第1134話:海の王国の魅力を知ってください
「こんにちはー」
「おお、よう来た!」
お客さん一行を連れ、海の王国へやって来た。
今回ヴィルが飛びついてこないと思ったら、上機嫌の女王に頭を撫でられている。
ちょっと残念。
「女王陛下、今日はお招きいただき、ありがとうございます」
「ルキウス殿。堅苦しい話は抜きじゃ。商人殿にはこちらを見てもらおうかの」
「こ、これは……」
「実に素晴らしい!」
例のサンゴが三つほど飾ってある。
もったいぶってもいいのに、いきなり見せちゃうんだな。
商人さん達必死やん。
プリンスが説明する。
「希少なものらしいが、出物があれば売ってくださるとのことだ」
「そうでしたか!」
商人さん達大喜びです。
プリンスと視線を交わす。
うん、出物があればくらいのスタンスでいい。
山ほどあるなんて言ったらしらけちゃうわ。
輸出品の主力は計画的に生産できるものがいいよ。
計画的に儲けよう。
「ユーラシアさん」
「ん? どうしたの?」
記者トリオが何か気になっているらしい。
サンゴは記事にしなくていいのかな?
「あの鐘のようなものは何でしょう? 見ていると叩きたくなってくるんですけど」
「あっ、それすげえいい音がするんだけど叩かないで。『破魔の銅鑼』っていうんだ。海の王国で警報として使われてるの。でも悪魔が嫌がる音だもんだから、鳴らすとヴィルが可哀そう」
「変わったものがあるんですね。でも何というか、いかにも叩け鳴らせと訴えかけてくるような……」
「ひっじょーによくわかる。あたしも海の王国に遊びに来た時は大体ガンガン鳴らすもん」
あれ計算して作ってるんだったら、海の王国には優れたデザイナーがいるなあ。
魅惑のフォルム。
「悪魔が嫌がる音というのは本当ですか?」
「本当だよ。実際にその音を聞いたことがある悪魔の意見聞く?」
「「「は?」」」
「じゃーん。大悪魔登場!」
「ハッハッハッ、吾を崇めるがよい!」
ナップザックからバアルの籠を取り出す。
皆さん何か言いたそうだけど、まずはバアルの話を聞こうか。
「ねえバアル。この銅鑼って悪魔にとってはどう聞こえるの?」
顔を顰める大悪魔。
「まことに忌々しい音である。頭の芯を掴まれ揺らされるような心地がするである。しばらく震えが止まらぬである」
「だってよ? 記者さん達『破魔の銅鑼』に興味あるんだ?」
「この前ユーラシアさんに、帝都にも高位魔族は何人かいるという話を聞いて怖くなってしまったんです」
なるほどな?
あたしは悪魔を愉快な存在だと思うけど、警戒するのは当然だろう。
「女王、この銅鑼って確か販売してるんだよね? おいくら?」
「『破魔の銅鑼』か? 三〇〇ゴールドであるぞ」
「「「買います!」」」
こんなもんが売れるとは。
素敵なものではあるけど、需要があるとは思ってなかったわ。
あれ、商人さん達も興味持ってるし。
「では、商店街へ行くかの。わらわが案内しようぞ」
五番回廊へ。
「ユーラシアさん。そのバアルという悪魔はどうして籠の中にいるのですか?」
プリンスが頷いている。
まああたしも新聞記者トリオには言っとくつもりだった。
「バアルは帝国の主席執政官とつるんでドーラとの戦争を画策した悪い子なんだ。またどこかに迷惑かけちゃうといけないから、閉じ込めてあるの」
「「「「「「えっ!」」」」」」
驚く客人達。
「ど、ドーラ独立の裏には悪魔がいた?」
「正確には、帝国はドーラを強圧支配するために攻め込もうとしていた。その計画の裏にはバアルがいた、だね」
「御主人の言う通りぬよ?」
「吾が主の言う通りである」
不思議なほど威張ってるけど、それもまたバアルらしい。
「帝国でもドーラでも、何事もなく友好的にドーラは独立したと報道されてると思う。けど実際には潜入工作部隊が攻め込んで皇女リリーを確保しようとしてたし、飛空艇っていう空飛ぶ軍艦を決戦兵器として投入しようとしてたんだ」
「飛空艇は聞いたことがあります。噂レベルですが、事故で失われたとか」
「うん。勝てる見込みがなくなったから独立を認めて手打ちにしたんだよ。でもドーラが逆らったわけでもないのに攻めようとするって、おかしいでしょ?」
ある程度ぶっちゃけておく。
客人達が真剣に聞いている。
「ルキウス様、今の話はどこまで本当なんですか?」
「全て本当だ。精霊使いは世界の安定に関わる重要なクエストを任されていて、深い事情を知る立場にある。彼女は貴公達に知らせてもいいと判断したところまで語るだろう」
おープリンスカッコいい。
プリンスがいると信用性が増すからやりやすいなあ。
「……つまり帝国とドーラが揉めて貿易が細っていたのも悪魔のせい?」
「ところが単純にそうとも言えないんだ。バアル」
大悪魔が頷き、話し出す。
「吾がドミティウスとともにカル帝国とドーラの仲違いを推進したのは疑いのない事実である。が、ドミティウスが好戦的な性格なのは元々であるぞ。吾なしで彼が主席執政官になれたかはわからぬが、もし今と同じ権限を持つ立場にあったなら、吾の存在の有無に関係なく、いずれ帝国とドーラの紛争にはなったである」
「どういうことです?」
「主席執政官はバアルからもたらされる情報を有効活用して、その地位に昇りつめたんだよ。でももうバアルはうちの子になったから、今後は主席執政官に協力しないじゃん?」
「ドミティウスが判断材料として得られる情報は確実に減少するである。しかし好戦的な性格は変わらぬ」
「バアルがいなくたって、近い内に帝国はどこかと戦争を起こすってことだよ」
愕然とする客人達。
「し、しかしその悪魔が本当のことを言ってるとは限らないわけですよね?」
「いや、高位魔族は偽りを嫌うと聞いたことがある」
「悪魔がウソ吐くの嫌がるのは本当だけど、どの悪魔も絶対にウソ吐かないってことではないよ。結構個人差があるんだ。でもうちのヴィルはいい子だし、バアルは誇りある大悪魔だからウソ吐かない。ここんところ疑問なら、リモネスのおっちゃんに確認してみるといいよ」
「賢者リモネス? 悪魔と話したことがあるんですか? 聖火教徒ですよね?」
リモネスさんが聖火教徒であることは確かだけれども、むやみと悪魔を否定する人ではない。
むしろ真実を知るためなら、悪魔に会いたがるんじゃないだろうか?




