第1127話:こてんぱんにする気満々
『御主人! パラキアスがいるぬ。代わるぬ』
「うん、ありがとう」
皇宮から帰宅後、ヴィルを介してプリンスルキウスないしパラキアスさんと連絡を取ろうとしたら、パラキアスさんに繋がった。
『私だ。パラキアスだ』
「こんにちはー。プリンスに会いに来る商人さん達ってどうなってるかな?」
『今まさにレイノス港に到着するところだ。大使が出迎えに行っている』
「あ、パラキアスさんがチェックしててくれたんだ?」
『ドーラにとって肝要だからな』
パラキアスさんもドーラの発展のために、商人を優遇するっていう考え方にシフトしてるみたいだな。
商人さん達もドーラに着くなりいきなりプリンスがいたら驚くだろう。
掴みはオーケーとして……。
「どういう予定なの?」
『今日は夜に会食くらいだ。明日、大使と会談だろうが……』
「プリンスと商人さん達合わせて四人だね? じゃあ明日はあたしがドーラのあちこち案内してくるよ」
『うむ、任せる』
「帝都の新聞記者さんと知り合いになったんだ。連れていくね」
『ほう?』
それは知ってる。
興味深いものを見つけた時の声だ。
『丸め込んだのか?』
「まーね。新聞記者さんと仲良くしとくとやりやすいんだ」
あたしはとにかく帝都の情報と人脈が欲しい。
皇族貴族側は何とかなりそーな雰囲気になってきたが、茫洋としているのは市井の方。
上流階級の社会よりずっと世界は広いから、いろんなルートを持っておきたいのだ。
「この前の第一皇子のお葬式以来、帝都でプリンスルキウスについては結構な関心事らしいんだ。でも帝国本土じゃプリンスの情報なんて得られないじゃん?」
『だから協力してやろうということか』
「そうそう。プリンスの宣伝してくれるのもドーラの物産の宣伝してくれるのも、都合がいいからね」
『パーフェクトだ』
ハハッ、パーフェクトガールだぞー。
パラキアスさんが了解していれば好き勝手やれるわ。
「明朝、新聞記者さん達連れて、直接大使室に飛ぶよ。プリンスに言っといてくれる?」
『了解だ。ちなみに商人をどこに案内するつもりなんだい?』
「ザバン、塔の村、海の王国、それからヨハンさん家かな」
『ふうん。意外だな』
「そお?」
どうせまた魔境に連れていくんだろと考えていたんじゃないかな。
あたしがいつでも魔境ツアー添乗員を務めると思うなよ?
今回は商売がメインなので、アトラクション的なものはあんまり必要ないとゆーか、切り札魔境は残しておきたいとゆーか。
「じゃ、パラキアスさんさよなら」
『ああ、またな』
「ヴィル、ありがとう。イシュトバーンさんところ行ってくれる?」
『わかったぬ!』
しばし待つ。
あれ、イシュトバーンさんとこでしばらく御飯食べてない気がするな?
『おう、オレだ』
「あっ、あたしだよ!」
『ツーカーだな。愛情の証に違いないぜ』
「……あながち否定もできないかな?」
『おい、どうした? 悪いものでも食ったのか?』
「まっこと失礼だな」
イシュトバーンさんはほんとの爺ちゃんみたいな感じがして、気兼ねなく付き合えるなあと思っただけだ。
でも考えてみりゃあたしは気兼ねなんてしたことなかったわ。
配慮はしても遠慮はしない美少女精霊使いだったわ。
ってのはともかく。
「リリーんとこに縁談縁談縁談なんだよ」
『既定路線だろ?』
「あたしが縁談縁談縁談をクラッシュする役割を振られたの。リリー本人に」
『ほお?』
わかってる。
あの絶妙にえっちな目をしているはずだ。
『今日はオレが何も言わなくても、面白話に移行するんだな』
「あたしもお年頃だから、ラブい話は誰かに話したくなっちゃうの」
『おいおい、クラッシュする話なんだろ?』
「残念ながらね。この前お相手候補として、公爵の息子と伯爵の子の天才剣士と老舗の店主の孫の名前が挙がったじゃん? 実際にリリーのところまで来てる話もその三人なんだって」
『つまりそれ以外は、足切りってことだな?』
「みたいだね」
実際にはふるい落とされた中にいい人いたかもしれないけど、リリーほどの立場になると周りを納得させられない結婚は難しいだろうからな。
足切りって表現は言い得て妙。
『で、クラッシュするというのは?』
「あたしがリリーの代理として颯爽と登場、三人の貴公子をぺいってしちゃうという」
『そんなダイレクトな対戦なのかよ? 結果がわかってるとつまらねえぞ?』
「いや、イシュトバーンさんを楽しませるための対戦ではないから。でもまだ実際何の勝負になるかわかんないんだよね。明日もう少し詳しいことわかるみたい。聞いてくる予定」
『じゃああんたが絶対勝てるとは限らないのか?』
「うーん、負ける気はしないけど」
『やっぱりつまらねえ』
あたしが設定できるバトルじゃないんだから我慢しろとゆーのに。
イシュトバーンさんを楽しませるハードルって高くない?
「なるべくオーディエンスに喜んでもらえるようにするよ」
『オーディエンス? 公開対決になるのか?』
「と決まってるわけじゃないけど、リリーは新聞記者の前でこの件について発表したんだ。ある程度立会人の数は必要だろうし、結果も新聞に載ると思うよ」
『ほう、祭りだな?』
「大きいイベントにした方が、後腐れがなくていいんじゃないかな」
どうしたらエンターテンメントになるか考えたいけど、内容すらわかんないしな?
『これはリリー皇女からの依頼なんだろ? どういう報酬の条件で請けたんだ?』
「特に何も」
『あんたに得がねえじゃねえか』
「そんなことないよ。だってリリーの旦那候補だよ? 普通にしてちゃなかなか知り合えないような上流階級で、しかも将来有望な有力者じゃん」
『対戦相手の方にメリットを見出してるのかよ?』
「うん。将来に繋がりそうで楽しみなんだ」
人脈は大事だからね。
『……精霊使いの視点はユニークだな。要するに貴公子達にも適当に花を持たせてやるんだな?』
「え? こてんぱんにする気満々だけど」
『つくづくユニークだな』
アハハと笑い合う。
「で、明日の夜、御飯ごちそーになっていいかな?」
『おう、来い。メンバーは?』
「うちの子達だけだね。簡単なスイーツを開発したんだよ。明日披露するね」
『楽しみにしてるぜ。じゃあ明日な』
「うん、また。ヴィル、ありがとう。通常任務に戻ってね」
『はいだぬ!』




