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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1117話:やったぜバカウケだ!

「おいしかった! ごちそーさまっ!」


 ちょうど煙突付き暖炉で炙り焼きができてラッキーだった。

 老人が言う。


「実に美味だな。何の肉だ? 野趣からすると何らかの魔物の肉なんだろう?」

「コブタマンという魔物の肉でやすぜ」

「コブタマンか。ふむ、覚えておこう」

「この辺にはおいしいお肉住んでる?」

「ハハハ、おいしい肉か」


 老人が笑いながら説明してくれる。


「標高の高いところだと雪熊、暴れカモシカ、サンダーバードくらいだな。いずれも生息数は少ないが」

「どれも食べたことないから食べてみたいけど、絶滅しちゃうと嫌だし」

「もっと下に降りると草食魔獣が多いぞ」

「天国みたいなところだねえ」

「ハハッ、地元の連中からは魔物が多い山として忌み嫌われているのだ」

「じゃあ狩り放題なのか。ますます魅力的だなあ」


 この老人、最初いかめしい人かと思ったら、イシュトバーンさんみたいな目で見てくるんだけど?


「じっちゃんは『精霊の友』なんだよねえ?」

「うむ、もちろんだ。この小屋には精霊と『精霊の友』しか出入りできぬ」

「あっ、そーだったんだ?」


 確かにこの小屋に近付いたら変な感覚があった。

 魔物避けの類かと思ったら、もっと複雑な術式だったでござる。

 帝国はすごいなー。


「この山脈には魔物が多いが、精霊も住み着いているのだ。この小屋は精霊達に使ってもらっている」

「いいねえ」


 精霊のことを考えて小屋を作ってくれているとは。

 ならばコユキもすぐ友達ができて寂しくないだろう。


「数日前、山の天気が不自然に荒れ狂っていてな。強い力を持つ精霊のトラブルかと想像はできたが、迂闊に近寄れなんだ。コユキを助けてくれたのは君達だな?」

「うん。ファントムバインドっていう、魔力の罠に引っかかってたんだ」

「やはりファントムバインドだったか」


 ファントムバインドまで知ってる。

 この老人は精霊についての知識もかなりあるようだ。

 何もんだよ?


「つまり『アトラスの冒険者』のクエストになっていたから駆けつけてくれたということか」

「そうそう。ただコユキを救ってもクエスト完了にならなかったんだよね」


 どうも雪ん娘精霊コユキは、この謎の老人に会うための導入に過ぎなかったようだ。


「礼を言う。あのままだったら春の訪れが大幅に遅れ、大凶作になりかねなかった。コユキ自身も消滅ないし悪霊化していたかも知れぬ」

「あれ、思ったより大変な事態だったんだな」


 幽霊ばかりじゃなく精霊も悪霊化することがあるのかよ?

 助けられてよかった。


「山に魔物が多いと、ゼムリヤと他の帝国領との行き来はあんまりないの?」

「うむ。峠越えの古い街道があるにはあるが、魔物が生息しているせいで嫌われる。陸路での行き来はほぼないな。ゼムリヤ側には魔物除けを設置してあるのだが」

「海路オンリーなのかー」


 老人が面白そうに聞いてくる。


「精霊使いは他国の地理に興味があるのか?」

「ドーラの女の子は大体そーだよ」

「ほう?」


 冗談だぞ?

 ドーラの女の子は大体冗談好きだから。


「ドーラは温暖で地味も肥えてるいいところだと聞いた」

「温暖で地味が肥えてるとこまでは本当だけど、魔物が多いじゃん? 隣の村行くのも大変だったりするよ」

「魔物と共存しているのか?」

「んー共存ではないかな。魔物を追い払って居住区にしたり、魔物のいるところに魔物除けでムリヤリ穴開けて住んでるイメージ?」

「それほどか。ゼムリヤ以上だな」


 腕を組む老人。


「だから冒険者が多いのか?」

「多いねえ。ドーラも広いから魔物がほとんど出ないところもあるの。古い大きな集落群では冒険者になろうとする人あんまりいないけど、逆に冒険者になることを推奨されているような村もあるよ」

「去年の星風の月に、リリアルカシアロクサーヌ皇女がドーラに渡っただろう?」

「よく知ってるね」


 えらくレベル高いし、ゼムリヤでは有力者なんだろうな。

 以前新聞記者にリリーがドーラに来たことは話したが、何月かまでは言ってないので、新聞で知ったのではないのだろう。

 おそらく何らかの情報収集ルートを持っている。

 仲良くしておくべし。


「リリーは武者修行に来たって言ってたよ。まー宮廷のドロドロ人間関係が嫌になっちゃったんだろうけど。従者と二人だけで盗賊村に現れたんだ」

「盗賊村?」

「旅人を襲って生計の足しにしてる貧しい集落だよ。結局リリーは何ともなかったし、今ではその集落も更生してちゃんとしてるけど」

「ほうほう、面白い」


 随分熱心に聞いてくるな。

 リリーの話は帝国のどこでも鉄板じゃねーか。


「ドーラのノーマル人居住エリアの最西端に塔の村ってのがあるんだ。冒険者を募集して、大規模なダンジョンの素材やアイテムを回収することで成り立ってるの。リリーはそこで冒険者やってたんだよ」

「危険ではないのか?」

「マニュアルに従えば初心者でも大丈夫なくらいのダンジョンなんだ。もちろん深い階層は結構ヤバい魔物いるけど。リリーとその従者くらいの実力があれば、ムリしなきゃ平気だな」

「なるほどな」

「ドーラ独立前、帝国軍の潜入工作部隊が朝方密かに塔の村を攻めたんだ。彼らの目的はリリーを帝国に連れ帰ることだった」

「……なるほど、本来ドーラを独立させる目論見ではなかったと聞いている。どうやって退けた?」

「結局リリーの演説で降参させたって聞いた」

「演説?」

「皇女リリアルカシアロクサーヌの睡眠を邪魔するとは何事かーって怒鳴りつけてやったって、リリー大威張りだったよ」

「ハハハハハ!」


 やったぜバカウケだ!

 あたしだとリリー平常運転じゃねーか以上の感想は出てこなかったけれども。


「そろそろあたし達は帰るよ」

「ん? もうか。では今度こちらへ来る時、俺の家に招待しよう。三日後の朝この小屋で待ち合わせ、どうだ?」

「喜んで。うちの子達もお邪魔していいかな?」


 都合が悪かったか。

 老人は初めて逡巡した様子を見せたが?

 

「……精霊にとってあまり面白くない場所かもしれんが、配慮はさせてもらおう。ぜひ連れてきてくれ」

「わかった。じっちゃん、じゃあね」

「うむ、さらばだ。娘を救ってくれたことには感謝している」


 娘? コユキのことかな?

 転移の玉を起動して帰宅する。

 ふむ、まだクエスト完了のアナウンスは聞こえてこない。

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