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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1142話:ゼムリヤの宮殿

「広い館だなー」

「とても広いぬ!」


 館ってゆーか屋敷ってゆーか宮殿。

 うちの子達もキョロキョロしてるわ。

 いやまあゼムリヤってドーラよりも人口規模ずっと大きいんだろうから、領主様が宮殿に住んでるのだって当たり前ではあるよ?

 でも奥さん亡くなって皇妃様も家を出てるから、メルヒオールさん以外は使用人しかいないわけじゃん。

 一人で宮殿に住んでるってどうよ?


「寂しいと言えば寂しいな」

「おっ? 同情誘ってあたしの気を引こうったってムダだぞ?」

「ムダだぬ!」


 アハハと笑い合う。

 うちの子達に気を使ってくれているのか、人払いしたところで話をしたいのか、使用人も遠くで一人控えているだけだ。


「精霊使いは俺に聞きたいことはないのか?」

「聞きたいことかー」


 たくさんある。

 特に皇族貴族の人間関係や、現在の第二皇子が主席執政官として政権を握っている体制について、知ってること思ってることを全部話してもらいたいくらいだわ。

 でもまー距離感ってやつを無視するほどあたしは子供じゃないからな。

 えっ? 美少女精霊使いは距離感なんて全然考えないだろって?

 そんなことないわ。

 大胆に行くのは成功の見込みがある時だけだわ。

 ここは穏便に……。

 

「あたしがゼムリヤに来られるようになったのは、『雪の精霊』っていうクエストをもらったからなんだよ」

「ふむ、それで?」

「『アトラスの冒険者』のクエストは、転送先の困りごとを解決しろっていう建て前なんだ。だからコユキがファントムバインドに捕まってるのを助けたから、お仕事は終わりだと初めは思ってたんだけど……」

「クエスト完了にならなかったということか」


 こっくり。

 コユキが山の上の方に移動したとあっては、いよいよ今後コユキがもう一度クエストに絡むという可能性は低い。


「となるとコユキのイベントはじっちゃんに会うための前振りに過ぎなくて、じっちゃんの困りごとを解決しろってことなのかなと思うんだ」


 嫌だなあ。

 メルヒオールさん、イシュトバーンさんに似た目になってるぞ?


「ありがたい話だな。困りごとなどいくつもあるが……」

「ヤベー。マジで大貴族の困りごと押しつけられそうだ」


 いや、笑うけど、面倒なのは苦手だぞ?

 ゴリ押しで解決できそうなやつギブミープリーズ。


「コユキの件は関係なく、今年は雪が多くてな。冬眠から覚めて腹をすかせた魔獣が、エサを求めて麓に近い場所にチラホラ出現し始めているのだ」

「ふーん。まだこんなに雪があるのに、冬眠から起きてくるもんなのか。ゼムリヤの魔獣は早起きだな」

「俺が山小屋へ行ったのも、魔獣の調査という意味合いがある」


 メルヒオールさんが地図を取り出す。


「ここが山小屋、馬車を控えさせていたのがここ。住民は……」


 ふむふむ。

 住民に被害が出ない内に、一帯の魔物を間引けということだね?

 しかしこの地形は……。


「数日中に魔物の出現はピークになると思われる。駆除を頼めるか?」

「任せて。明日から三日間、リリーのクエストを請けてるから、四日後以降だったら大丈夫だよ」

「リリーの? どういうことだ?」


 あ、この話はまだ知らなかったか。

 帝都は遠いもんな。

 情報の伝達速度にタイムラグがある。


「第一皇子のお葬式でリリーが帝都に戻ったじゃん? 縁談が押し寄せてるんだそーな」

「そこまでは知っている」

「有力候補がアーベントロート公爵家のヘルムート君、帝都の大店『ケーニッヒバウム』の跡取りピット君、ツムシュテーク伯爵家の天才騎士ライナー君なんだって」

「いい話のように思えるが……」

「すげーたくさん集まった縁談の中からその三人が選抜されてるってことじゃん? 少なくとも傍から見て不足のある相手じゃないんだと思う」

「ユーラシアの言い方からすると、リリー自身には不満があるんだな?」


 御名答です。


「青っ白く弱っちく見えるって言ってた。ただリリーの言い分もわかるんだ。リリーも今やレベル三〇越えの結構な実力の冒険者だからさ」


 毎日毎日自分の身体と生活をかけて探索している冒険者の経験値。

 ちょっとやそっとの訓練で追いつくわけはないのだ。


「リリーは昔から武術好きだった」

「リリーだって必ずしも武術だけを評価するってことじゃないんだろうけどね。ともかくあたしが貴公子三人を諦めさせろっていう役どころで、依頼を請けたんだよ」

「ふむ、具体的には何をするんだ?」

「帝都の中央大広場で市民一杯集めた中であたしと対戦、負けたら残念っていうやつ」

「ほう、面白いな!」

「面白いんだよ。こんなのサイコーに盛り上がるの決まってるんだけど」

「ん? 何だ、自信がないのか」


 ちげーよ。

 誰にもの言ってるんだよ。

 ユーラシアさんだぞ。


「あたしはドーラを発展させたいから、帝国の有力者と知り合いになりたいんだよね。でもけちょんけちょんにしちゃうと恨まれそーじゃん?」

「予想外の心配だな」

「心労で小さな胸を痛めているんだよ」

「小さい胸だぬ!」

「もーそんなとこばっかり拾うな。ぎゅー」

「ふおおおおおおおおお?」


 ヴィルは可愛いのう。

 メルヒオールさんが言う。


「俺も観戦したいのだが、どうにかならんか?」

「そお? 明日朝九時までに皇宮に行くことになってるんだ。だから八時半から九時の間に迎えに来るよ」

「いいのか? 山小屋にいればいいか?」

「いや、直接この館に来るよ。玄関でいいかな?」

「どういうことだ?」


 まあわからんだろうな。

 うちの必殺移動手段について説明しよう。


「ヴィルは場所がわかっていればワープできるんだ。で、ヴィルにビーコンっていう行先指定の石持って行ってもらえば、あたしも転移できるの」

「できるんだぬよ?」

「つまり一度行ったことがあればどこへでも行けるのか。実に便利だな!」


 便利なんだよ。

 おかげであたしの行動範囲もすごく増えた。


「じゃ、貴公子こてんぱんイベントの方は明日の朝に迎えに来るとして、魔物間引く方はどうする?」

「一応四日後を予定しておいてくれるか? 詳しいことは後日話そう」

「ん? 何か企んでるでしょ?」

「ハハハ、わかるか。老人の楽しみだ」


 どうやら楽しげなアトラクションを用意してくれるらしいぞ?

 ありがたいなあ。

 

「今日はそろそろ帰るね」

「もうか? 昼飯くらい食っていくがいい」

「ゴチになりまーす!」

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