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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1131話:ザバンのウリ

「とうちゃーく!」

「御主人!」

「よーし、ヴィルいい子!」


 帝国の商人さん達と新聞記者トリオを案内するに際し、ヨハンさん家に次ぐ第二の場所にやって来た。

 ヴィルは毎回飛びついてくるなあ。

 可愛いやつめ。

 ぎゅっとしたろ。


 キョロキョロしている商人さん達と記者トリオ。


「……地方の村ですか?」

「ここは自由開拓民集落ザバン。あたし達ドーラ人が『西域』と呼んでる地域には、自由開拓民集落と呼ばれる村レベルの自治体が三〇くらいあるんだ。その内の一つだよ」

「ふうむ、いいところですな」

「ここはさほど魔物が出る地域じゃないし、成功してる集落だね」


 ザバンは割と平らな土地が広く、何といっても西域の産物の集積地であるカトマスが近い。

 成功する条件の多い村だ。


「やはり、成功してる集落ばかりではありませんか?」

「そりゃそーだよ。例えばリリーがドーラに来た時、盗賊村に引っかかったんだ」

「「「「「「盗賊村?」」」」」」

「立ち寄った旅人を襲ってかっぱぐの。村ぐるみで」


 目を見合わせる客人達。


「リリー様がドーラに来ているということはルキウス様に伺いましたが」

「まーリリーに被害はなかったからよかったよ」

「しかしひどいですな」

「帝国にも山賊はいますが……」

「ひどいって言っちゃうのは簡単だけど、かっぱがないと生きていけない村もあったんだ。悲しいドーラの現実」

「『あった』、ですか? 過去形?」

「件の盗賊村はたまたまあたしが担当して、リリーと知り合ったの。今はまともな村になってるよ」


 今もまだどこかに盗賊村はあるんだろうか?

 被害報告は聞いてないけど。

 街道沿いじゃないところはよくわからん。

 バルバロスさんなら知ってるかも。


「西域は広いからいろんなとこがあって、産物もそれぞれ違うの。ここザバンは、輸出品として有望な候補が二つあるから紹介するね」

「楽しみですな」


 村内へ。


「こんにちはー」

「ああ、これは精霊使い殿、大使殿、ようこそ」

「今日は帝国の熱心な商人さんが一緒だよ」

「さようでしたか。ごゆるりと見物していってくだされ」


 いつもの軽食屋へ皆を案内する。


「おっ、精霊使いじゃねえか。殿下もお久しぶりです」

「ああ、こんにちは。今日は輸出の件でね。西域の代表的な自由開拓民集落の例として、本土の商人に紹介するために来たんだよ」

「ありがたいです」

「あんたの名前何だったっけ? ここまで出てるんだけど。えーとス……」

「シルヴァンだ!」 


 こげ茶色がかった赤毛のソバカス男が食い気味に言う。

 スリって言う間がなかったぞ?

 あたしの行動が読まれてるみたいで気分が悪いな。


「そーだった。シルヴァンね」

「あんたわざとやってるだろ!」

「滅相もない」


 マジでモブの名前は覚えられないんだよ。


「例のお茶飲ませて」

「八人だな? 八〇ゴールドだ」


 料金を払うとすぐお茶が運ばれてくる。

 プリンスルキウスが驚く。


「この香り、あのお茶か?」

「うん。一杯一〇ゴールドって高いように思えるけど、それだけの価値は十分あるなあ」

「全てドーラ政府が買い上げると聞いていたが」

「カラクリがあるんだよ。『ネクタルの甕』っていう魔道のアイテムを使って、ザバンではいくらでも飲めるようになってるの」

「ね、『ネクタルの甕』? 伝説的秘宝ではないか! 『アトラスの冒険者』のクエストで手に入れたものなのか?」

「まあ。あたしが持ってても仕方ないからザバンに提供して、交換でこの村で産するお茶は全部ドーラ政府が買い取るってゆー条件になったんだ」

「何とまあ……欲のないことだ」

「あたしが無欲かつ清純な美少女なのはドーラの常識だぞ?」


 プリンスが呆れながら客人達に声をかける。


「皆、飲んでみてくれ」


 ごくごく。

 湧き起こる驚嘆と称賛の声。


「う? こ、これは……」

「鼻腔をくすぐる馥郁たる香りも言うに及ばないが……」

「すんばらしい味です!」

「すんばらしい味だぬ!」


 大笑い。

 ヴィルは的確に拾うなあ。


「いやあ、ドーラにこれほど突き抜けた茶があるとは。感動しましたぞ!」

「このお茶、『リリーのお気に入り』って言うんだ。淹れ方が難しくて純粋な水じゃなきゃダメなの。今ベンノさんに帝国での販売を任せてる『アクアクリエイト』っていう水魔法は、元々このお茶を淹れるために開発してもらったんだ」


 呻く商人さん達。

 こら記者トリオ、こーゆーのちゃんと記事にしてよ。

 手が休んでるぞ?


「……水魔法が必要な茶か」

「一般販売は不可能。完全に貴族や富豪向けですな」

「セレブ用でよろしいのではないですか? 却って魅力となるポイントですぞ」


 せいぜい悩んでください。

 でもこんだけ美味しいんだったら、問答無用で売れちゃうと思うぞ?


 新聞記者さんが言う。


「先ほどの水魔法というのは?」

「帝国の人にはあんまり馴染みがないかな? スキルスクロールっていう、開くと魔法を使えるようになる、使い切りアイテムがあるんだよ」

「つまり、お金さえ払えば誰でも魔法使いになれる?」

「そゆこと。辺境開拓や軍務、航海に使えるってことで、大量にお買い上げいただいてるんだよ。今後も生活に役立つ魔法はどんどん輸出する予定だからよろしくね」


 よし、商人さん達の目の色変わった。

 対照的に記者トリオが残念そう?


「魔法を買うというのは難しいかもしれないですねえ」

「軍やその他政府機関が優先になるだろうからね。そんなあなたにピッタリ! これ持ってくれる?」

「何です? 杖?」

「『アクアクリエイト』って唱えてみて?」

「アクアクリエイト?」


 杖の先から柔らかく生み出される水。


「うお?」

「持つだけでお手軽魔法使いの杖だよ。マジックポイントは消費するけど、レベル一でも数回は使えるはず」

「私にも使わせてください!」

「僕にも!」


 大人気だ。

 玩具としても面白いもんな。


「これはドーラ政府からの販売になるから、プリンスかドーラの要人に注文入れてね。一本三〇〇〇ゴールドくらいで卸せるよ。でも月一〇〇本くらいが生産限度」

「ルキウス様。できるだけ数が欲しいのですが……」

「じゃあ職人の方には目一杯作ってって、先に話だけは通しておくね。お茶以外にもう一つ、ザバンはドーラ一の砂糖の産地でもあるんだ。まだ輸出できるほどの生産量はないけど、村長の話聞いておこうか」

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