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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1115話:ワイバーンを飼育したい

「サイナスさん、こんばんはー」


 帰宅後夕食を食べ、毎晩恒例のヴィル通信だ。


『ああ、こんばんは』

「お腹一杯ワイバーンの卵食べたら眠くなっちゃった」

『いいなあ』

「ワイバーンの養殖はさすがにムリなんだよなー」

『どうしてワイバーンの養殖話になったか、小一時間問い詰めたい』

「ごめん。その頃もう寝てる」


 美少女精霊使いは、夜お腹一杯になると眠くなっちゃうのだ。


『大体ワイバーンは養殖じゃなくて飼育だろう?』

「そーゆー問題だったのか。養殖を飼育に言い換えたら飼育員が食べられちゃう問題がなくなるわけじゃないんだけど」

『で、今日はどうだったんだ?』

「黄身が大きくて味が濃厚なんだよ。まったりしてコクがあり、それでいてしつこくない」

『ワイバーンの卵から離れようか』

「はーい」


 今日は昼も夜もワイバーンの卵だったから。

 ワイバーンの卵はマジで美味いので、飼育したいのは冗談でもなんでもない。

 ただ竜種は言うこと聞く気がまるでしないんだよなあ。

 グリフォンくらい聞きわけがよければ考えるのに。


「で、何だっけ?」

『その前に、落花生とヤマワサビありがとうな』


 ヴィルに持っていってもらったのだ。


「こっちこそごめん。会った時渡すべきだったのに、魔法の葉青汁の刑がショッキングで、つい頭から抜け落ちてた」

『今年早速植えてみるよ』

「うん、よろしく」


 栽培に関して灰の民の村は信用できる。

 やっぱ精霊がいるからな。

 ヤマワサビがうまく育つなら、黒の民の醤油とともに売り込むべし。


『アレクとハヤテとは、緑の民の村へ行ったんだな?』

「そうそう。例のスキルスクロール用の紙の試作品頼んできたんだ」

『急ぎじゃないんだろう?』

「急ぎではないね。でもケス含めた三人が揃ってる時は冒険者活動もしたいだろうし。頼むタイミングが難しいんだ」

『気を使ってるんだなあ』


 現在は異世界に水魔法スクロールの外注を頼んでいるが、いつまで受けてくれるかわからないという事情もある。


「スクロール紙の試作品ができたら、デス爺とペペさんに見てもらってさ。オーケー出たら即生産できると思う。外注出してた分をドーラ内製に切り替える」

『水魔法の話だな? 何本製作すればいいんだ?』

「月二〇〇〇本だね」

『まあ月二〇〇〇本くらいなら小規模生産で十分可能だな』

「それなー」

『ん? 何か問題があるのかい?』


 問題ってわけじゃないんだが。


「今来てる移民は種持ってきてって条件だから、ほとんど農民じゃん? 耕作に慣れてるからスムーズだけど、今後は農業経験者ばかりじゃないんだよね。働ける場があればいいなあ、と思ってたんだよ」


 ノアやココちゃんみたいな都会っ子にいきなり農業はできなさそう。

 就職口がないのは治安悪化の元だしな?

 農業以外の産業で働ける場を作れないものか。


『紙工場を作れればって意味かい? ムリだなあ』

「サイナスさんの見解でもムリか。むーん?」


 今はとにかく農業生産力上げないと食べ物に困っちゃうしな。

 働ける場を作る素地も資金も時間もない。


『心配することはないんじゃないか? 移民は耕作がつきものだ。ドーラに期待されているのも肥沃な大地と温暖な気候だろうし』

「農業と決めつけられちゃうと、移民で来る人偏っちゃうじゃん? あたしはいろんな人に来てもらいたいんだよね』

『それこそ一本釣りして、適した環境のところに連れていくしかないだろう』

「よし、残念だけどしょうがない。食べ物大事」


 食料に余裕ができてからでいいや。

 当面は農業と、その加工品を主に考えよう。


『ルキウス皇子と海の王国へ行ってきたんだろう?』

「うん」

『成果はあったかい?』

「あったあった。深海で取れる綺麗なサンゴが山ほど」

『すごいじゃないか。かなりの高値で取り引きされるものなんだろう?』

「らしいね。海底では利用されないらしいんだ。全部売れるんだけど、あんなのいっぺんに放出したら値が下がっちゃうから、すこーしずつ売ることにした」

『常道だな。他には?』


 さすがにサイナスさんはネタがこれ一つとは思っていない。

 やるな。


「寒天ってものが出てきた」

『寒天? 聞いたことないな』

「海藻の成分から作る、熱すると溶けて冷やすと固まる食品かな。簡単に言うと」

『ふうん。君が推すからには相当美味しいのか?』

「いや、それ自体には味がないの」

『味がない?』


 わからないようだ。

 そりゃそうか。


「今日緑のショップでレモンっていう柑橘を買ってきたんだ。果汁と果肉と砂糖を混ぜて固めるとおいしそうだと思わない?」

『なるほど、甘み食品の材料か』

「今試作してるんだ。明日朝には食べられるから楽しみ」


 サトウキビの栽培は、帝国より明らかにドーラの気候の方が向いている。

 砂糖は絶対に仕掛けが利くから、その応用については考えておかねばならない。

 サイナスさんがしみじみと言う。


『これからはスイーツと見ているのか』

「一つの方向性だね。やっぱ甘いものは身体が喜ぶじゃん? お肉でも喜ぶけど」

『砂糖は輸出品としても使えそうだな』

「おっ、サイナスさんいいところに気がついたね。寒天自体は安くて柑橘も比較的簡単に手に入るから、寒天スイーツはかなりウケると思うんだよね。そうすると自然に砂糖作るぞーって話になるじゃん? ドーラでのブームが去っても輸出で売れることが担保されていれば、急速にサトウキビの作付け面積は増えるんじゃないかな」


 こういうのは地味な仕掛けでいいかも。

 自然と波に乗るだろ。


「寒天の輸出はドーラでブームにしてからだな。あと魚油取ったあとの魚を乾かして粉末にしたものが安く手に入ることがわかった。クセはあるんだけど、旨みも強いんだよね。塩と野菜混ぜたものを炊いた米にかけて食べるとおいしいんじゃないかってうちの子達が言うから、これも研究しようかなと思って」

『米普及用にってことかい?』

「移民が多くなれば自然と米は売れるんだけど」


 レイノスやカラーズで米食を普及させるための工夫になりそう。

 かれえは家庭用には当分難しいし。


「ウルトラチャーミングビューティーはおねむの時間です。サイナスさん、おやすみなさい」

『ああ、おやすみ』

「ヴィル、ありがとう。通常任務に戻ってね」

『はいだぬ!』


 前回から三日経つ。

 雪ん娘の様子を見に行くか?

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