

『おっ、フラグだな?』


 ちげーよ。

 曲がったフラグを立てようとするのはマジでやめろ。

 帝国の有力者との関係は、今後のドーラの発展に関わるんだから。


「サイナスさん、おやすみなさい」

『ああ、おやすみ』

「ヴィル、ありがとう。通常任務に戻ってね」

『わかったぬ!』


 明日も帝都、イケメン剣士ライナー君と『技』の対決。

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