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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1126話:対貴公子

「おいしいです」


 皇宮近衛兵詰め所にて、コブタ肉炙り焼きをいただいている。

 記者トリオも満足のようだ。


「オーブンで焼くと絶品ですね」

「炙り焼きに塩が至高だよ。ごめんね、お肉にかけると最高の塩ってのもあるんだけど、今切らしちゃってて持ってないんだ」

「いやあ、美味いですよ」

「この前いただいたものと同じですよね? 何の肉なんですか?」

「コブタマンっていう魔物の肉だよ」

「「「えっ!」」」


 顔が強張る記者トリオ。

 帝国の人は大体魔物かよビックリって反応だな。

 近衛兵達はもう慣れて、美味けりゃいいやみたいな顔してる。


「ドーラでも首都のレイノスは違うんだけどさ。田舎ではお肉って言うと、ほぼ野生の小動物か魔物なの」

「そ、そうですか」

「予も好物になったのだ」

「美味であろ?」

「何のお肉とか知らなくても、美味いお肉は美味いよ。ちなみにこれは魔物肉の中でも最高の部類なんだ」


 皇族のウルピウス殿下やリリーが納得しているのだ。

 美味いに決まってる。

 記者の一人が聞いてくる。


「リリー様がお持ちの白い塊は、ひょっとして何か魔物の卵?」

「ワイバーンの卵だぞ。我も大好きでな、父様に食べさせたく思い、ユーラシアに所望したのだ」

「黄身が大きくて味が濃いの。ドーラでは高級品だよ」

「高級品でしたか……これも食文化ですねえ」


 まことにその通り。

 いや、あたしだって誰でも魔物を狩れるとは思ってない。

 ドーラも家畜肉が普及するといいなあとは思ってるけど、当分高級品の域を抜けられないのだ。

 今後飼育量は増えるものの、人口も増えるから。


「先ほどユー子……ユーラシアさんの肩書きが『精霊使い』とのことでしたが」


 リリーが頷く。


「うむ。ユーラシアはドーラに二人いる『精霊使い』の内の一人なのだ」

「ある方の精霊使いって呼んでよ」


 ない方の精霊使いが『うがー!』って言いそうだけど。

 エルは今ここにいないから平和。


「『精霊使い』とは何ですか?」

「セバスチャン、説明せよ」


 できる従者黒服が恭しく頭を下げ、語り始める。


「『精霊使い』とは、精霊に対する支配力が極端に強いという固有能力です。極めてレアですが、ほぼ死に能力になってしまうのではないかと考えられます」


 頷ける。

 あたしは精霊と親しむ灰の民の村の生まれだから、『精霊使い』がムダになっちゃうことはなかった。

 けどエルはこっちの世界に来なかったら、その能力が発揮される機会はなかったのではないか。


「うちには四人の精霊がいるんだ。内三人は冒険者やってる時の戦闘メンバーだよ」

「精霊……ですか。見たことがありません。こちらへは連れてこないのですか?」

「精霊は基本的に人間がいるとこが嫌いなんだ。だからあたしも帝都へは、最初に来た時と皇妃様の呪い解くのに必要だった時しか連れてきたことないな」

「帝国本土に精霊はいないのでしょうか?」

「いや、爺様の領地で見せてもらったことがある」

「ああ、辺境侯爵領ですか。自然豊かな地と聞きます」


 なるほど、リリーは以前に精霊を見たことがあったから、初めてあたしに会った時も『精霊使い』とピンと来たんだな。

 帝国は広い。

 人が少なく精霊の住みやすい地方もあるんだろう。


「大体把握いたしました。ありがとうございました」

「記事のネタになる?」

「もちろんです」


 アハハと笑い合う。


「ところで、リリー様から話があるというのは?」

「あたしにも関係あるんだった。聞いとかないと。ラブい話だよ」


 リリーが苦笑する。


「実は我に縁談が舞い込んでいるのだ」

「「「おめでとうございます!」」」


 記者トリオはリリーに縁談来てること知ってるクセに。


「ちなみにどちらの方からですか?」

「多くの話があったらしい。我が聞いているのはアーベントロート公爵家の次男ヘルムート殿、ツムシュテーク伯爵家の長男で帝国騎士のライナー殿、帝都の老舗『ケーニッヒバウム』をいずれ継ぐと目されているピット殿の三氏だ」


 頷く新聞記者トリオ。

 ここまでは事前の推測がピタリだ。

 やっぱリリーの縁談って帝都の関心事なんだなあ。


「しかし残念ながらラブい話にはならぬと思う」

「何故ですか?」

「皆素敵な殿方なのでな。もったいないというか気後れするというか」

「リリーあんた、青っ白く弱っちく見えるって言ってたじゃないか」

「あっ、本音はいらぬ! 先方に伝わったら気を悪くするではないか」

「男心がわかってないなー。ズバッと言ってやるんだよ、ズバッと」


 大いに頷く記者トリオとウ殿下と黒服。


「ズバリ言うべきかの?」

「悪いとこわかんなきゃ直しようがないじゃん。ふわふわしたこと言ってお茶濁そうとするのは残酷だぞ?」

「ぬしの得意技ではないか」

「ひとまずあたしのことは置いといて」


 リリー以外の皆がいい縁談だと思ってるなら、三人とも結構な貴公子なんだろう。

 三人の内誰かを自分好みに改造するっていう考え方を、リリーはしないのかなあ?


「三氏からの求婚の申し出にお断りするという旨を、紙面に掲載すればよろしいでしょうか?」


 思わずリリーと顔を見合わせる。


「リリーの真意が伝わらないのは、貴公子ズが納得できないでしょ」

「うむ。断るのであれば誠心誠意だな」

「となると口実が必要だから」

「我の親友にして名代であるユーラシアと対戦してもらう。負けたら諦めてもらう」


 目を輝かせる記者トリオ。


「大変に面白い趣向だと思います!」

「シンプルで白黒ハッキリつきますね!」

「しかしお相手候補の皆様は承諾するでしょうか?」

「するもしないも、目の前のチャンスを逃す愚か者や勝負から逃げる軟弱者に、リリーがなびくわけがないだろーが」

「「「ごもっとも!」」」


 ハハッ、煽ったった。

 記者トリオ大喜びだぞ?

 イベント好きだな。


「これいつになるのかな? 勝負の方法は?」

「実は既に先方には問い合わせてあるのだ。すぐに返事が来るはず。ユーラシアは都合の悪い日はあるかの?」

「明日と明後日はダメだな。それ以降なら早い方がいい」


 帝国艦隊がいつソロモコに攻めてくるかわからん。

 第一皇子の一ヶ月の喪が明けるまでは大丈夫って話だけど、油断はできない。


「うむ、では明日も来てくれ。連絡しよう」

「わかった。今日は帰るね。さよーならー」


 皆に別れを告げ、転移の玉を起動し帰宅する。

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