第1132話:塔の村でドラゴン談義
「ここが塔の村だよ」
「御主人!」
「よーし、ヴィルいい子!」
飛びついてくるヴィル。
可愛いのう。
ぎゅっとしてやる。
『いい子』の固有能力持ちのヴィルは、ぎゅっとされるのが気持ちいいんだろうな。
商人さん達と記者トリオが塔を見上げてビックリしてら。
「素晴らしく大きな塔ですなあ」
「こんな巨大な塔は見たことがありませんよ。大変な人手がかかってると思われますが、誰が建てたんですか?」
「昔ドワーフが建てたって言われているけど、詳しいことはわかんないな」
帝国人が揃って感心してるところ見ると、この塔自体が観光名所になりそーだな。
中の転移みたいなおかしな階段も含めて、ツアーやったら観光客にウケるかも。
いや、ダメだ。
出会い頭に踊る人形なんか出現したら危ないわ。
見せられるのは入口フロアのごく弱い魔物までだな。
「皇女リリーが冒険者活動してたのもあの塔なんだよ。あっ、じっちゃーん!」
光輝なる頭部を発見。
デス爺に説明任せちゃお。
「一体何じゃ。今日は大勢だの。おお、ルキウス殿下もお見えでしたか」
「こんにちは。こちらは帝国の商人と新聞記者です。精霊使い君にドーラのあちこちを案内してもらっているところです」
「さようでしたか」
デス爺があたしを睨む。
そーだよ、貿易振興とプリンスの地位向上のためだよ。
ドーラの利益になることなんだから、面倒くさがらず協力してよ。
デス爺が話し出す。
「ワシが村長を務めておりますこの村は、まだ開村して半年くらい。ドーラのノーマル人居住域としては、今のところ最西端じゃ。そしてこの塔には著しい特徴がある」
「著しい特徴、ですか?」
「『永久鉱山』を御存じですかな? 特殊な魔力条件が整うと、内部リソースが減らないという不思議なダンジョンが成立するのじゃ」
首をかしげる商人さん達と新聞記者トリオ。
うん、何も知らない人には説明が足りない。
「内部リソースが減らないとは、つまりどういうことでしょう?」
「中の素材やアイテムを採取しても、自然に補充されるってことだよ」
「まさか取り放題ですか?」
「そゆこと」
「おお!」
「それはすごい!」
興奮気味の商人さん達と記者トリオ。
「ではこの塔のダンジョンの探索を進めれば、ドーラは素材豊富な地になり得るということですな?」
「なり得るね。だけど中には魔物も多いんだ。内部リソースが減らないってのは魔物にも適用される。倒しても倒してもいつの間にか復活するということだから、中の探索は言うほど簡単じゃないの」
「しかし将来的に冒険者の数が増えれば、比例して採取素材量は大きくなる理屈じゃな。発展が見込めることはその通り」
当然ドーラで消費する以上の素材が得られれば輸出に繋がる、って印象を商人さん達は受けたろう。
ただ素材はドーラでもかなり使うからな?
人口増加に伴って消費量もどんどん増えるだろうし、実際にはどうなるかわからないけど。
「ちなみに帝国本土で需要の大きい素材って何なの?」
「まず『光る石』ですな」
「ああ、わかるわかる」
手で持ってるだけで手頃な明かりになる『光る石』は必需品だもんな。
「『スライムスキン』もあればあるだけ売れるでしょう」
「生物系レア素材も貴重ですぞ」
「じっちゃん、『光る石』や『スライムスキン』はドーラでも足りてるって言いがたいけど、『逆鱗』なんかあんまり使わないよねえ?」
「うむ」
商人さんが驚く。
「『逆鱗』って、ドラゴンの顎の下に生えているという、超貴重な?」
「ドーラでは超がつくほど貴重ってわけでもないんだ。ちょうどいくつか持ってるから譲ろうか? ドーラでの買い取り価格は一枚二二〇〇ゴールドだから、それでよければ」
「「「ぜひお願いします!」」」
取り引き成立。
二枚ずつ計六枚の『逆鱗』を売った。
毎度あり。
『逆鱗』はパワーカードでもいろんなやつに使われるみたいだから、利用価値はあるんだろうな。
「ごめんね。貿易となると行政府にも儲けさせてやらないといけないから、この値段じゃ出せないけど」
「いやいや、本土では考えられない価格ですぞ」
「逆に何故、『逆鱗』をこんなにたくさんの数お持ちなのです? ドラゴンの墓場でも発見したのですか?」
プリンスが言う。
「精霊使いはこの若さにして、おそらく世界一の冒険者なのだ。ドラゴンなど敵ではなく、しょっちゅう狩っているからだと思う」
「「「「「「えっ?」」」」」」
驚く客人達。
「ど、ドラゴンをですか? ドラゴンってドラゴンですよね?」
「何言ってるかわからんけど、ドラゴンはドラゴンだよ。帝国の人はドラゴンを凶悪な魔物だと思い込んでる気がするね。でもちょっと強めのただの魔物だよ。レベル七〇もあればソロでも倒せる」
「レベル七〇……」
そこ引いちゃうのかよ。
今後高級人形系魔物を倒す手段が確立されれば、レベル七〇超えの冒険者は珍しくなくなると思うよ。
帝国人がドラゴンに対して腰が引けているのは、『輝かしき勇者の冒険』の影響だろーか?
まったく有害極まりない本だな。
新聞記者が言う。
「ユーラシアさんはドラゴンハンターなのですか?」
「ドラゴンを狙って狩ってるのではないよ。でもドラゴンは気性が荒くて向かってくるんだ。だから結果的に戦闘になっちゃうことが多いの」
「でもドラゴンのいるエリアを探索してるわけですよね?」
「ドラゴンより割のいい魔物と戦いたいんだけど、つっかかってくるから『逆鱗』にしちゃうだけだって。さっきの高級布団の材料を提供してくれるグリフォンだって、ドラゴンと同じところに生息してるんだよ。ドラゴンもグリフォンみたいに聞きわけがよければいいのに」
黙って『逆鱗』を毟らせてくれるなら戦う理由ないしな?
「ふむ……仮にまとまった数の『逆鱗』が欲しいとなった場合はどうすればいいですかな?」
「ドリフターズギルドっていう『アトラスの冒険者』の溜まり場で依頼してもらえば確実だな。でもプリンスに言っといてもらえば、あたしのところまで話来ると思うよ」
「これユーラシア。ドラゴンを絶滅させるのは控えるのじゃぞ」
「はあい」
デス爺の目が笑っている。
冗談なんだろうけど、客人達が何ともいえない表情してるだろうが。
「あら皆様、御機嫌よう」
この声は。
いいところに来たな。




