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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1112話:トリックアンドトリート!

「大分わさってきたなあ」

「わさってきたぬ!」

「いいですね。夕御飯用に摘んでいきましょう」


 プリンスルキウスとマックスさんを送ったあと、灰の民の村に向かう途中だ。

 湧き水のところでクレソンを見ている。

 サイナスさんとこのお土産の足しにするか。


 ちなみに残り三つのワイバーンの卵の内、二つはプリンスに進呈した。

 すげえ喜んでたぞ?

 最後の一つはもちろんうちの夕御飯なわけだが。


「今日海の王国で知った寒天と魚粉だけどさ。寒天にはスイーツっていう明確な方向性が見つかったじゃん? 魚粉をどうにかしたいんだよね」

「魅力のある食材ですよね」


 廃棄されちゃうくらい安いものだ。

 かつ栄養満点。

 もし移民が飢えることがあるなら大量に買いつけるけど、おいしい食べ方をどうにか見つけたいなあ。


「卵に魚粉は合いそうにないよねえ。クレソンにはどうかなあ?」

「ボス、ライスね」

「えっ?」

「醤油でやすぜ」

「えっ?」


 何なの?

 クレソンみたいな青菜を刻んで魚粉と醤油と混ぜてらいすにかける?


「……うまそーだな」

「ユー様、お好みで摩り下ろしたヤマワサビやショウガを添えてもいいと思います」

「実にうまそーだな」


 魚粉は米みたいなプレーンな味の食材にピッタリに思えてきた。


「あれ? 魚粉とコンブ塩混ぜただけでもらいすに合う気がしてきたぞ?」

「保存利きやすし、売りやすいですぜ」

「プチプライスね」

「それってらいすの洒落なん?」

「米食のお供としてよさそうです」

「らいすのお供かー」


 かれえを家庭料理化できるのはまだまだ先だ。

 となれば……。


「ふりかけを米普及の起爆剤にしよう!」

「「「ふりかけ?」」」

「らいすに振りかけるからふりかけ」

「相応しい名前だぬ!」


 主人に忠実なのはヴィルだけだ。

 残りの三人は微妙な顔してるぞ?

 まあいいや。

 灰の民の村に着いた。


「サイナスさん、こんにちはー」

「ああ、いらっしゃい」

「トリックアンドトリート!」

「えっ?」

「お土産やるからイタズラさせろ!」


 ものわかりのいいうちの子達が、また何か始めたぞーという顔をしている。


「ユーラシアみたいな可愛い子ちゃんが言うならギリギリセーフ」

「えっ? 可愛い子ちゃん?」


 サイナスさんが予想外の呪文を唱えている?


「ヒゲ面のおっさんが小さな女の子に同じことを言ってる場面を想像してみなさい。完全に犯罪だぞ?」

「そーいわれるとそーかも」

「魔法の葉青汁の刑だ!」

「うわー、あたしは何ということを仕出かしてしまったんだー!」


 アハハと笑い合う。

 今日はサイナスさんの勝ちだなー。


「お駄賃だよ」

「画集の儲けのお金?」


 お駄賃違うやん。

 受け取るけれども。


「お土産だよ。お肉と今取ってきたクレソン」

「いつもありがとう」

「盛大に感謝しなさい。崇めても構わない」

「これさえなければなあ」


 アハハ。

 汎神教の女神ユーラシアは帝国でどういう扱いなのかなあ?

 唐突に気になった。


「アレクは図書室だよね?」

「ああ、おそらく。例のスキルスクロール用の紙に関する相談かい?」

「そうそう。アレク達を巻き込まないと」

「陰謀臭がする」

「アレク達も儲けさせてやらないと」

「取ってつけたような言い訳」


 三度笑い合う。

 

「行ってくるね」


 図書室へゴー。


          ◇


「おーい、アレク、ハヤテ!」

「ユー姉!」「ユーラシアさん!」

「やっぱりあんた達は図書室か。あたしの弟分にも拘らず、文字との格闘がそんなに楽しいのか」

「ユー姉はもっと本を読んだ方がいいんじゃないの?」

「だから本は眠くなるんだってば。あたしは賢いから、負けるとわかってる戦いはしないのだ」

「頭の下で押さえ込むから勝ちだと思うよ」

「押さえ込み一本。誰がうまいこと言えと」


 アハハと笑い合う。


「ケスがいなくて寂しそうだから、あんた達を遊んでやってくれとの依頼を請けました」

「本当だか? タダ働きの予感がするだ」

「クララ、本当なの?」

「ウソです」

「ウソだぬ!」


 あたしに疑いの目を向けんな。


「まあいいじゃないか。本当でもウソでも楽しんだもん勝ちだ」

「ユー姉のエンターテインメント至上主義にはたまに賛成したくなるね。ボク達も退屈なのは本当なんだ」


 全面的に賛成してもいいと思うよ。


「聞きたかったんだけど、あんた達冒険者活動してる時のアイテムや素材はどこで処分してるの?」


 あったかパワーカードの量産を頼んでる手前、素材はいくらあってもいい。

 今持ってるならあたしが引き取るけど。


「塔の村で売ってるだよ」

「塔の村には塔の村の経済があるから、向こうで売却するのがいいかと思って」

「うん、いいんじゃないかな」


 素材やアイテムの偏在が買い取り価格の低下に繋がるようなら、売り場所を考えた方がいい。

 けど今のところそんな問題は起きてないみたいだし。

 まあ転移術使えるデス爺がいるから、アイテムもないとこないとこに運んで売ってるんだろ。


「で、ユー姉の用件は何なの?」

「ついにしびれを切らしたアレク君が聞いてきました!」

「そういうのいいって。もっともボク個人に用があるなら、スクロール紙に関することなんだろうけど」

「正解でーす。魔力緩衝量に期待して世界樹を使おうと思ったら、どんだけ紙に含まれていればいいのかな?」


 ちょっと難しげな表情を見せるアレク。


「……乾燥重量の半分含まれていれば確実だな。実際は五分の一くらいでいいのかもしれないけど、境目はわからない。ベースになる紙の材料が何かにもよるし、世界樹だって部位部位で魔力緩衝量が違うのかもしれない」

「そーかー」

「どれくらい含まれていても紙にできるかとか印刷しやすいかってことになると、ボクじゃまるでわからない」


 不確定要因が多いみたいだな。

 デス爺やペペさんの意見を聞いた方がいいか?

 いや、印刷の都合なんかわかりゃしないだろうから、試作品作る方が先だ。


「よし、世界樹取ってくる! ヴィルお願い」

「わかったぬ!」


 ――――――――――五分後。


「ただいまー。よし、行こうか」

「ど、どこへ?」

「緑の民の村。スクロール紙の試作品作ってもらおう」

「……知ってはいたけど、ユー姉はビックリするほど行動開始が早いなあ」

「あたしのごまんとある長所の一つだよ。あんた達はどうする?」

「「「「「行く!」」」」」「行くぬ!」


 全員で出発、緑の民の村へ。

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