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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1141話:後継者は誰に?

「じっちゃん、娘を救ってくれたことには感謝しているって言ってたじゃん?」


 館まで結構距離がある。

 話しながらの移動だ。

 庭にヒイラギの木が多いのが印象に残る。

 そーいや辺境侯爵の紋章にはヒイラギの葉が入ってるんだったか。


「うむ。カレンは唯一の娘であるからな。凶悪な呪いから精霊使いが救ってくれたと聞いた」

「あたしじゃなくてクララだけどね。クララの『キュア』はふつーじゃ効かないような状態異常にも効くんだよ。どういうわけか」

「ほう?」

「えへへー」


 メルヒオールさんは精霊のことに詳しそうだけど、精霊の魔法が特別らしいってことは知らないようだ。

 誰か知ってる人いないかなあ?

 精霊の魔法の研究者とか?


「本当にありがとう。しかし精霊の魔法か……」

「いや、娘ってコユキのことかと思ってたんだよ。精霊をすごく大事にしてるのかなーって」


 今となれば話は繋がる。

 カレンシー皇妃が辺境侯爵の娘とは聞いていたから。

 帝国随一の大貴族でリリーの爺ちゃんと知り合いになったと思うと楽しいことだな。

 リリーを連れてきてやってもいい。


「精霊も大事だ。よい関係を築きたいが、『精霊の友』はごく少ないだろう? 今のところ俺の自己満足になってしまっているな」

「ドーラにはノーマル人と精霊が共生する村があるんですぜ」

「ベリーイイトコロね」

「何? そうなのか?」


 メルヒオールさんは相当驚いたようだ。

 あたしにとっては当たり前だが、考えてみりゃ灰の民の村も相当おかしい。


「あたしの出身の村が『精霊の友』ばかりなんだよ。住み着いてる精霊も一〇人以上いて、特に農業について精霊にしか知り得ない情報でアドバイスくれるの」

「ほう? 興味深いな」

「でもねえ、今後ドーラは移民で爆発的に人口が増えるんだよね。とすると精霊も住みづらくなっちゃうじゃん?」

「難しい問題だな。しかしドーラの発展に人口は必須だろう?」

「うん。その村が位置するのはドーラ一の平野のある、将来人口多くなるのは当たり前って場所。でもドーラはメチャメチャ広いからね。元村長が西域って呼ばれてる辺境に当たる地域に、精霊とともに暮らす集落を作ろうとしてるんだ」

「なるほど」


 開発についてもいろんな人の思惑があるんだろう。

 でも人口が少ないから、各人の考え方がまともにバッティングすることはないよな。

 塔の村経済圏を発達させて、西域自由開拓民集落群の産物を街道の両端であるカトマスと塔の村両方で取り引きできるようになればいいんじゃないか。

 塔の村の村長デス爺も個々の自由開拓民集落を自立させたいバルバロスさんも満足するはず。


「ドーラに港は一つしかないと聞いたが」

「そうそう。ドーラ近海魚人の領域で、独立前に帝国の直轄地だったレイノスっていう町にだけ港があるんだよ。今は首都だね、人口もドーラで一番多い」

「政治と経済と人口の中心が一つに集中してるというのは、好ましくないな」

「……本当だ。今はおゼゼないからどうにもならんけど、いずれ考えないと」


 アルハーン平原からレイノスを経由しないと西へ行けないってのがそもそもよくない。

 遠回りになる上、物価が上がっちゃう。

 カラーズとカトマスをショートカットで連絡する街道が欲しいな。

 気付かせてくれたメルヒオールさんに感謝だ。


「精霊使いはドーラの政治とは無関係なのだろう?」

「無関係だね。あたしは政治家じゃないよ」

「でもユー様はあっちと仲良くしたい、そっちはこうしたいと考えてる時、すごく楽しそうですよ?」

「楽しいねえ。あたしに都合のいい世の中にしたいんだ。各地の有力者と知り合いになったりドーラに合う作物を導入したりするのが、今のあたしのやりたいこと」


 いろんなものを手に入れ、帝国に売りつけなければな。

 メルヒオールさんの目がやや鋭くなる。


「精霊使いの見識はよくわかった。ゼムリヤについての意見を聞きたい」

「ここの? といっても、聞きかじったことと地図で見たことしか知らんけど」

「十分だ。俺の後継者を誰にすべきだと思う?」

「ウルピウス殿下にすりゃいいと思うよ」


 スパッと言い切ったった。

 ハハッ、メルヒオールさんビックリしてやがるぞ?


「……即答されるとは思わなかった」

「今から言うことに他意はないから、気に障ったらごめんよ。じっちゃんの弟妹の子達は皆凡庸だって聞いたんだ。この前会った時も言ったけど、ゼムリヤは凡庸な領主じゃ治まんない」

「まさに。そこに俺の悩みと迷いがある」


 老いた顔に苦渋が見える。


「やはりカレンの子達のいずれかと見るか。……フロリアヌスでなくてウルピウスを推すのは何故だ?」


 フロリアヌス殿下はウ殿下とリリーの同母兄だ。

 会ったことないから、人となりを知らないということもあるんだが。


「フロリアヌス殿下は次期皇帝有力候補なんでしょ?」

「うむ」

「そーゆー人が地方の大領の領主って都合がよろしくないよ。本人に全然変な気がなくても、いらん噂が立つ」

「……なるほど、重要な視点だな。だから皇帝後継者色の薄いウルピウスの方が、ゼムリヤの領主としては適任と見るのか」


 ゼムリヤは地理的に帝国本土から切り離されたようなエリアだ。

 皇帝の座を争ったような人物が、帝国一の大貴族である辺境侯爵を継いだらどうなるか?

 おそらく反乱・独立の風説が囁かれ続けることになる。

 自国の皇帝から疑われ、隣国に付け入る隙を与えるんじゃ、本人にいくら能力があっても無事に治まるわけないぞ?

 今のところウ殿下は次期皇帝有力候補と見られていないから、風当たりは弱いだろ。


「ウルピウスを領主とした場合、甥達の処遇はどうすべきだ?」


 甥達か。

 当たり前の考えなら辺境侯爵を継ぐ立場。

 もし領主の座をウ殿下にかっさらわれたとしたら、含むところあるだろうな。


「実権がなくても割のいい役を振ってやりゃいいじゃん。何かと重んじてやれば満足するでしょ。その前に一度くらいチャンスやってもいいけど」

「チャンスとは?」

「解決できるようなら辺境侯爵の器を認めてもいいっていう課題を出す。魔物関係でも外交関係でも、適当な問題あるでしょ?」


 晴れやかな表情になるメルヒオールさん。


「ハハッ、精霊使いに相談すると物事簡単だな。さあ、こちらだ。遠慮なく入ってくれ」

「おじゃましまーす」

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