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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1149話:昏倒

「ただいまー」

「ユー様、お帰りなさい」

「どうでやした?」


 うちの子達も貴公子達を薙ぎ払えイベントに関しては無視できないようだ。

 ハハッ、下世話な精霊達め。


「バッチリ。でも明日は食の対決になったんだよね」

「フード? ワッツ?」

「うん。審査員に料理を出します。おいしい方が勝ち、みたいな」

「おかしな勝負になりましたね?」

「まったくねえ。でも『知』のテーマだから、その辺が互いの妥協点かなっていう」


 美味いものの知識は重要、とゆーのは共感しかない。

 帝国の食材をドーラで普及させることも、ドーラのグルメを帝国に持ち込むこともいいことだと思う。

 そして『知』のテーマという地味な対決を観客が喜ぶようにお膳立てするには、食の勝負はいいセン行ってると思う。

 『知』の対決で出された料理だぞって感じで、一般大衆にも還元できそうでもある。


 さて、明日の準備をせねば。

 赤プレートに呼びかける。


「ヴィル、聞こえる?」

『聞こえるぬ!』

「イシュトバーンさんと連絡取ってくれる?」

『わかったぬ!』


 クララが言う。


「イシュトバーンさんと相談なんですね?」

「料理を作れじゃなくて、美味いもの持ってこいっていう趣旨の対決なんだ。イシュトバーンさんとこの料理人に作ってもらおうかと思って」


 技法という意味では一番信頼できる料理人だからね。

 ん? 赤プレートが変だぞ?

 ブルブル振動してる。


『御主人、大変だぬ!』

「どうしたの?」

『代わるぬ!』


 ヴィルの精神状態が赤プレートにも影響するみたい?

 何が起きたんだろ?


『精霊使い殿! 今すぐこちらへ来てくだされ』

「何事かな?」


 今のは警備員さんだな?

 イシュトバーンさんに異変が?


『旦那様が飛行中に建物の梁に頭をぶつけ、昏倒してしまったのです!』

「何やってんだよもー」


 暇過ぎて曲芸飛行でもしてたんだろうか。

 バカ過ぎる。

 そーいやペペさんも天井に頭ぶつけたって言ってたか。

 ペペさんが痛いくらいですんじゃうのにイシュトバーンさんが昏倒しちゃうのは、レベルの差かな? 年齢の差かな?


「クララ連れてすぐ行く!」


          ◇


「いやあ、助かった」


 クララの『ハイヒール』で、イシュトバーンさんはすぐに息を吹き返した。


「……もう身体の損傷はないけど、魔力の流れは乱れてるよ。頭ぶつけたからかな? 頭って大事な器官なんだねえ」

「少し目が回る気がするぜ」

「二、三日寝てた方がいいよ」

「おう」


 若くないんだから大人しくしてなよ。

 まったくお茶目なんだから。


「ノアとココちゃん、慣れてきたみたいだね」

「おう、今後が楽しみだぜ」


 ノアは得がたい『ララバイ』の使い手だし、ココちゃんも帝国式侍女の作法を身につけている。

 二人とも貴重な人材だ。

 横になったイシュトバーンさんが、顔をこちらに向ける。


「今日からあれだろ? リリー皇女の旦那候補を粉砕するイベント」

「粉砕はしないけれども」

「『力』の勝負だったな。どうだった?」

「美少女パワーで楽勝だった」

「だろうな」

「ほいっと持ち上げて会場になってた帝都中央広場の噴水池にドボーン」

「ハハッ、見物人ビックリしてたろ?」

「うん。割と盛り上がったからよかった。エンターテイナーユーラシアの面目躍如だよ」

「つまり明日の『知』の勝負について、オレに相談するために連絡してきたんだな?」

「見通すなあ。そーゆーことなんだよ」


 却って頭冴えてるんじゃないの?

 ガツンしてよかったのかも。


「どんな内容だ?」

「お互い一品料理を用意して、審査員がおかわりしたい方が勝ち」

「コブタ肉炙り焼きフルコンブ塩じゃダメなのか? あれ絶品だろ」

「ダメなの。先入観なしで審査員にもどっちが出した料理か知らせないで食べさせるんだ。あらかじめ作り置きした料理を提出することになる」

「……ということは、見ただけでどちらが出したか知れる料理は禁止ってことか。作りたてを出すわけにもいかない」

「そうそう。飲料もなし」

「ははあ、お茶もアウトか。かなりあんたのことを調べさせてるようじゃねえか。相手はどんなやつだ?」

「あたしの弟分アレクに感じが似てる。頭いいと思う」

「ほう、強敵だな」

「まあ。でもリリーのお婿さんになるなら、もっと頭使って賢くなんなきゃダメだな」

「あんたの採点は厳しいじゃねえか」


 イシュトバーンさんがえっちな目になる。


「あんたの勝負の一品はよくわかった。ワイバーンの卵はあるか?」

「持ってきた」

「よし、明朝に取りにくるんだな?」

「うん。お願いしまーす」


 これでよし。

 準備は万端だ。


「で、本日の面白話のコーナーだが」


 いつの間にかコーナーが新設されているぞ?


「『雪の精霊』クエストで知り合った、ゼムリヤの設定盛り盛りの『精霊の友』の人いたじゃん? 正体がわかったんだ」

「誰だ?」

「メルヒオール・リリエンクローン辺境侯爵だった。ゼムリヤの領主様」

「考え得る限りで一番の大物が出てきちまったな」

「あ、考えてた中にはあった答えなんだ?」

「まあ精霊使いのクエストだからな」

「そーだったかー」


 マジで冴えてるな、今日のイシュトバーンさん。

 メルヒオールさんは有力者で、かつ帝国の皇族や権力構造を客観的に見ることのできる立場の人だ。

 ああいう人と知り合えたのはありがたい。


「貴公子粉砕イベントを見たいようだったから、帝都に連れてってさ」

「刺激的だったに違いないぜ」

「イベント自体も楽しかっただろうね。孫のリリーやウルピウス殿下に会ったのも久しぶりじゃん? 喜んでくれたと思うんだ」


 明後日まで泊まりということだった。

 どこかで皇妃様と顔を合わせる機会もあるだろう。


「相変わらずいい仕事してるじゃねえか」

「相変わらずいい仕事してるんだよ」

「相変わらずいい仕事してるんだぬ!」


 アハハと笑い合う。

 最近ヴィルのツッコミがシャープだなあ。

 よしよし、いい子。


「で、メルヒオールさんに魔物退治の依頼を請けたんだ。今年雪が解けるのが遅くて、山の魔物が人の住んでる麓まで来ちゃうみたい」

「普通の依頼だな?」

「面白くなっちゃう要素はあるんだ。これは縁談クラッシュイベントの後、三日後なんだけど」

「おう、終わったら聞かせろ」


 さて帰るかな。


「じゃ、明日の朝来るからね。お大事にー」

「おう、またな」

「バイバイぬ!」


 転移の玉を起動し帰宅する。

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