第1125話:自称ドーラナンバーワンのお肉ハンター
フイィィーンシュパパパッ。
「こんにちはー」
「やあ、精霊使い君。いらっしゃい」
魔境から帰還後、昼御飯を食べてから皇宮にやって来た。
最早転送先付近にいることが全く不思議と思わない、土魔法使い近衛兵と挨拶を交わす。
「あんたいつもここにいるから、いないと逆に不安になるかもしれない」
「光栄だな。普段の地道な働きが認められるというのは晴れがましい」
「ええ? 多分恐るべき勘違いだぞ?」
アハハと笑い合う。
まー一人くらい暇な人員がいてもいいか。
近衛兵に余裕がないのは何か違う気がするし。
「今日もお土産お肉だから、皆で食べてね」
「ありがとう。皆喜ぶよ。ところで君いつも肉を持参してくれるが、これどうやって手に入れているんだ?」
「もちろん狩るんだよ」
「魔物肉というからには野生なんだろうが、ドーラとはそれほど魔物が多いのかい?」
「多いね。魔物をやっつけてお肉にするか、またはやられて食べられちゃうかの世界だよ」
「ええ?」
おっと、帝国人にはこーゆージョークが通じないか?
ドーラがマジで魔物ばっかりの国だと思われてしまうわ。
「冗談だとゆーのに。魔物多いことは多いよ? でも人の住んでるところが魔物ばかりなんてことはさすがにない。首都に住んでる人は魔物なんか見たことない人も多いと思う」
「怖いね。でも倒すことができれば食べられるのか」
「いや、おいしい草食魔獣は少ないよ? あんまり邪気強くないんで結構逃げるし。でもあたしは自称ドーラナンバーワンのお肉ハンターだから」
今日のお肉は聖風樹の箱に保存してあったものだ。
さすがに毎日狩ってるわけじゃない。
感心してる土魔法使い近衛兵。
「自称って便利な言葉だな。俺も何か自称すべきか」
「あれ、思ったのと違う方向行っちゃってるわ。自称するならサボリ土魔法使いとかどう?」
「そのまんまじゃないか」
「じゃあ木陰で佇む者」
二つ名みたいだな。
ひゃい子に名付けてもらってもいいが、どう考えても才能のムダだなー。
いいよ、サボリ君で。
「さあ姫、参りましょうか」
「よきにはからえ」
笑いながら近衛兵詰め所へ。
◇
「こんにちはー」
「おお、来たかユーラシア」
詰め所にはもうリリーと黒服が来ていた。
ウルピウス殿下もいるな。
「お土産。ワイバーンの卵だよ」
「おお、三つも持ってきてくれたのか。すまぬな」
「お肉もあるよ。皆で食べてね!」
「「「「おう!」」」」
あれ、誰か来た。
この気配は……。
「新聞記者さん達じゃん」
「「「ユー子さん!」」」
あたしが到着後すぐに来るとは、大した職業適性だこと。
それともあたしの運がいいから会えるんだろうか?
「おいでよ。今からリリーの話聞こうと思ってるんだ」
「よ、よろしいので」
「いいよ。何遠慮してるの」
リリーが聞いてくる。
「ユー子とは何ぞ?」
「正体隠してるんだ。もったいぶった方が面白いでしょ?」
「まだ隠してた方が都合がよいのか?」
「いや、もういいよ。ユー子さんの正体は、ドーラの美少女精霊使いユーラシアでした!」
目をパチクリする新聞記者トリオ。
「しまったなー。もうちょっと帝国本土に名を知られてから公表すべきだった。失敗した」
帝国の端っこゼムリヤでも名前が知られていたから、つい増長してしまった。
リリーとウ殿下が記者トリオに説明する。
「ユーラシアはおそらく世界一のレベルを持つ冒険者なのだ。我がドーラに行った時から大変世話になっている」
「『精霊使い』の二つ名の通り、冒険の際は精霊三人を連れているぞ。母上が呪術者に呪われた際、呪いを解いてくれたのもユーラシア配下の精霊だ」
「な、何やらすごい実績をお持ちというのはおぼろげながら理解できましたが……」
「ドーラ人が何故帝都に?」
「平民なのは間違いないのでしょう? 皇宮に出入りしているのはどうしてなんです?」
「ドーラには『アトラスの冒険者』とゆー仕組みがあって……」
クエストと転送魔法陣と転移の玉がうんぬんかんぬん。
この説明も慣れたもんだ。
「……ってことなんだ。今『アトラスの冒険者』はドーラにしかいないけど、昔は帝国にもいたらしいから、調べりゃわかると思うよ。帝国の『アトラスの冒険者』についてはあたしもよく知らないから、面白いことわかったら教えてよ」
「『アトラスの冒険者』の転移転送によって、ドーラに居住しながら帝都に来ることができるということは、何とか理解しました」
「ユーラシアさんが平民であることは変わらないわけですよね? なのに皇宮で大きな顔をされているのは?」
別に大きな顔をしてる意識はないのだが。
あたしのプリティフェイスの存在感があり過ぎるだけだろ。
「あたしみたいな可愛い子ちゃんには親切な人ばっかりだから?」
「ユーラシアはずうずうしいから、大体どこへ行ってもこんな感じなのだ」
「とゆーかドーラには身分制度がないから、皇族貴族が偉いとゆー感覚がわからんのだよね」
「語り口は冗談みたいだが、常識外の発想と実力と度胸を秘めた冒険者なのは間違いない。記者諸君も人間お手玉やハインリヒ男爵邸の侍女連れ去りを覚えているだろう?」
「そ、それはもう」
「できれば連れ去りでなくて逃亡と……」
どうでもいいだろ、言い方の違いは。
「記事ネタがないなら、記者さん達もドーラに来てみる? 在ドーラ大使のプリンスルキウス、この前のお葬式の時に結構注目浴びたって聞いたけど」
新聞に載ればプリンスの宣伝になるかな。
おお? メッチャ記者さん達食いついてくるやん。
「ガレリウス様の葬儀で久しぶりに姿を見せたルキウス様は、今国民一番の関心事と言っても過言ではないのです!」
「すんごいブームになってるってことか」
「我々もぜひ、記事にしたいのですが……」
「しかし遥か大海の彼方にいらっしゃいますので、おいそれと取材することもできませず……」
「何だ。早く言ってよ。いつがいい?」
「もちろん早い方が」
「明日どう?」
「いいんですか? ぜひ!」
明日商人さん達を案内するかもしれないな。
じゃあ……。
「朝に迎えに来るよ。ここ皇宮正門で待っててくれる? 時間長くなると思うから、そのつもりでね。内容は盛りだくさんになることを保証するよ」
「「「ありがとうございます!」」」
ハハッ、大喜びだ。
あ、お肉焼けたみたいだな。




