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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1120話:ムズムズするぬ!

「もう食わねえのか? 愛しの俺の前では小食になるのか?」

「誰が奢られる時に遠慮なんかするか。あたしの沽券に関わるわ。朝お肉たっぷり食べちゃってさ。夜もしっかり食べたいから、昼は軽めにしとくの」

「奢るなんて言ってねえからな?」

「奢らせたくなっちゃうネタがあるんだぞ?」

「あるんだぬよ?」


 ギルドの食堂で昼食を取りながら、ダンや片眼鏡と話をする。

 最近とみにヴィルが面白いなあ。


「これあげる」


 ナップザックから落花生を取り出す。


「何だこりゃ? おお、結構な量じゃねえか」

「落花生っていう、土の中になる変わった豆だよ。帝国で仕入れてきたんだ」

「ほお?」

「売ってた人のニュアンスからすると、帝国でもさほど知られた作物ってわけじゃないらしいね」


 うまく育てられるか確定じゃないんだけど、クララは自信がありそうだった。

 保存が利くし、少なくとも損にはならん作物と見た。


「美味いのか?」

「濃い目の塩水で殻ごと茹でたやつを剥いて食べると相当おいしいね。まだ試してないけど、中身を煎ったものはナッツとして珍重されるって」

「面白そうな豆じゃねえか」

「でしょ? 少し食べてみてさ。よさそーだったらダンのところの農場でも増やしてよ」


 しげしげと眺めているダン。

 片眼鏡が言う。


「超絶美少女精霊使いはダン君に肩入れしているのか?」

「俺に惚れてるんだぜ」

「根も葉も花も実も茎もない噂はやめてよ。ダンはギルドの西の大農場『オーランファーム』の息子なんだ。で、さっき言ってたレイノスの食堂『サナリーズキッチン』がその直営店なの」

「ということは?」

「新しくドーラに根付かせたい、皆に知らせたい作物があったら、『オーランファーム』から仕掛けてもらうのがいいかなと思ってるんだ」


 大農場とレイノスの直営店なら融通が利きやすい。

 ダンとはすぐ話ができるから、目新しい作物やそれを利用した料理をドーラに広めようと思ったら、一番都合がいいんじゃないか。


「ヒットしたら需要が生まれるから、ドーラ中にすぐ広がるってことだな?」

「うん。需要があれば供給は放っといてもついて来るもんだからね」


 これは真理。

 落花生も皆が作るようになってくれないかな。


「『オーランファーム』と『サナリーズキッチン』がドーラの農業と目新しい料理の最先端だってことになってくれると、あたしもやりやすいんだ」

「さっきの寒天について聞かせろ」

「忘れてたわ。寒天は熱すると溶けて冷やすと固まるっていう、海藻の成分なんだ。寒天自体にほとんど味はないの」

「海藻? ああ、魚人から買えばいいんだな?」

「そゆこと。さっきのはレモンっていうカラーズ産の柑橘を使って、果汁果肉砂糖を寒天で固めたもの。果物なら大体何でもおいしくなると思うよ。でもドーラで栽培されてる果物って、今は柑橘かカキくらいしかないからさ」


 野生のキイチゴなんかおいしいけど、誰か品種改良してくれんものか。

 日持ちしないから重要度がなー。


「寒天ってのはお高いのか?」

「何とタダなんです、なわけあるか! いやでも、高くはないよ。掌くらいの大きさの一袋で一〇〇ゴールドくらい。寒天入れ過ぎると硬くなっちゃうんだよね。プルプル感が決め手だから注意」

「寒天の扱いはあんたほど難しくねえんだな?」

「簡単だねえ。何であたしの扱いが比較になってるのか知らんけど。あたしも寒天とゆーものを知ったのは昨日なんだ。海の女王は煮魚を寒天に閉じ込めた料理出してくれたけど、地上には砂糖があるじゃん? スイーツにすること思いついて。これ二つ目の試作品」

「即戦力だな!」


 ハハッ、大喜びじゃねーか。


「『サナリーズキッチン』で需要の高まりが感じられるようなら教えて。海の王国で増産頼んどくから」

「おう。早速明日、寒天注文しとくぜ」

「手持ちの半分あげるよ。研究にでも使って」

「すまねえな」

「何を言うんだ、水臭い。あんたが奢ってあたしがたかる仲じゃないか」


 片眼鏡が片眉を上げる。


「その一々挟まるジョークは必要なのか?」

「あれ、おっちゃんはジョークの好きそうなタイプだと思ったけど?」

「うむ、好きだ。だから私の関わらない会話で掛け合いがあるとムズムズする」

「ムズムズするぬ!」


 大笑い。

 じゃ、片眼鏡のおっちゃんの話題で。


「あの水魔法の杖、プレゼントしたらおっぱいさん喜んでたでしょ?」

「思っていた以上に喜んでもらえた。私としてはあの杖をサクラ嬢が受け取ってくれることに関して半信半疑だったが」

「間違いないって」


 おっぱいさんは過去の言動からして、自分が固有能力持ちじゃないことにコンプレックスがあるようなのだ。

 無敵の『巨乳』持ちなんだからいいのにな?

 簡単に魔法が使えるようになるあの杖は嬉しかろう。

 おっぱいさんに使う機会があるかはわからんけど。


「実用的だしな」

「うん。おっちゃん、あの杖月何本くらい製作できるの?」

「適した乾燥木さえあれば一〇〇本くらいだな」

「乾燥木のストックはどれくらいある?」


 腕を組む片眼鏡。


「一〇〇〇本分と言いたいところだが、大杖にできる幹を細かく切り刻んでしまうのはいかにももったいないのだ。となると一〇〇本がいいところだが……」


 ニヤニヤするダン。


「あれ使えばいいじゃねえか」

「あたしもそう思ったとこ」

「あれ、とは?」

「ペペさんが折っちまった世界樹だぜ。横倒しになって放置されてるんだ」

「樹種はトネリコの変種だって。もう四ヶ月くらい野晒しだけど」

「トネリコか! 高級品ではないか」


 杖用の木で何が高級とか全然わからんけど。


「超絶美少女精霊使いよ。適当な幹を切って持ってきてくれると助かるのだが」

「といっても、あたしじゃどういうのが杖に適してるとか全然わかんない」

「ふむ? ではぜひ現地に行ってみたいが……」

「じゃあ今から行く?」

「え?」

「あたしは時間あるから」

「え?」


 ビックリするところじゃないわ。

 これはギャグでも何でもないから。


「面白そうだ。俺も連れてけ」

「ダンが来るなら素材や魔宝玉も稼げそーだな」

「俺がいなくたって稼ぐんだろう?」

「バレたかー」


 アハハと笑い合う。

 うちの子達も適当なイベントが入ったとあって、腕が鳴るぜみたいな顔してるわ。

 ヴィルにビーコンを運んでもらい、魔境世界樹エリアへ。

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