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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1122話:重要人物のフラグが立っている

「サイナスさん、こんばんはー」


 夕食後に毎晩恒例のヴィル通信だ。

 外はまた雨が降りだした。

 まあでもダンテによれば明日は晴れるらしい。


『ああ、こんばんは』

「今日皇宮行ってさ、リリーに会えたんだ」

『縁談について話してきたのか?』

「うん。リリーのお相手候補は皆さんそれぞれ貴公子なんだけど、軟弱なのが気に入らないんだって。で、あたしがリリーの代わりにリングに上がってお相手候補と対戦、あたしに勝てたら婚約ってイベントになりそうな気配だね。リリーの構想によると」

『何だその予定調和は。君が叩きのめして終わるんだろう? 山場がない』

「いやまあ、単純な力比べや高級魔宝玉を可能な限り持ってこいみたいな勝負ならその通りなんだけど」

『つまらない本を渡されて寝た方が負けって勝負なら勝てないと』

「そゆこと。明日もう少し詳しい内容がわかるんだ」

『負けるつもりはないんだろう?』

「でもないよ。リリーと相性ピッタリだったらくっつけた方がいいじゃん?」

『独走がえぐい』


 独走じゃないとゆーのに。

 むしろ乗り気じゃないのがリリーくらいなんだって。

 あたしとしてはどっちにしても楽しみなのだニヤニヤ。


「雪ん娘精霊がどうなってるか確認しに行ったんだ」

『うん。どんな具合だった?』

「片言だったけど喋れるようになってたよ。コユキって名前だった。元気だから全然問題ないな」


 雪ん娘精霊についてはオーケー。

 どうやら問題はこのあとなのだ。


「変わった爺ちゃんと知り合いになったよ。結構なレベルで『精霊の友』で、コユキと一緒にいたんだ」

『既に重要人物のフラグが立っている件』

「だよねえ。その人に現地がカル帝国領ゼムリヤってとこだと教えてもらった」

『ゼムリヤ? どこだったろう?』

「帝国本土の西から北に行ったところだな。さらに北の大きい国と接してるとこ」

『ああ、はいはい。確か辺境侯爵が統治している?』

「おおう、サイナスさん物知り」


 地図に描いてないことはわかんない。

 辺境侯爵ってどこかで聞いたな。

 確か紋章にヒイラギの葉が入ってるんだった。


『辺境侯爵って、帝国一の大貴族なんだろう?』

「らしいね。以前聞いたな。そういえばその爺ちゃんが、ゼムリヤの領主に跡継ぎいないみたいな話してた」

『どうして初対面の老人と領主どうこうの話になるのかがわからん』

「あれ? 何でだろ?」

『オレに聞くなよ』


 皇妃様が辺境侯爵の娘とも聞いた。

 跡継ぎが決まってないとゆーことは、子は皇妃様だけか。

 帝国一の大貴族かつあんな治めるのが難しそうな土地なのになあ。

 将来の波乱要素だな。


『その老人はどんな方なんだ? ユーラシアが変わった人って言うくらいだと興味あるな』

「会ったのが雪ん娘精霊コユキのいた山の小屋なんだ。精霊と『精霊の友』しか入れない結界みたいのが張ってあった」

『ほう? その老人が作った小屋なんだろう?』

「多分」


 『精霊の友』じゃなきゃ入れないんじゃ、他の人にはほぼ用がない。


『相当奇妙だな。精霊と親交を持つためだろうか?』

「おそらくは。帝都だけかもしれんけど、帝国の人ってほとんど精霊に馴染みがないみたいなんだよね。なのに魔物が出る山で特殊な小屋作ってまで精霊と仲良くしようってのが面白いよねえ」


 あるいはゼムリヤの人は精霊をよく知ってるのだろうか?


『ああ、魔物が出る土地なのかい?』

「食べられる草食魔獣が多いって言ってた。でも地元の人、お肉狩らないみたいなんだよね」

『草食魔獣と肉がイコールなのはユーラシアだけだからな? 帝国は一般人の武器所有は原則不可なんだろう?』

「あっ、だからか。あれ? でもその爺ちゃんは結構なレベルだったぞ?」

『一般人ではないってことだな』


 有力者だろうと当たりつけたけど、思ったより身分の高い人なのかも?

 全然偉そうには見えなかったけどな?


「しかもあたしのこと知ってたんだよね」

『帝国の片隅なのにか?』

「うん。どこまであたしの美貌が鳴り響いてるんだと思ったよ」

『思うだけなら罪にはならない』

「罪深い美貌だったかー」


 アハハと笑い合う。


「三日後にその爺ちゃん家に招待してくれるって。うちの子達込みで」

『エンターテインメントが残ってるわけだな?』

「エンタメだねえ。サイナスさんわかってる」


 『雪の精霊』のクエストはまだ終了にならない。

 爺ちゃん家で何かあるのか、あるいはコユキの方でトラブルがあるのかはわからないが、まあまだ楽しめちゃうわけだ。

 大歓迎だけれども。


「話変わるけど昨日の夜チラッと話したレモン寒天、レイノスで売ることになりそう」

『相変わらず展開が早いなあ。どこに押し込んだ?』

「押し込んだて。いやレイノス近辺で一番大きい『オーランファーム』農場の直営料理店がレイノスにあるんだよ。以前相談されたことがあるんだ。直営店の割に流行ってないからウリが欲しいみたいで」

『変なとこにコネがあるなあ』

「とゆーか『オーランファーム』の息子が冒険者なんだ。もう長い付き合いの」

『長いったって君、冒険者になってまだ半年じゃないか』


 半年にしては色々あったもんだ。

 『精霊使いユーラシアのサーガ』を彩る面白エピソードが、これからもてんこ盛りでありますように。

 巻数が多くなればなるほど儲かるわ。


「大きい農場だけに、レイノスのいろんな食堂に作物を卸してるんだよね。だから『オーランファーム』直営店からヒットメニューを出して、レイノスひいてはドーラ中に広めるパターンがいいかなと思って」

『ははあ、じゃあ当然落花生も?』

「カンがいいね。落花生もだし、帝国で人気のトウガラシも以前渡してあるんだ。せいぜいドーラ食文化の発展に貢献してもらうよ」

『農場主はどんな人だ? 場合によってはロクでもない結果になりそうだが』

「ちゃんとした善人だよ。あたしの苦手なタイプ」


 息子は自称聖人だけど。


『君が善人苦手と言うのは何となくわかる気がする』

「余計なとこ理解されちゃったなー」

『名付け屋を連れてくるということは、全族長クラスに話しておいたよ』

「ありがとう。サイナスさん、おやすみなさい」

『ああ、おやすみ』

「ヴィル、ありがとう。通常任務に戻ってね」

『了解だぬ!』


 明日は皇宮だが、どうせリリーは午後にならないと始動しないだろうし?

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