第1152話:『知』の勝負
『親愛なる帝都市民の諸君! 昨日の鮮烈なパフォーマンスが記憶に新しい、ドーラの美少女冒険者ユーラシアが登場だ! ステージで待ち構えるは、『ケーニッヒバウム』店主フーゴー氏の孫ピット!』
「「「「「「「「うおー!」」」」」」」」
おお? 思ったより盛り上がってるわ。
今日は対戦の内容が地味だから、登場シーンからテンション上げようっていう演出だな?
イベンターの人も考えてるなー。
持ってきた料理をスタッフに手渡し、司会の元へ。
『諸君、今日は料理対決だ! 選手双方が用意した一品料理を審査員が食し、おかわりしたい方の皿を審査員に上げてもらう! 皿の多い方が勝ちだ!』
「「「「「「「「うおー!」」」」」」」」
昨日も思ったけど、あたし達選手なのな?
貴公子ズがチャレンジャーであたしが試練の受け手って構図だと思うけど、考えてみりゃうまい言葉がないわ。
『審査員の一人を紹介しよう! 帝都のグルメ女王グレタ氏だ!」
『よろしくざあます』
「「「「「「「「うおー!」」」」」」」」
すげー横幅の派手なおばちゃんキター!
帝都でも有名な人みたいだな。
グルメ女王って言うからには、食の権威みたいな人なんだろう。
さすが帝都だなあ。
『残りの審査員はまだ決まっていない! 選手双方に三人ずつ選出してもらう!』
「「えっ?」」
ふむ、ピット君の反応は素だ。
工作してる雰囲気はないな。
くだらん多数派工作をしてくるようだったら、リモネスのおっちゃん連れてきて全て白状させ、一気に負けに追い込んでやるつもりだったけど、どうやら必要ないみたい。
リリーを手に入れるためには、正々堂々と勝負して勝つことが条件と考えているようだ。
ならばあたしも正々堂々と……。
「そちらのお爺さんがいいな。フーゴーさんかな?」
「いかにも」
興味深そうな目を向けてくる白髪ヒゲの爺さん。
ピット君が慌てて言う。
「ちょっと待って! お爺様はボクの出す料理を知ってるんだ!」
「構わないぞ? 知ってようが知らなかろうが、美味い方が勝ちなんだから」
「実に興味深いな。審査員を引き受けようではないか。安心せい、孫だからといって贔屓はせぬ」
『おおっと! 美少女冒険者ユーラシアは何とフーゴー氏を指名した! 料理によほど自信があるのか、それとも怖いもの知らずなのかーっ!』
「「「「「「「「うおー!」」」」」」」」
ハハッ、盛り上がる盛り上がる。
楽しくなってきたぞー。
「で、ではボクはリリー様を指名します!」
『驚くべき対戦になった! ピットはリリー皇女を指名だ!』
「「「「「「「「うおー!」」」」」」」」
ピット君やるねえ。
お約束をわかってるじゃないか。
「リリーよかったねえ。今日のは絶対美味いやつだよ」
「うむ、楽しみなのだ!」
残りの審査員はヘルムート君、ライナー君、司会の人、かぶりつきで見ていた観客の女の子となった。
舌の肥えてる人が多いんじゃないかな。
やや若者が多目だが、概ねバランス取れてるメンバーと言っていい。
司会が声を張り上げる。
『料理が運ばれてきたぞ! 審査員の方々、オープンしてください!』
各審査員の前に置かれた覆いが取り払われる。
「こ、これは?」
七人の審査員の顔に、一様に困惑の表情が浮かぶ。
『これは意外! 双者ともスイーツで勝負だーっ!』
ほう、ピット君もスイーツを持ってきたか。
いや、スイーツ勝負になったのは意外ではないのだ。
ピット君が言う。
「ドーラ独自のスイーツではルール違反ですよ?」
「帝国風だぞ? 審査員見てみなよ。どっちがどっちかわかってないから」
「くっ、サル真似でボクに勝てるものか!」
「ドーラの山ザルを舐めんなよ?」
ハハッ、リリーなんてもう食べ終わってキョロキョロしてんじゃねーか。
「ユーラシアさんはどうしてスイーツを選択したんです?」
「スイーツをもっと一般的なものとして普及させたいんだよね。ドーラ産の砂糖をたくさん輸出できそうじゃん?」
「そ、そんな理由が……」
いきなりの商人的理由に目を白黒させとるわ。
まあピット君と同じ理由ももちろんあるよ。
今日の勝負方法で有利になる、作り置いてもおいしい料理となると限られるからね。
全員が食べ終わったようだ。
司会が声を張り上げる。
『双方ともに大変な美味だった! しかしおかわりしたいのはどちらだとなると、私の中には明確な答えがある! さあ、他の審査員の皆さんはどうだ? カウント〇で勝者の皿を上げてもらおう。親愛なる帝都市民の諸君、五からカウントダウンスタート!』
「「「「「「「「五! 四! 三! 二! ……」」」」」」」」
おおう、緊張感あるなあ。
「「「「「「「「一! 〇!」」」」」」」」
全員の手が挙がる。
手に握られている皿は……。
『全員赤の皿! これは……』
「ば、バカな……」
愕然とするピット君。
『ドーラの美少女冒険者ユーラシアの勝利!』
「洗練された帝都のスイーツが負けるわけは……」
「ピット君も食べてみる? 余計に作ってきたんだ」
あ、リリーだ。
「ユーラシア! おいしかったぞ! おかわりを所望する!」
「欲張りだなー。二〇個作ってもらったんだ。余分があるからスタッフさんに持ってきてもらおう」
派手なおばちゃんとフーゴーさんも来た。
「至上の美味ざあますわ。あれほど滑らかな舌触りを実現できるとは。素晴らしい!」
「ピットよ、諦めろ。お主も食べれば理解できる」
「あ、来たよ。食べてみて」
あたしも一個もらお。
これ目立たないけど寒天も使ってるじゃん。
ピット君もあむり。
「これはっ!」
「驚いた? おいしいでしょ」
ハハッ、ピット君ガツガツ食っとるがな。
おばちゃんが首をかしげながら言う。
「でもあり得ないのざあます。明らかに全盛期のカル帝国宮廷風の技術、これほどのものがドーラにあるはずがないざあます」
「おばちゃんすごいわ。そこまでわかっちゃうのか。これドーラの工夫も入ってるけど、元々は帝国のレシピなんだ。帝国の宮廷料理人を多く輩出していた一族の、お菓子の秘伝のレシピ集ってのを参考にしているんだよ」
「まさか伝説の『サバランの裏レシピ』?」
「名前は知らんけど、クエストでお宝として手に入れたの」
「あるあると噂だけが先行していたのだ。実在していたとは! 大変な文化遺産だ!」
おばちゃんとフーゴーさんが興奮しとるわ。




