第1130話:プリンスルキウスの活躍
「やあ、いらっしゃい」
「御主人!」
「プリンスこんにちはー。よーし、ヴィルいい子!」
新聞記者トリオを連れてドーラ行政府に転移してきた。
飛びついてきたヴィルをぎゅっとしてやる。
あ、もう商人さん達も来てるね。
事情のわかってない記者トリオがとまどっている。
「……えっ? ルキウス様?」
「ここは?」
「ドーラ行政府の大使室だよ。つまりプリンスルキウスの聖なる仕事場」
「「「ええっ?」」」
ハハッ、驚いてやがる。
「どうしてダイレクトに大使室なんですかっ!」
「そうです! 心の準備というものが……」
「記者さん達のビックリする顔が見たかったんだ。意表を突くことがあたしの活力なの」
「ハハッ、諦めろ。これがドーラの精霊使いだ」
その発言者を見て、記者の一人が不審げな様子になる。
「あれ? ひょっとして帝国軍のクリーク少将閣下でいらっしゃる?」
「うん。クリークさんとマックスさんは軍を辞めて、移民としてドーラに来たんだ。せっかくだからプリンスの下で働いてもらっているの」
「あっ、マックス中佐でしたか。失礼を!」
別に恐縮しなくたっていいんだってば。
「ちょっと待ってください。帝国本土とドーラ双方の有力者とアポが取れるユーラシアさんは、どういう立場の人なんです?」
「今更? ただの美少女精霊使いだよ」
「ただの、じゃないですよね?」
「善良で親切で可憐な美少女精霊使いだよ。あ、『気品と慈愛に溢れた』ってつけ忘れたな」
「つけ忘れたぬよ?」
プリンスが笑って説明する。
「『アトラスの冒険者』については聞いているかな? 実力ある冒険者ほど面倒なクエストを配られるらしいのだ。クエストであちこちに知り合いができたということなのだと思う」
さすがプリンス。
過不足のない説明だ。
「正直予もわけがわからぬのだが、考えるだけムダだ」
急に投げやりだぞ?
クリークさんマックスさんがすげえ頷いてるけど。
まーまだ新聞記者トリオに飛空艇を落とした事情は話してないから、今くらいアバウトな説明の方がありがたい。
「今日は予と商人達をドーラ各地に案内してくれることになっているのだ。記者諸君も同行するということでいいのかな?」
「うん。午前中でざっと回るよ。ちょっと集まってくれる?」
ドーラの地図を出して、軽く打ち合わせをする。
「いいかな? 今日は午前中にこことこことこことここの四ヶ所を巡りまーす」
「えっ? 最後の場所海の中じゃないですか」
「楽しみにしててよ。じゃ、ヴィルお願い」
「わかったぬ!」
◇
「こんにちはー」
「いらっしゃいませ、ルキウス大使、ユーラシアさん」
「御主人!」
「よーし、ヴィルいい子!」
ヴィルにビーコンを持って行ってもらい、ヨハンさん家に転移してきた。
ちなみにヨハンさんと海の王国には前もって連絡済みだ。
「プリンスとヨハンさんは面識あったんだね?」
「うむ。輸出品に関して世話になっているからね」
商人さん達に説明する。
「ヨハンさんは港町レイノスと東を結ぶ道を仕切ってる商人だよ。東には古い集落であるカラーズの諸村と、急速に人口を増やしてる移民の開拓地がある」
「つまり、今後の発展の余地が大きい地区ですな?」
「そゆこと! ちなみに現在ベンノさんに扱ってもらってる『文字を覚えるための札取りゲーム』と画集『女達』は、カラーズで作ってるんだ」
商人さん達熱心に聞いてますね。
今後移民の人口が増えると、ヨハンさんの取扱高も急激に増大するはずだ。
ヨハンさんと仲良くしとくことは直接儲けに繋がると思うよ。
ん? 新聞記者さん達何?
「ルキウス様が御同行されているのは何故なのです?」
「暇だから?」
プリンスが笑う。
「大使としての予の職務に大きなウェイトを占めているのは、帝国本土からドーラへ移民を恙なく受け入れてもらうことと、輸出入の活発化だ。同行するのは当然だろう?」
「なるほど!」
「プリンスがついて来てくれると仕事がしやすいよ」
アハハと笑い合う。
いや、マジだよ?
説得力が違うからね。
もっと言うと、新聞記者トリオや商人さん達にプリンス自身の活動を見せれば、印象も良くなるだろうと思ってる。
ウィンウィンってやつだよ。
「今後、ドーラの東地区ではどんな商品が期待できますか?」
来た。
しかしここは抑え気味に。
「ごめんね。目先は移民の生活を安定させなきゃいけないから、レイノス東から輸出できるものが短期に増えることはないと思う。本や知育ゲームは期待できるよ」
「そうでしたか」
「先々の期待は大きいけど、今の内は勘弁してね」
テンション下がっちゃったところで燃料投下!
「ここで皆さんに見せたい隠し玉があるよ」
「「「隠し玉?」」」
ヨハンさんに目で合図する。
「こちらへどうぞ」
ヨハンさんの後をついてゾロゾロ。
納屋に案内される。
「こ、これは?」
「大量の……羽毛ですか?」
「グリフォンの羽毛です」
「「「グリフォン?」」」
「高級布団の材料だよ」
驚愕する商人さん達と、盛んにペンを走らせる記者トリオ。
ヨハンさんが言う。
「こちらは洗浄済みのものです。品質をお確かめください」
「……うむ、腰が強いのに柔らかい。確かに布団に最適ですな」
「グリフォンとは大型鳥の魔物なのでしょう?」
「でっかいね。ノーマルなドラゴンと大体同じくらい」
「羽毛の実物は初めて見たが、最高級品とされる理由がわかった」
ハハッ、かぶりつきだ。
やっぱり商人さんは高級品に興味があるみたいだなあ。
儲けが大きいからかな?
「上流階級の方々向けの輸出品として、今月から出荷できます。もちろんさほど量の出るものではありませんが」
へー、製品化早いな。
あたしも欲しいけど、寒い冬は終わっちゃったしな?
まだいいや、輸出分優先しよ。
「見事なものです」
「ええ。ドーラに魔物が多いとは聞いていましたが、グリフォンとは強力な魔物なのでしょう? どうやって羽毛を採取するのです?」
「最近グリフォンと仲良くなったんだ。櫛かけさせてくれるの」
「「「「「「えっ?」」」」」」
「グリフォンはエサをあげるとこっちの言うことを聞いてくれる、友好的な子なんだ。あたしも魔物扱いはしてないな」
驚く六人の客人と、苦笑するプリンスとヨハンさん。
「これがドーラの精霊使いの仕事なんだ」
「次行こうか。ヨハンさん、ありがとう」




