第1154話:プリンスルキウスとパウリーネさん
「第一皇子のお葬式で久しぶりに帝都の皆さんに姿を見せて以来、プリンスルキウスの注目度は上がってるんだよ」
パウリーネさんは美人で、あたしの見たところプリンスルキウスとの相性はいい。
公爵家の令嬢ならば、少なくとも後ろ盾としては男爵家の娘だった元婚約者フィフィより上だろう。
次期皇帝を狙うプリンスにはピッタリなんじゃないの?
「どうせ恥ずかしがって自分から行動起こさなかった間に、フィフィにかっさらわれたんでしょ? のんびりしてると同じことが起きるぞ?」
「困ります!」
「今からプリンスに会いに行く?」
「行きます!」
よーし、よく言った。
パウリーネさんはプリンスラブで、父の公爵様も了解していることなら。
ヘルムート君の親ならきっと、次期皇帝についても思うところあるんじゃないだろうか?
積極的にプリンス推しってのはさすがにないだろうなー。
プリンスの次期皇帝はないと見てるので、実務面の有能さから、あるいは中立の観点から嫁に行かせてもいいと考えてるってとこかな?
赤プレートに話しかける。
「ヴィル、聞こえる?」
『聞こえるぬ! 感度良好だぬ!』
「プリンスと連絡取ってくれる?」
『わかったぬ!』
フーゴーさんが聞いてくる。
興味深げだ。
「ユーラシア殿の悪魔を使った連絡法ですかな?」
「うん。ヴィルはとってもいい子なんだ」
「わしもルキウス様と話をしたいのだが、よろしいだろうか」
「どーぞどーぞ。ちょっと待っててね」
お葬式でプリンスが帝都メルエルに戻った時には、商人達と会ってる時間はなかったらしい。
老舗の店主としては逃せない機会なんだろう。
『御主人! プリンスだぬ!』
『やあ、ユーラシア君。どうしたんだい?』
「今帝都にいるんだ。『ケーニッヒバウム』店主のフーゴーさんって人が、プリンスと話したいんだって」
『フーゴー殿が? 代わってくれ』
フーゴーさんに赤プレートを渡す。
「ルキウス様、先日は御立派になった姿を拝見いたしましたぞ」
『ハハッ。店に寄れなくてすまなかったね』
「いずれ改めて挨拶に伺います」
『うむ。しかし精霊使いユーラシア君が『ケーニッヒバウム』に目をつけたのなら、自然に巻き込まれると思う』
「それはどういう……」
『冗談みたいな子なんだ』
「おいこらプリンス。あたしが誤解されるだろーが」
『冗談みたいに存在感があって、商売事に関する嗅覚が鋭い子なんだ』
初めからそう言っておくれよ。
あーんど『美しい』とか『可憐』とかの修飾語を足して欲しい。
「よき出会いだったと神に感謝したいところです。ではルキウス様。またいずれ」
『再会を楽しみにしているよ』
「別件でもう一つ。プリンスに会わせたい人がいるんだ」
『ん? 誰だい?』
「アーベントロート公爵家のパウリーネさん。プリンスのお嫁さんにどうかなーと思って」
『えっ? ちょっと待って!』
「待たない。一時間後くらいに行政府行くね」
『わ、わかった』
「ヴィル、ありがとう。しばらくそこにいて、遊んでもらっていなさい」
『はいだぬ!』
これでよし。
「お弁当を食べさせろと、お腹が文句を言っています」
◇
「精霊使いユーラシア、颯爽と登場!」
「御主人!」
「よーし、ヴィルいい子!」
昼食後、パウリーネさんとひゃい子を連れ、行政府大使室に転移してきた。
飛びついてきたヴィルをぎゅっとする。
可愛いのう。
「ルキウス様、御機嫌よう」
「ああ、パウリーネ嬢。遠いところまでようこそ」
ふむ、プリンスの女性のタイプは知らんかったけど、満更ではないニヤニヤ。
「ちなみにパウリーネさん、この子がうちの悪魔のヴィルだよ」
「よろしくお願いしますぬ!」
「百獣の王のポーズ!」
「がーおーぬ!」
「まあ、とても可愛いですのね」
「可愛いぬよ?」
「もういいだろう? 意地悪しないで、どういうことなのか状況を説明してくれ」
プリンスが焦れてきたようだ。
こーゆーのは焦らした方が面白いんだけどなあ。
他の大使室の面々やパラキアスさんはニヤニヤしている。
「あたし今、リリーの縁談をぶっ壊せイベントっていうのに取りかかってるんだ」
「リリーに縁談が殺到していることも、前向きじゃないことも知っているが……」
「で、プリンスにラブのパウリーネさんと知り合って、お節介焼いてるの」
「全然情報が足りてない上に色々明け透けでひどいな!」
アハハ、照れちゃって。
そんなプリンスをパウリーネさんがうっとりした目で見てるがなニヤニヤ。
「あたしも基本的にラブい話が大好きだからさ。縁談ぶっ壊すばかりじゃなくて結びつける方も担当したいんだもん」
「いや、大変お似合いですよ」
「クリークさんナイスアシスト!」
パラキアスさんが言う。
「何か企みがあるのか?」
やだなー。
あたしがいつも何かを企んでるみたいじゃないか。
「特には。ただあたしの極めて優秀なラブセンサーによると、プリンスとパウリーネさんは相性はなかなかいいんだよ。公爵令嬢ならどうせ最有力候補でしょ? とっととくっついてくれれば、他の縁談が来てもすぐ切れるじゃん。プリンスの実務能力がつまんないことで消費されるのはムダだから」
「ほう? ユーラシアはもっと拗れた方が好みなのかと思っていたが」
「それもまた偽らざる本音だけれども」
「精霊使い君の考えていることは、本当にわからんなあ」
アハハと笑い合う。
乙女の行動原理は謎なのだ。
プリンスが言う。
「ところでそちらのお嬢さんはどなただい?」
「ひゃっ!」
「ひゃい子だよ。帝都裏町の名付け屋。ごめんね、恥ずかしがりだから、あんまりコミュニケーション取れないけど。カラーズに用があるから連れていくんだ」
「カラーズに? 何か企みがあるのか?」
「だから何であたしがいつも企んでるような物言いなのよ?」
美少女精霊使いの信頼性に傷がつくだろうが。
「カラーズ各村の間の緩衝地帯に名前をつけようってことになったから」
ちくしょう、皆がパウリーネさん見てて誰も聞いちゃいねえ。
「じゃ、あたし達行くね。あとは若いお二人で。残念ながら二人きりにはなれないけど」
「君はもっと若いじゃないか」
「若いって素晴らしいね」
笑い。
「一時間後くらいに戻ってくるよ」
「ああ、わかった」
「じゃーねー」
「バイバイぬ!」
転移の玉を起動し、ひゃい子とともにホームへ。




