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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1114話:スキルスクロールの紙を試作してもらう

「こんにちはー」

「こんにちはぬ!」

「おっと、これは大勢で」


 緑の民の紙職人が集まってる集会所にやってきた。

 中から人が出てきて快く迎えてくれる。

 うんうん、皆さん上機嫌じゃないか。


「皆にこやかだねえ。景気がいいから?」

「上得意様には愛想よくするもんだぜ」

「上得意だったかー」


 気分がいいなあ。


「聞いてる? 美人絵画集がかなーり絶好調なんだけど」

「そうだな。紙も各職人の工房で手分けして生産してるんだ。皆が皆恩恵を受けている」

「よかった。実にめでたいねえ」


 誰の采配か知らないけど、うまいこと仕事を配分してるんだな。

 皆が潤うのはいいことだ。


「いつまでも売れるわけじゃないから、今の内に儲けといてよ」

「心得てるぜ。で、今日はどうしたんだ? また儲け話かい?」

「儲け話だよ。スキルスクロールって知ってる?」

「スキルスクロール?」


 首をかしげる紙職人。

 うむ、あまり一般の人知らないよな。

 特にカラーズは冒険者にもあんまり縁がないくらいだし。


「魔法やバトルスキルが封じ込められている巻物で、広げた人がスキルを覚えるとともに巻物自体は無価値になるっていうものなんだけど」

「ほうほう、興味深い紙の利用法があるんだな」

「そのスキルスクロール用の紙を作ってくれないかってことなんだ」

「え? 特殊な紙なんじゃないのか?」


 アレクよろしく。

 あたしじゃよくわからん。


「スキルを記憶させるために魔力緩衝量が多いことが重要なんです。魔力緩衝量は材質に依存しますから……」

「サッパリだ。早い話が?」

「これを材料に混ぜてくれってことなんだ」


 ナップザックから切ってきた幹や枝葉を取り出す。


「えっ? そのナップザックどうなってるんだ?」

「これマジックアイテムなんだよ。口より小さいものならいくらでも入るの」

「へえ、で、その木は」

「世界樹。さっき言ってた魔力緩衝量が多い木だよ」


 あたしもよく知らんけど。

 驚く紙職人。


「世界樹って……この世の果てに生えてるっていう、伝説の超高木? あんたそんなもん持ってこられるのかよ?」

「大したものではないよ。実際には魔境世界樹エリアってとこに生えてた、魔力吸って成長するバカデカい木なんだ」

「御神木ってわけじゃねえんだな? 祟りがありそうで怖いんだが」

「祟りを心配してたのか。大丈夫大丈夫。祟りがあるなら折っちゃった人に向かうからね」

「あんた世界樹折っちゃったのかよ?」

「何であたしが不祥事の当事者にならなきゃいけないんだ」


 あれ?

 でも世界樹折っちゃった事件で一番利益を得たのはあたしかもしれないな。

 祟りがあるならペペさんへどーぞ。


「去年、ドーラ一の大魔道士が魔法撃ちそこなって、根元からポッキリいっちゃった。ちーん」

「ええ? あり得ねえ」

「その点については全面的に賛成するけど、まあ事実は事実として受けとめないと前に進めないじゃん?」


 いやだから物の怪を見るような目をあたしに向けんな。

 あたしが折ったのではないとゆーのに。


「折れちゃった世界樹を有効活用したいんだよ。今、開拓地の移民の家に使ってる木材は、世界樹を切り出して転移で運んだものなんだ」

「再利用してるのかよ? 全然知らなかったぜ」


 別に秘密にしてることではないけど、吹聴してるわけでもない。

 開拓地に関わってない人は知らんかもな。


「廃物を利用するという考え方はいいかもな」

「ムダがないもんねえ。世界樹を有効に使おう第二弾として、スキルスクロール用の紙を大量生産できないかって話なんだよ。君達は魔法史における生き証人となるのだ!」

「え? 突然持ち上げられたが、やるとは言ってねえぞ?」

「可愛い子ちゃんのお願いを断る理由を教えてもらおうか。ひょっとして男の子の方が好みだったりする? アレク、お願いしなさい」

「違えよ! 断るとも言ってねえ!」

「ユー姉、ムリヤリエンターテインメント方向に持っていこうとしないでよ」

「どーも面白成分に飢えてて」


 隙あらば面白方向に持っていこうとゆー姿勢は、あたしのごまんとある長所の一つだ。

 今回はスカのようだが。

 で、緑の民の紙職人達がスクロール紙製造に前向きでない理由とは?


「さほど需要があるものではないだろ。あるいは逆に、魔法が普及しきった世の中って荒れる元じゃねえか?」

「肝心な部分を話してなかったね」


 世界樹折っちゃった魔道士の開発した水魔法がどうのこうの。

 興味を示す紙職人達。


「ほう、水が出るだけの魔法? 緊急時に飲み水に困らねえってのはいいな」

「辺境開拓や航海に必須ってことで、帝国からたくさん注文が入ってるんだ。もちろんドーラでだって有効だけど」

「ふんふん」

「攻撃魔法を売ろうって言うんじゃないんだよ。水魔法みたいに生活に関わる魔法、案が出てるのは消火の魔法とか魔除けの魔法とか。既存の魔法でも回復や治癒の魔法はもっと普及してもいいじゃん?」

「その通りだな!」


 ちょっとノってきたな。


「魔法使って便利で安全な世の中を作るんだ」

「ああ、気に入った」

「もう一つ言うと、画集が行き渡ると緑の民の儲けは少なくなるからね。新しい収入の道は確保しとかなきゃいけないじゃん?」

「お? おう」

「魔法の普及に懸念を抱いた姿勢は立派だよ。あんた達が協力してくれるといいな」

「俺達でできることなら力になろうじゃないか」


 握手。

 よし、協力させることには成功した。

 ……実はいずれ攻撃用の魔法やバトルスキルにも応用したいんだが、まだ言いだせる雰囲気ではないな。

 説得の材料を用意しておかねば。


「で、具体的にはどうすりゃいいんだ?」

「これ開発費だよ」


 一万ゴールドを渡す。

 あとはアレクお願い。


「まずは世界樹を重量で半分くらい含んだ試作品を作って欲しいんですよ」

「半分ね。木皮を使えば楽勝だ」

「いえ、葉も木質も全部使用してもらった方が、魔力緩衝量が安定するので……」

「ほう。つまりスペック上必要な要件を満たすためなんだな? 紙の質は落ちそうだがまあいい、試作品だ。煮ほぐして半分入れてみよう。紙としての必要な性質はどうだい?」

「今ショップで販売している三枚一ゴールドの紙があるじゃないですか。あれより丈夫で、印刷が可能で……」


 熱心に取り組んでくれるようだ。

 うむ、これでいい。

 アレクと紙職人達にお任せだ。

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