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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1147話:三連勝しちゃうから

 寂しそうに笑う大男ヘルムート君。


「これで自分は脱落か。リリー様にはみっともないところを見せてしまったな」

「ヘルムート殿……」

「別に脱落じゃないから頑張れ」

「「えっ?」」


 リリーもヘルムート君も素っ頓狂な顔すんな。

 本日のイベントの趣旨とあたしの見解と恨まれないような言い訳を伝えておかねば。


「今日のイベントは、必ずしもリリーの婚約者候補として脱落させるためのものじゃないんだ。出直せってだけ」

「出直せ……」

「『閃き』固有能力持ちのあたしが見る限り、ヘルムート君とリリーの相性は結構いいんだよ。リリーもヘルムート君には好意持ってる方でしょ?」

「うむ、もちろんだ」


 嬉しそうなヘルムート君。


「でもヘルムート君には欠けてるところがあって、そこをリリーは物足りないって見てるんだ」

「物足りない……後学までに伺いたいが」

「ヘルムート君はほぼあたしに対して無警戒だったじゃん? ある程度戦闘経験を積んでると見ただけでその人の強さってわかるもんなんだよ」

「ふむ? なるほど」


 あんたは素直だし実直だし、いい男だぞ?


「でも武術や戦闘経験をヘルムート君に求めるのは違う気がするな」

「うむ、ヘルムート殿は身体こそ大きいが、武より文寄りの資質だと思うのだ」

「あたしもリリーと同感だな。社会でも座学でも経験積んで、リリーに再アタックしてちょうだい」

「再アタックといっても、ピット殿かライナー殿に決まってしまうのだろう?」

「あたしが三連勝しちゃうから、今回は決まらないぞ?」

「そうか。ユーラシア殿の健闘を祈ろう」


 もう一度握手する。

 ヘルムート君は次男だと聞いた。

 次男だと人生の目標がハッキリしなくて、何やるんでもイマイチモチベーションが上がんなかったかもしれない。

 今後はリリーを得るために頑張ってちょうだい。


「カゼひかない内に着替えておいでよ。皆、ヘルムート君に拍手!」

「「「「「「「「パチパチパチパチパチパチパチパチ!」」」」」」」」


 万雷の拍手の中、退場していくヘルムート君。

 司会の人が話しかけてくる。


「明日明後日の勝負の内容について、決めなければいけないんですよ」

「うんうん、聞いてる。明日明後日も楽しみだねえ」


 あ、ピット君とライナー君来た。

 見るからに色男ライナー君が言う。


「明後日の『技』の対決だが、私は剣の技術を競いたい」

「オーケー、いいよそれで」

「ユーラシア、ライナー殿は天才剣士と呼ばれているのだぞ?」

「知ってる。あたしも天才美少女冒険者って言われてるから、いい勝負だね。後ろの方がお師匠さんかな?」


 ライナー君の後ろに目立たぬように控えているヒゲの老人。

 杖にすがってただ立っているようにも見えるが、全然隙がないんだけど?

 只者じゃないわ。


「わかりますか?」

「ってゆーか重心がどっちの足にかかってるかすらわかんない。お師匠さんに勝てるかって言われると難しいけど、ライナー君には多分勝てるぞ?」

「言ったね? では模擬剣による試闘でいいかな?」

「いいよ」

「ユーラシア、ぬしは剣など使ったことがないのではないか?」

「ないけどどうにでもなるって」


 レベルの暴力を思い知るがいい。

 次に『知』の勝負の相手ピット君か。

 大店の店主の孫だったか。

 

「明日のボクとの対戦ですが」

「うん。『知』って言われても範囲が広いよねえ」


 ここは交渉のしどころだ。

 苦手な分野に持ち込まれるのも避けたいし、地味な勝負じゃ見てる方がつまらん。


「あたしの弟分にアレクっていう子がいるんだ。ピット君と雰囲気が似てるなあ」


 一人称が『ボク』だしな。


「お姉ちゃん、手加減してよ」

「あたしは公明正大なのでしない」

「お姉ちゃん美人だね。手加減してよ」

「負けてやりたくなってきたなあ」

「おいこら、ユーラシア!」


 冗談に決まってるわ。

 あたしが油断なんかするわけないだろ。

 大体小ズルさが顔に出てる内は、あたしには絶対勝てんわ。


「で、『知』の勝負の内容はどうしよう? ピット君にアイデアある?」

「食はどうでしょう?」

「食?」


 悪い笑顔だな。

 あたしの興味ある分野ではあるし、面白そうだから乗ってやるけれども。


「食で『知』の勝負になるの?」

「知識がなければ、おいしいものなんか探せないですよ」

「……一理ある」


 『アトラスの冒険者』になってから、食に関する知識がビックリするほど増えたのは事実だ。

 お肉調達のために冒険者やってるようなもんだしな。


「審査員を選出しまして、双方が料理を提出、軍配上がった方が勝ちで」

「いいけど、知識があったって本職みたいな料理は作れないぞ?」

「いい料理人を『知』っていることも重要ですよ」

「ふむふむ。じゃあ明日の一〇時までに審査員の数だけ料理を持ってきて、食べ比べてもらうってことだね?」

「運営に審査員七名を用意していただくのはどうでしょう? ボク側もユーラシアさん側も審査員と会うことは禁止。審査員にどちらが提出した料理か知らせず、料理も明らかにどちら側が作ったかわかってしまうようなのは禁止。純粋に味のみで勝負。飲み物はなし、いかがです?」


 公平なように見えて、コブタ肉炙り焼きみたいなのは明らかにあたしってわかっちゃうからダメってことか。

 超すごいお茶も消してくるところからすると、随分あたしを調査しているっぽい。

 時間なかったのに大したもんだ。

 かれえみたいな知られていない料理もアウトだな。

 帝国の人が一見奇異に思わなくてデリシャスなやつとなると……。


「ユーラシアさんの方から要求ありますか?」


 ほう? 今までの提案は既に通したみたいな言い方だな。

 やるじゃないか。

 ならば……。


「純粋な味勝負なら、食べ物以外を出すのはなしだね?」

「もちろん」

「料理のジャンルは何でもあり、食器は運営が用意したもの、一品でおかわりしたくなるのはどっちだ、って勝負にしてくれる? それなら審査員も余裕を持って判定できるでしょ。あたしもたくさん料理持ってくるの大変だからさ」


 ピット君が警戒したような表情になる。

 これだと満腹になってしまうようなゴージャスなコース料理は出せないからだろう。


「……いいでしょう。一品で勝負です。明日、誰にも見せないように料理を持ち寄りましょう」

「よーし、正々堂々といこうじゃないか」


 握手して別れる。

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