第1110話:お高いサンゴ
フイィィーンシュパパパッ。
うちの子達とプリンスルキウスとマックスさんを連れて、海の王国にとうちゃーく!
「よくぞまいった!」
「こんにちはー」
「陛下、お招きに与り、ありがとうございます」
女王以下衛兵がズラッと並んでるじゃないか。
ちょっとビックリした。
ガンガンしたかったのに、隙を与えてもらえなかったわ。
「お肉とワイバーンの卵だよ。二つあげる。一つは今食べよう。もう一つはお土産ね」
「うむ、いつもすまんの。これ、調理場に運んでたもれ」
「「「「はっ!」」」」
衛兵達がえっちらおっちらお肉と卵を運んでゆく。
見慣れた風景になったなあ。
最近海底の衛兵達がお肉運搬係にしか見えなくなってきた。
「女王、銅鑼鳴らしていいかな? プリンスに聞かせたいんだ」
「ん? そりゃ構わんが」
あたしが鳴らしたいだけだろうって?
大正解だ。
だからどうした。
「これ、すげえいい音がするんだよ」
「ふむ、量産品なんだろうが魅惑的な意匠だな。いかにも叩けと言わんばかりだ」
「プリンスはわかってるなあ。いくぞお!」
「グオングオングオングオングオングオーン!」
「おお、確かに心震わすような音!」
そうだろうそうだろう。
実に素晴らしいものだと思う。
「これ『破魔の銅鑼』っていうんだ。海の王国は一〇〇年位昔、悪魔バアルと揉めたことがあって、その後の研究でこの銅鑼が開発されたんだって」
「ふむ、というと?」
「悪魔が嫌う音なんだよ」
「「えっ?」」
驚くプリンスとマックスさん。
聖属性の音なんてものがあるのかなあ?
理屈はよくわからんけれども。
「あたしも一つ持ってるんだけど、効果は確かだよ。鳴らすとバアル泣き喚くもん。ヴィルがいる時には、可哀そうだから鳴らしたことない」
「ふうむ?」
「これ海の商店街で売ってるから、輸出したいなら可能だよ。あんまり数の出るもんじゃないと思うけど、一応覚えておいてよ」
「うむ、わかった」
『破魔の銅鑼』がバカスカ売れるとは考えられん。
ただし唯一無二の効果のアイテムではある。
ひょっとすると聖火教徒辺りに売れるかもしれないしな。
「ヴィルカモン!」
「おお、あの悪魔っ子か?」
「うん、ガンガンタイムが終わったから、呼んでやりたいの。皆のいるところが好きなんだよね」
あ、魔力を感じる。
ヴィルのワープは上手だな。
「呼ばれて飛び出てヴィル登場ぬ!」
「おお、よう来た!」
「ありがとうぬ!」
女王にぎゅっとされるヴィル。
気持良さそう。
よかったね。
「こちらじゃ。席についてたもれ」
あれ? 何だろう。
今日は食事はいつもと趣向が違うな?
「前菜があるんだ?」
「うむ、食した感想をぜひ聞かせて欲しいのじゃ」
「ぜひいただくよ」
出てきたのは一口サイズの半透明のプルプルした塊だ。
明らかに見たことない不思議な食べ物だわ。
中に入ってるのは魚肉かな?
女王の表情はよくわかんないけど、自信ありそーだってことは何となく。
あむり。
「あっ、変わった食感!」
「なかなかイケますな」
おおむね高評価だ。
喉越しつるっと感覚が新しい。
「これ、何なの?」
「寒天じゃ」
「寒天?」
ある種の海藻のねちょっとした成分を集めたものらしい。
海底には変わったものがあるなあ。
「冷えると固まるのじゃ」
「あっ、じゃあ熱すると溶けちゃうんだ?」
「うむ」
「そーかー……惜しいな」
「おんしはどう思うた?」
「中に入ってるの、煮魚でしょ? 温かい方がおいしいと思うなー」
「やはり、か……」
肩を落とす女王。
「いや、面白いよ。魚醤で味をつけてるんでしょ? 寒天って元々はどんな味なの?」
「特に味はないのじゃ」
「ふーん?」
食感は変わってるけど、あんまり味を邪魔することはないようだ。
冷えると固まるなら、冷たくてもおいしいものに向いてるから……。
「あっ!」
「ど、どうしたのじゃ?」
「使える! スイーツ向きだ! 砂糖入れて固めてみよう!」
「果物を合わせてもいいな」
「プリンス、それだっ! 女王、寒天って高いの?」
「安価であるぞよ。一〇〇ゴールドもあればかなりの量を買える」
「よし、二〇〇ゴールド分買ってく。研究してみるよ。量産は利く?」
ちょっと考える女王。
「急には不可能じゃ。しかし需要が多いとなれば養殖はできるの」
「わかった、ありがとう!」
いきなり可能性を感じられる面白いものが見つかったな。
ドーラでウケたら、輸出も視野に入れて量産してもらお。
「おお、肉が来たぞよ」
「大地と大洋の恵みに感謝し、いただきまーす」
◇
「ごちそうさまっ! 満足満足大満足とお腹が申しております!」
「陛下、大変馳走になりました」
床をテカテカにし終わった女王もにこやかだ。
いや、表情はわからんけど雰囲気で。
「うむ、ルキウス殿に喜んでもらえて何よりじゃ。早速商店街へ行くかの?」
「そうだね。あ、サンゴも商店街で見られる?」
「おお、深海サンゴじゃったの。倉庫に取り置いてあるぞ。先に見るかの?」
「うん、お願いする」
「こちらじゃ」
六番回廊に案内される。
この回廊の先って、以前エルが海の王国に攻め込んできた時、その原因となった沈没船があったところだ。
倉庫だったのか。
「あれじゃ」
「どわっ!」
「これは見事な!」
「見事だぬ!」
ずらーっと並べてある色とりどりのサンゴ。
プリンスがかぶりつきですがな。
相当いいもののようだが、この数は……。
マックスさんがあまりわかってないところから見ると、庶民には用のない、あくまで上流階級向けの装飾品らしいな。
「サンゴって貴重なものなんじゃないの?」
「貴重というか、比較的珍しいものではあるな。海底ではほぼ用いられぬゆえ」
「プリンス、帝国でサンゴってお高い?」
興奮冷めやらぬプリンスが言う。
「もちろんだ。この見事な枝ぶりは素晴らしい。四万ゴールド出しても惜しくはないな」
「四万ゴールド?」
一個だけで?
いや小売価格がということはわかってるけど、これだけの量でいくらになるのよ?
魔宝玉と違って実用性はないものなのに、メッチャお高いがな。
しかし……。
「……これはダメだ。商人さんには見せられないなあ」
「何? 何故だ!」
「どういうことじゃの?」
プリンスの存在感が帝国で増し、ドーラ~帝国間の貿易が活発になりそうなこと。
二、三日中に帝国商人が来るだろうことを女王に話す。




