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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1111話:研究する価値のあるもの

「海の王国へも商人さん達を連れてこようかと思ってたんだ」

「うむ、大いに歓迎するぞ」

「どうしてサンゴはダメなんだ!」


 どうしてって言われても。


「あたしもサンゴは切り札になり得るかと思ってたけどさ。やっぱダメだわ。こんな数見せたら買い叩かれちゃう」


 サンゴなんて必需品じゃないもんな。

 希少価値があるから珍重されるのだ。

 魔宝玉の時も思ったが、相場を壊していいことなんかない。


「これって育つのすごく遅いんでしょ? 無尽蔵に採取できるなんて思われたら迷惑だわ。ムリなく獲れる分だけ、少しずつ売りに出そう。商人さんにはいくつかサンプル見せるに留めておく」

「むう、仕方ないか」


 プリンスルキウスも残念そうだが、ダメなもんはダメ。

 長期にわたって少しずつ放出し、最大益になるようにコントロールするのがベスト。


「いや、いいものを見せていただきました。目の保養になりましたよ」

「うむ、そうかの?」

「こんなものもありますよってゆー、ラインナップの一つとしては十分だね」


 ドーラ産サンゴが注目されれば、値段が吊り上がるかもな。

 絶対に安売りしないことと需要供給のバランスを崩さないことを念頭に置いとけばオーケー。

 短期でぼろ儲けとゆー、あたしの大好きなシチュエーションには向かないものだ。


「では商店街へ案内しようかの」


 五番回廊へ。


          ◇


「ほう、なかなかだ」

「おいしいよねえ。帝国にも魚醤ってある?」

「あるが、港町にだけだ。これほどバラエティに富んでるのは面白い」


 マックスさんの魚醤評だ。

 商店街まで来ると庶民派マックスさんの出番だな。

 どうも帝都メルエルは内陸寄りだから、魚関係の品はあんまり多くない気がしてきた。

 でも干物みたいな簡単な加工品はタムポートから入るんだろうし。


「どうやって使ったらいいかのレシピをつければ、魚醤は売れそーだな」

「酒もいい。呑み助はどこにでもいるからな」

「お酒も合格と」

「海藻の種類によって、酒の風味が変わるのじゃぞ?」

「へー、海底のお酒にも工夫があるんだなあ。色々研究しといてくれる? こういうのはたくさん種類並べて選ばせた方が売れそう」

「うむ、わかったぞよ」


 お酒は有力だなあ。

 ドーラでももっと大々的に製造していいような気がしてきた。

 つかドーラではお酒どこで造ってるんだろ?

 職人に会ってみたいな。


 マックスさんが言う。


「乾物は売れると思う」

「んー? 帝国にもあるでしょ?」

「あるが、魚介の種類が違うからな」

「なるほど、参考になるなあ」


 フルコンブは上流階級向けとして絶対に売れると思ってた。

 それ以外の必ずしも美味さで決定的なアドバンテージを握れないものであっても、帝国で取れないものは売れるかもしれないのか。


「帝国で最大の消費の場はもちろん帝都メルエルだが、実は帝都でもそれほど魚は食べられていないんだ」

「どうしてだろ?」

「タムポートのような港の食べ物だという意識が強いんだと思う」


 やっぱり。

 ドーラみたいな魚食タブー的な考え方はないにしろ、帝都でもあまり魚が食べられてないというのは意外だった。

 じゃあタムポートの漁業に強い人と協力して、帝都に魚を流行らせるのが近道かもしれないな。

 覚えとこ。 


「勉強になるなあ」

「ハハッ、精霊使いは勉強熱心だね」

「日々これ精進、日々これ勉強がモットーなんだ」

「モットーなんだぬ!」


 ヴィル以外のうちの子達がウッソだあという目で見ている。

 いいじゃないか。

 たまにはあたしだっていいカッコがしたいのだ。


「御主人はいつもカッコいいぬよ?」

「ありがとう。あんたはいつも可愛いぞ? ぎゅー」

「ふおおおおおおおおお?」


 よかったね。

 それにしてもヴィルって、たまにあたしの心を読むような言動があるなあ。

 あたしはわかりやすいんだろうか?


「大きな貝やサメのひれの乾物は珍重されると聞く」

「ふーん、食べたことないな」

「干物にすると旨みは凝縮するからの。海底ではあまり好んで食されることはないが、交易用にはいいであろう」


 保存が利くもんな。

 でも『珍重』くらいだと、さほど数は出ないものなのかな?

 あるいは帝国の人口は多いから、結構行くんだろうか?

 感覚がよくわからん。

 まあ商人さんに見てもらえばいいか。


「干物の研究は大いに必要だの」

「干物に限らず、加工品は仕掛けようがありそーだな。地上のハーブや香辛料との相性がいいかもしれないよ」

「そうかの? また協力してたもれ」

「もちろんだよ」


 塩辛いだけじゃ飽きちゃうもんなあ。

 あたしだって美味いものが食べたい。

 香草で風味付けしたり、粉トウガラシ振ったりすると合うと思うのだ。

 これもまた今後の課題だ。


 プリンスが何かを見つけたようだ。


「これは何ですか?」

「おっ、女王の御友人。これは魚粉だよ」

「魚粉?」


 海底では魚から油を取る。

 油を抜いたあとのカスを乾燥させて粉にしたものだそーな。


「これは食べ物なんだ?」

「まあ食べられるの。海藻とともにスープの出汁を取ったりするのに用いるのじゃ」

「へー、安い?」

「材料が材料だから安いぜ。余って売れなくて廃棄されちゃうことも多いんだ」

「もったいないねえ」

「味見してみるかい?」

「うん、ありがとう」


 油抜いただけのカスなら、魚の旨みや栄養は大体詰まってるんじゃないの?

 でも味付けはしてないのか。

 ぺろ。


「……あれ、意外とおいしいぞ? 悪くない」

「そうかい?」


 皆が味見する。


「ほう、オツな味だ」

「……クセが強いですな。魚臭いというか」

「わざわざ輸出するようなものじゃないけど」


 帝国でも簡単に作れるだろうしな?

 でも安くて栄養価が高いなら、それだけで価値がある。

 もし将来ドーラが飢饉とかでピンチになったりしたらお世話になるかもしれない。

 これも覚えとこ。


 マックスさんがボソッと言う。


「家畜のエサにはいいかもしれないな」

「あっ、マックスさん賢い!」


 ニワトリなんて雑食だしな。

 魔物の家畜化を進める時にも有力な選択肢になるかも?


「大袋で一つちょうだい」

「へい、毎度!」


 今日知ったものの内、寒天と魚粉はいい。

 家でも色々試してみる価値がある。


「じゃあ帰ろうか」

「うむ。陛下、本日はありがとうございました」

「わらわも楽しかった。また来てたもれ」

「ぜひにも」

「バイバイぬ!」


 新しい転移の玉を起動し帰宅する。

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