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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1123話:エルフとヒバリさんの話

 ――――――――――一九五日目。


「美少女精霊使いユーラシア参上! アビー、お肉持ってきたぞお!」

「持ってきたんだぬ!」

「いらっしゃいお肉! ウェルカム脂!」


 今日はダンテの予報通り晴れ。

 赤眼族の集落にお肉とイモを持っていったあと、エルフの里にもやって来た。


「ついテンション上がっちゃったけど、今日はお肉が主役じゃないんだよ」

「えっ? お肉を主役から押しのけるほどの強者が? ごくり」

「ごめん、言い方を間違った。以前言ってたやつだよ」


 要するにイモなのだ。

 赤眼族はジャガイモとサツマイモを知らず、エルフはそもそもイモを育てる文化がない。

 根っこに(クララによるとジャガイモは根っこじゃないらしいけど)栄養分を蓄える植物というのは割と多い。

 その中でおいしくて増やすの簡単ってやつはまだまだあると思う。

 いずれドーラに導入したいもんだ。


「イモについてはカナダライさんに説明しておくけど、アビーはどうする? 聞く? お肉?」


 あれ? 聞くまでもなくお肉だと思ってたら、案外悩んでるぞ?

 どーしたんだろ?

 悪いものでも食べたのかな?


「イモとは、どの程度の脇役です?」

「そーゆー判断の仕方で来たか。最終的にワイルドボアの家畜化を目指してるんでしょ? じゃあ主役に直で絡む脇役だな」

「じゃあ聞きます! お肉はお腹がすいてから食べる方が、よりおいしそうです!」

「おおう、賢明な族長らしい冷静な判断だね」

「賢明で冷静だぬ!」


 言い過ぎたと思ったところをすぐさま拾うヴィル。

 やるなあ。

 ぎゅっとしてやる。

 

「表面赤っぽいのがサツマイモ。どっちかというと暖かいところでよく育つよ。植えて一ヶ月半も経つとひゅるるって蔓が伸びて地面を這うから、切り取って植えるとどんどん増やせる。さっきのイモが地面の下にたくさんできるよ。秋が深まったらほじくり返して収穫ね。甘いっていう特徴があって、焼いたりふかしたりするとおいしいの」

「ほうほう。エサとして確保するため一度に増やすことを目的とするならこちらですか」

「甘いんですか? 楽しみです!」


 見事に着眼点が違うのな。


「丸っこいのがジャガイモ。冬の保存食としてはジャガイモの方が重要かな。芽がついてればいいから、これくらいの大きさで分割して切り口に灰を塗っておくと腐らず種イモとして使えるよ。ふかして塩でいいし、スープに入れてもおいしい。今から植えると夏には収穫できるし、夏の終わりに植えると冬前に収穫できる」

「二期作が可能ですか」

「可能なんだけど、ジャガイモは連作すると出来が悪くなるって特徴があるんだ。違う畑で作ってね」


 カナダライさんが頷く。


「何だか魔物のエサにはもったいないですな」

「人間様のエサにもしてよ」


 森の恵みに頼ってるだけより、よほど冬越しが楽になるはず。


「またこっちに合いそうな作物あったら持ってくるからね」

「お願いしますぞ。やはり我らも食と畑作は重要視しなければならんと痛感します」


 森の恵みと狩りがメインのエルフには理解されづらいかもと思っていた。

 でもさすがにカナダライさんくらいになると、畑作の重要性がわかってる。

 アビーが嬉しそうに言う。


「もう、本当にユーラシアさんの姿や言動は、ヒバリさんを見ているようです。ヒバリさんも食にはうるさくて、いつも『肉はラブ、肉はピース、肉はミート』と言ってたんですよ」

「実にあたしが言いそうな言葉だなあ」

「アハハ。私がお肉好きになったのはヒバリさんの影響です」

「えっ?」


 カナダライさんのポカンとした表情が全てを物語っている。

 まあアビーは元々お肉が好きだったんだろうけど、ヒバリさんもまたお肉を愛してたんだろう。


「ヒバリさんってドーラ西域で冒険者してたんだよね?」

「ええ」

「あっちこっち行ってたのかな?」


 転移できたわけでもないだろうし、『遊歩』で飛べたはずもない。

 どうしてたんだろ?

 アビーが言う。


「現在の塔の村のダンジョンに潜ってたんですよ」

「そーなの?」


 塔の村ができるまでは不便な場所だったんじゃないの?


「いえ、昔はあそこにドワーフの集落があったんです」

「へー」


 あの塔はドワーフの技術で建てられているんだったか?


「じゃあドワーフはあの場所を捨てちゃったんだ? 何でかな?」

「あの地は魔力条件が特殊ですから、大昔から私達もドワーフも注目してたんです」

「我らとドワーフは仲が悪かったです。早い話が、睨み合いになった時にドワーフが引いてくれたのですぞ」

「ははーん? でもヒバリさんのパーティーにはアビーの他にドワーフと獣人がいたって聞いたけど」


 仲悪かったならどうして?

 アビーが恥ずかしそうに言う。


「家出して迷子になった時、ヒバリさんに誘われまして……」


 いや、種族混成のパーティーなのは何でかって聞いてるのだ。

 家出とか迷子とか聞いとらん。

 興味はあるけれども。


「何で照れてるの?」

「あんなに情熱的に誘われたのは初めてで……ぽっ」

「あれ? ヒバリさんって女の人なんだよね?」


 あたしに似てるって話だったから、無意識にそう思ってたぞ?

 今まで確認したことなかったけれども。

 カナダライさんが言う。


「ヒバリ殿は女性ですぞ」

「だよね。ビックリしたわ」


 男の人と似てる言われた日にゃ、乙女の自信と常識が崩壊するところだったよ。

 しかしならば状況はわかる。

 パーティーバランス的にとか目的達成のためとか理由をつけて、アビーの魔法が必要だとねじ込んだんだろう。

 絶対面白半分だったろうけど。


「ヒバリさんって、わざわざ異種族混成パーティーにしたのかな?」

「いや、たまたまだったと思いますぞ。しかしヒバリ殿の存在が、異種族間の融和と理解の第一歩になったのは否めない事実でございますな」


 ヒバリさんはドーラ植民地時代初期の人だから、おそらく亜人差別なんてのとは無縁だったろう。

 いろんな亜人と交流することが、当時の状況でベストだと考えていたに違いない。

 ドーラの将来を考えていたか、ヒバリさん個人の事情かはわからんけど。


「ありがとう。ヒバリさんについて少しわかった。今日はもう帰るよ」

「えっ? お肉は食べていかれないんですか?」

「アビーが独り占めするといいよ」

「何と魅惑的な提案でしょう!」

「魅惑的だぬ!」


 アハハと笑い、転移の玉を起動し帰宅する。

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