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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1113話:我を通す

「黄の民の工務店が調子いいんだ」

「へー」


 道々カラーズの様子を聞きながら行く。

 同行者はヴィルを含むうちの子達及びアレクハヤテだ。

 少しずつでも発展していっている様子が聞けると嬉しくなってくる。

 何故ならドーラはあたしの大好きな国だから。


「御主人の国ではないぬよ?」

「あたしの国みたいなもんだって」

「何の話だか?」

「こっちの話」


 フェイさん指揮下ならば、工務店の調子がいいってのもよく理解できる。

 立派な小屋があっとゆー間に建つもんな。


「移民相手に低価格で小屋を建てていて」

「しまった。開拓地で世界樹の端材が出るな。それをスクロール紙に利用すればよかった」

「ユー様はムダが嫌いですから」

「貧乏性だなあ」

「何だとお!」


 まあ別に怒ってるわけじゃない。


「工務店は黄の民だけでやってるのかな?」

「今のところそうだね。でも他色の民でも採用するって」

「フェイさんらしいな」


 カラーズの商売で黄の民が一番出遅れていた。

 いずれ米作や製塩を担当してもらうから心配はしてなかったが、もう既に問題ないじゃん。


「どこの村も順調だな。よしよし」

「輸送隊の皆もホクホクなんだ。レイノスから仕入れる酒と塩は確実に売れるから」

「皆が儲かるのはいいことだね。お酒ってどこで造ってるのかな?」

「知らないけど、普通に考えればレイノス近郊か近場の自由開拓民集落なんじゃないかな。ユー姉はお酒に興味があるの?」

「呑み助はどこにでもいるって言われてさ。その通りだなと思って。じゃあドーラ独自のうまーいお酒を作ったら、帝国にも売れるじゃん?」

「腐るものじゃないしね」

「独自でなくても、美味けりゃいいんでやすぜ」

「クオリティが高ければいいか」


 クオリティの低いものはいらん。

 ドーラ産の評判を下げるものは却って迷惑だ。


「ユーラシアさんは皆が儲かるのが嬉しいだか?」

「嬉しいね。皆がおゼゼ持ってればこっちのものも売れるからね」


 ウィンウィンってやつだよ。


「以前イシュトバーンさんがウィンウィンって話をしてただろう? 輸送隊員は多かれ少なかれその考え方を実感してると思うよ」

「洗脳に成功したか。こっちの商売もやりやすくなるなあ」

「姐御、悪い顔でやすぜ」

「バッドフェイスね」

「かろうじてプリティーが勝ってない?」


 アハハと笑いながら緑の民のショップへ。


「こんにちはー」

「精霊使い御一行様じゃないか。よく来た」

「あれ、柑橘も売り始めたんだ?」

「ああ、今まで交易の方に回してたんだけどな。カラーズも景気が良くなってきただろ? 試験的に販売してみろってことでな」

「確かにレイノスの方が高く買ってくれそうだもんなー。柑橘は皮厚いから輸送しやすいし」


 してみると輸出もしやすいな?

 ドーラより冷涼な帝国には柑橘少ないだろうし。

 ま、カラーズの農産物は、いずれ大都市になるアルハーン平原の開拓地に消費されるのが望ましい。

 輸出用の柑橘は西域に広まってくれるのが理想か。

 西域の平地は少ないけど、柑橘に適していると思われる南向きの斜面は多いから。

 魔物さえいなきゃなー。


「これは丸くないんだねえ。何てやつなの?」

「レモンだぜ。酸味が爽やかで苦みが少ないんだ」

「一〇個ちょうだい」


 ちょうどいい。

 寒天スイーツの具材にできる。

 砂糖とレモン果汁を固めたらきっと美味い。


「おっ、精霊使いは欲張りだな」

「えっ?」

「レモンは初恋の味って言われてるんだ」

「いやんばかん!」

「いやんばかんぬ!」


 大笑い。

 初恋の味を欲張るって意味深だろうが。

 ショップ店員に別れを告げ、緑の民の村へ。


          ◇


「今帝国からたくさん注文が入ってる水魔法を作ったペペさんのところには、スクロール一本あたり一〇〇ゴールド入ることになってるんだ」


 紙職人の集会所を目指す途中も話ながらだ。


「安くない? ケイオスワードを操って新魔法生み出すって大変なことだよ?」


 魔法研究者たるアレクはそう思うのかもしれないけど。


「でも多分この魔法って最終的に何万と売れちゃうんだよね。仮に帝国の人口の一〇〇分の一が買ったとすると一〇万本以上?」

「一〇万……」

「すごい数だべ」

「しかもスキルスクロールの製作自体はペペさんの手を離れてるから、一〇〇ゴールドは純粋な儲けなんだ。何もしなくてもおゼゼ入ってくる。ペペさん大喜び」

「それならまあ」


 納得するアレク。


「で、スクロール製作をドーラで請け負えば、よりドーラが潤うってことだね?」

「そゆこと。魔法といえども経済の原理からは逃れられないのだ」


 ペペさんみたいな天才の生活が苦しいってのはちょっとな。

 ペペさんに儲けさせて、アーティスティックな活動により周辺も潤う状況が理想的だと思う。


「アレクも新しい魔法研究してよ」

「ちょっとボクの研究の方向性と違うんだけど……まあ儲かるなら考えてみるよ」

「この俗物め」

「追い立てておいて逃げ道なくすやり口がひどい」


 アハハと笑い合う。


「空のスキルスクロールは輸出するだか?」

「いや、ドーラで消費するのが望ましいかな」

「……それは危機管理的な問題で?」

「まあね」


 空スクロールにはもちろん攻撃魔法だって書き込める。

 現在帝国は一般人の武器所持を禁止してるくらいだから、もちろん魔法のスクロールを買うことだって普通にはできないだろう。

 となれば空のスキルスクロールを大量に生産するという発想はないはず。


「強力な魔法戦士部隊なんか作ると、またよからぬことを考えるかもしれないからね」

「力を持てば行使したくなる、か」

「帝国の今のトップは戦争したがりなんだよ。すげー迷惑なんだけど」


 力を持つほど我を通したくなるのかもしれない。

 ドーラだって独立直後、実力者同士で揉めて分裂の危機だったしな。

 帝国と状況は違うが。

 ハヤテが呟く。


「ユーラシアさんだってすごい力を持ってるだが」

「すごいって言われると謙遜したくなるけど、あたしはちゃんと世界平和の方に行使してるんだぞ?」

「『謙遜』を『自慢』に、『世界平和』を『おゼゼ儲け』に変換するとしっくりくるね」

「こらアレク、本音を言うな」


 笑い。

 我を通したいって意味では、あたしは誰よりも思いが強いかもしれない。

 あたしはあたしの目指す世界が皆にとって都合がいいと信じているから。

 おっと着いたぞ。


「こんにちはー」

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