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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1128話:図太いゆーな

「サイナスさん、こんばんはー」


 夕食後に毎晩恒例のヴィル通信だ。


『ああ、こんばんは』

「天気がぐずつくの今日までらしいんだ」

『うん?』

「いかがお過ごしでしたでしょうか?」

『新しいパターンだね』

「イカす?」

『ユーラシアの丁寧語は、違和感に足首が掴まれるような気がする』

「かほどに気持ちがいいでございますの?」

『その変な敬語はマジでやめろ。違和感が首まで押し寄せてきた』


 あたしも使い慣れない敬語はおっかなビックリなのだ。

 何故なら舌とか頬の変なとこ噛みそうだから。

 今後も敬語は使わないと誓おうじゃないか。


「今日はまず、赤眼族の集落とエルフの里行ってきたんだ」

『君はあちこちと仲良くしてるなあ』

「対立するより得な気がしない? あたし達の知らないことを知ってるからねえ」


 今日はヒバリさんの活動について教えてもらったしな。

 ますますあたしに似た人だということがわかった。

 アビーは昔から変だったらしいということも。


「亜人との距離は近いってのは、ドーラの強みのような気がするな。実際にその強みをどう生かすって言われると難しいけど」

『何か重要な用があったのかい?』

「お肉とイモを届けてきたんだよ」

『イモ?』

「赤眼族もエルフも、ジャガイモやサツマイモを知らないから」

『えっ? そうなのか?』

「赤眼族は何やら言うちっちゃめのイモは知ってるけど、エルフにはそもそもイモを育てるって文化すらないの」

『へえ、意外だな?』


 ジャガイモやサツマイモは、帝国から入ってきた作物ではある。

 ただバエちゃんはジャガイモやサツマイモをよく知ってるから、赤眼族が知らないってのはちょっと意外だな。

 初めは持ってたけど、火事かなんかで失ってしまったのかもしれない。

 森エルフは農業自体に一生懸命じゃないからまあ。


「赤眼族はよくわからん作物も作ってるから、こっちの作物を教える代わりに向こうの教えてもらおうと思ってるんだ。エルフは魔物を家畜化する計画があって、そのエサにイモが良さそうな感じ」

『いずれ亜人とも取り引きができるようになると面白いなあ』

「せっかく『アトラスの冒険者』の転送先で知り合ったんだもん。友好を深めておきたいの。塔の村でもさらに西でもいいけど、どこかに西域交易の拠点作ってさ。商売ができるようになるといいねえ」

『夢があるなあ』

「お金儲けができるといいねえ。ぼろ儲けできるとさらにいい」

『そういうこと言わなければいいのに』


 アハハと笑い合う。

 つい本音が出てしまう。

 もっとも亜人は人口が少ないから、ぼろ儲けなんかできないとわかってはいる。


「午後には皇宮へ行って、リリーに会ってきた」

『ふむ、で?』

「あたしがリリーの代わりに颯爽と登場、貴公子達を降参させるという図式は変わらないみたい」

『達か。やはり複数なのか?』

「言ったっけ? 予想されてた公爵の息子、伯爵の子の天才騎士、帝都一の商人の孫の三人がラインナップされてるみたい」

『いい話みたいだがなあ。皇女の好みではないのか』

「リリーはあたしが男だったらよかったのにって言ってた」

『君は雄々しいからな』

「雄々しいて。あんまり褒められてる気がしないんだけど?」

『君は女々しいところがないからな』


 サイナスさんは迂遠な言い回しで誤魔化すことが多いよーな?

 常に前向きなあたしは賞賛されたと思っておくけれども。


「ちょっとエンタメ要素が混ざり込んだんだ。その場に新聞記者がいてさ、あたしが貴公子達と対戦するってことが記事になっちゃうっぽい」

『えっ、それは……』


 それは何だよ。

 絶句するようなタイミングじゃないだろーが。


『君、お相手候補達に手を抜きはしないんだろう?』

「もちろん。真摯に向かってくる相手を愚弄するようなことは、あたしの矜持にかけてできないよ。正々堂々と戦って笑い者になってもらう」

『前半は相当格好良かったのに、最後本音が漏れてるぞ?』

「いやん。乙女心を盗みとらないで」


 アハハ、あれ、サイナスさん笑ってないじゃん。


『新聞に載るってことは、結構な見世物になるんだろう?』

「多分。リリーだって、しっかりバッチリ決着つけた方がいいんじゃないかって考えてるよ。まあ皇族のロマンスは庶民の娯楽みたいだね。少々大げさになった方が、皆喜ぶと思う」

『利害関係のない一般大衆にとっては楽しいイベントかもしれんが、恥をかかされる当事者は違うだろう。恨まれるのは君だぞ?』

「あっ、そーか!」

『君の図太い神経は、些細なことは気にしないのか? 黄の民の縁談デストロイイベントの時のように?』

「図太いゆーな。いや、今回恨まれるわけにいかないんだよ」


 有力者と知り合って仲良くなるのが報酬みたいなもんだし。

 困ったな。


『先方は帝国有数の有力者の御子息達だ。機嫌を損ねると貿易に影響することだってあり得る。つまり君の大好きな銭儲けに支障が出る』

「……本当だ。どうしたらいいかな?」

『オレに振るのか? 悪いこと言わないから自主規制しなさい』

「そんなあたしの存在意義を失わせるようなことはできないし」


 このイベントは絶対に盛り上がると、あたしのカンが告げている。

 あたしの帝都での知名度や存在感の向上にも期待できる。

 しかし貴公子達を怒らせると、帝国ドーラ間の修好にも問題が出そう。

 かといってここでお約束を外すようじゃ、あたしのカリスマ性に関わってきちゃうぞ?


「むーん、難しいな?」

『内容としてはどんな対戦になるんだい?』

「まだ決まってないんだ。貴公子達の都合もあるじゃん? 明日もう少し詳しい話聞けるっぽいから、チラッと皇宮も行ってくる」

『考えたってムダだろ。内容を知ってからでいいじゃないか』

「サイナスさんの言う通りだね。睡眠時間が減ってあたしの美貌に陰りが見えたら、全世界が悲しむところだった」

『君の睡眠時間に関わるほどの大事件じゃないだろう?』

「おおう、大いなる真理きた!」


 アハハと笑い合う。


「安心したら眠くなってきた。サイナスさん、おやすみなさい」

『ああ、おやすみ。どこに安心する要素があったかわからないけど』

「ヴィル、ありがとう。通常任務に戻ってね」

『了解だぬ!』


 明日はプリンスと商人さんと帝都の記者トリオを案内する日だ。

 まず記者トリオを迎えにだな。

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