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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1146話:『力』の勝負

「わー、こんなに多くの人見たの初めてだよ」


 リリーと貴公子との縁談をクラッシュしちゃうぞイベントの会場、帝都中央広場に到着した。

 真ん中の噴水前が広く開けられており、周りを市民の皆さんが囲っている。

 周辺はほぼ商業地区のようだな。

 建物の階上や屋根にも見物人がたくさんいるわ。

 落ちんなよ?


「こんにちは。あなたがリリー様の代理人ユーラシアさんでよろしかったですか?」

「よろしかったですよ。こんにちはー」

「本日はよろしくお願いいたします。対戦の概要ですけれども……」


 イベンターの人みたい。

 初日が『力』、二日目が『知』、三日目が『技』っていうテーマがあり、それぞれヘルムート君、ピット君、ライナー君と対戦ね。

 その辺までは聞いてる。


「対戦相手の令息に会ったことないんだよ」

「そちらの方々になります」


 あれがリリーのお相手候補の三人か。

 バルバロスさんや近衛兵長さん並みの大男、これが今日の対戦相手のヘルムート君だな。

 次に控えているのがリリーよりも年下なんじゃないかと思える、トーガを着た可愛い男の子。

 彼が商人の跡取りというピット君だろう。

 最後のいかにも貴公子然とした銀髪をなびかせる騎士、ライナー君だな。


「ドーラの冒険者という、ユーラシア殿ですな? 自分はヘルムートと申す」


 実直そうにゆったりと話しかけてくる大柄の男。


「うん、よろしく」

「ボクはピットです。ユーラシアさんは報道通りお綺麗ですねえ」

「まったくだ。私は騎士ライナー。よろしく、美しいお嬢さん」


 真っ先に容姿を褒めてくるとは、わかってるじゃないか。

 リリーに話しかける。


「皆いい人じゃん。何が気に入らないの?」

「わかるであろ?」

「まあ」


 惜しいな、三人ともリリーとの相性はかなりいいんだが。

 確かにリリーの印象通り、『青っ白く弱っちく見える』というのは言い得て妙だ。

 ボンボンだ、リリーの旦那になるには一味足らんなーって感じ。

 それぞれ一流の人物になる雰囲気は持ってるから、鍛え直してこいって言いたくなる。


 イベンターの男が言う。


「ではユーラシアさんとヘルムート様で、今からの対戦をどういうものにするか話し合っていただけますか?

「ユーラシア殿。勝負の内容はいかに? 『力』というテーマのようだが」

「そうだねえ。まともじゃ勝負になんないし……」


 頷いてるけど、あたしが勝っちゃうって意味だぞ?

 ヘルムート君は身体デカいかもしれないけど、パッと見であたしのレベルが判別できないようではマジで勝負にならない。

 救護班はいるし、あたしも『リフレッシュ』使えるからケガの心配はない。

 でもせっかくこんなにたくさんの人が集まっているのだ。

 見た目に面白くなきゃエンターテインメントじゃないよなあ。


「そこの噴水の池は深いのかな?」

「腰くらいですよ」

「じゃあ池に落ちた方が負けでどうだろ? ちょっと寒いかもしれんけど」

「うむ、了承した」


 握手。

 係員から声がかかる。


「設営準備できました! いつでもオーケーです!」


 あれは拡声器だな。

 イベンターの男は司会もやるらしい。


『親愛なる帝都市民の諸君! リリー皇女を狙う三人の貴公子対謎の美少女冒険者ユーラシアの対決だ。今、帝国史に残る対決が始まる!』

「「「「「「「「うおー!」」」」」」」」


 おお、盛り上がる盛り上がる!


『選手入場!』

「「「「「「「「パチパチパチパチパチパチパチパチ!」」」」」」」」


 盛大な拍手とともに入場する。

 ハハッ、あたしを見てる人のがうんと多いぞ。

 気分がいいなあ。


『選手に自己紹介してもらおう』

『アーベントロート公爵家が次男ヘルムートである。リリー皇女の愛を手にするため、全力を尽くす所存だ』

「「「「「「「「うおー!」」」」」」」」


 いいね、でもいきなり対戦になるのか?

 司会の人、細かい勝負内容聞いてなかったはずだし。

 しょーがない、観客に説明しとくか。

 拡声器を渡される。


『レディースアンドジェントルメーン! 義によって馳せ参じた、リリーの友人ユーラシアだよ。今日あたしは壁になるっ!』

「は?」

「か、壁?」


 ざわつく群集。

 あたしに注目せよ!


『我は試練なり! リリーを娶るためには、あたしという壁を乗り越えなくてはならないのだ!』

「いいぞ!」

「頑張れ娘っ子!」


 理解が追いついてきたようだね。


『本日はヘルムート君と『力』の対戦、噴水池に突き落とされた方が負けだよ。水も滴るいい男かいい女かの勝負だ。わかったかーっ!』

「「「「「「「「うおー!」」」」」」」」

『では、ヘルムート君の合図で試合開始だ!』


 拡声器を司会に返す。


「ユーラシア殿、これも勝負だ。悪く思うなよ」

「いつでもどーぞ」

「ハハッ、では始めよう」


 悪く思うも何も、あたしが心配してるのはヘルムート君カゼ引くなよってことだけだわ。

 レッツファイッ!


 噴水を背に、ゆっくり近付いてくるヘルムート君。

 ははあ、噴水の近くで戦って、何かの拍子に転がされて水に落ちるのを警戒してるらしいな?

 ならば……。


「鬼さんこちらー」

「むっ?」


 軽くフェイントを入れながら横走り。

 捕まえればどうにでもなると考えてるんだろう。

 甘いわ。


「そんなことじゃ捕まんないぞー」

「やるな!」


 ……声援が少ない。

 これ傍からは割と単純な駆け引きに見えるんだろうか?

 失敗したなー。

 見どころを作らなくては。


「ヘルムート君、決着をつけるぞ!」

「望むところだ!」


 セリフでクライマックス感を演出しておいてダッシュ!


「き、消えた?」


 驚愕するヘルムート君。

 後ろに回っただけです。

 えいやと持ち上げてポイッと放り投げると、綺麗な放物線を描いて三ヒロほどの距離の噴水池へ。


「バッシャーン!」

「おおおお? すげえ!」

「空飛んだぞ?」

『勝負あり! ドーラの冒険者ユーラシアの勝利!』

「「「「「「「「うおー!」」」」」」」」

「「「「「「「「パチパチパチパチパチパチパチパチ!」」」」」」」」


 よかった、最後は盛り上がった。

 エンターテイナーの面目躍如だよ。


「ユーラシア!」

「おー何だリリーどうしたの?」


 顔くしゃくしゃやん。

 感動した?


「いやあ、見事にやられてしまった」


 噴水池から出てきて、ビショビショのまま近付いてくるヘルムート君。

 握手。

 気持ちのいい人だなあ。

 貴公子三人の中では、一番リリーに合ってる気がする。

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