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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1107話:ドーラの広さを見せてやる

「サイナスさん、こんばんはー」


 帰宅後夕食を食べ、毎晩恒例のヴィル通信だ。


『ああ、こんばんは。まず昨日の続きを話してくれ』

「せかされると眠くなっちゃう」

『黙ってても眠くなるんだろう?』

「ぐー」

『おいこら』


 ここんとこサイナスさんは、乙女の習性を若干理解してきた気がする。

 乙女心を理解するのはいいことだなと思う反面、あたしの行動パターンを読まれるのは面白くないとゆー複雑な感情をもまた理解しろ。


「昨日の続きか。どこまで話したんだっけ?」

『ウルピウス皇子とイシュトバーン氏とヴィルを連れて、帝都の裏町に行ったところまでだ』

「ああ、思い出した。眠くなったことまで思い出した。おやすみなさいぐう」

『おいこら!』


 冗談だとゆーのに。

 夜の掛け合いは心の潤い。


「落花生とゆーものが売ってたから手に入れたんだ」

『落花生?』

「豆なんだけど、土の中になるんだって」

『ははあ? 聞いたことはあるが』


 サイナスさんは博識だなー。


「今日夕御飯に殻ごと塩茹でしたもの食べたけど、かなりおいしいよ。煎ったものはナッツの一種として珍重されるんだって」

『面白いな。豆は栄養価が高いし、作ると土が肥えるからムダにはなるまい』

「うん、主力の食材にはならなさそーだけど、試作してみようかと思った。今日食べたやつ以外のは栽培に回すつもり」


 豆は保存が利くのもいいところ。

 帝国でメジャーな作物ではないってことも、狙い目な気がする。


「あとヤマワサビっていう、メッチャ辛いダイコンみたいなの手に入れたんだ」

『調味料になるやつか?』

「なるやつ。黒の民が作ってる醤油と相性がいいんで、これも作ろうかと思って。ドーラじゃ気候が暖か過ぎるのかもしれないけど、水が豊富なら育つみたいなこと言ってたからさ」

『導入と栽培に熱心なのはいいが、連れていった三人とは全然関係のないところから話に入ったな?』

「言われてみれば」


 あたしにとって食べ物のことは重要なのだが、サイナスさんのエンタメにならなかったみたい。


「正確にはウルピウス殿下イシュトバーンさんヴィルの三人以外に、新聞記者も一緒だったんだ。ネタが欲しそうだったから」

『えっ? ヴィルが悪魔だとバレるだろう?』

「バレるっていうか、あたしの方から話したけれども」

『何故?』

「騒ぎになったり非難されたりするのは嫌だけど、後ろ暗いことしてるわけじゃないし」


 ヴィルは聖火教徒にも認めてもらえるくらいのいい子だぞ?


「で、名付け屋へ行ったんだ」

『君に『ウルトラチャーミングビューティー』の二つ名を売りつけた?』

「商売上手だよね。イシュトバーンさんが、『へそ曲がりのダンディー』、ヴィルが『ウルトラチャーミングいい子』、殿下が『若き鷹』って名付けてもらったの」

『……』


 予定外の沈黙。


『……微妙じゃないか? 皇子のはともかく』

「あたしもヴィルの以外は微妙かと思ったんだけど、本人達は皆大満足なんだよね。依頼者を満足させるという意味ではパーフェクトとゆーか」

『ええ? まあいいけれども』


 投げやりだけど、サイナスさんにも関係あるんだぞ?


「その名付け屋を呼んで、緩衝地帯の名前をつけてもらおうかと思ったんだ。どう思う?」

『……』


 予定外の沈黙再び。

 どーしてかな?


『遊びじゃないんだ。君の楽しみだけじゃすまされない課題だからな?』

「いや、名付け屋ひゃい子のすごいところは、依頼者を満足させるところなんだよ」

『ということは、カラーズ全員を納得させる名前を捻り出す?』

「多分」


 実際はどうかわからんけれども、案の一つとして候補に挙げればいいんじゃないの?

 気に入んなきゃ採用しなければいいんだし。


『……一考の余地はあるか。一応各村の族長クラスには話しておくよ』

「帝都の洗練されたネーミングセンスが、カラーズで必ずしも理解されるとは限らないけどね」

『こら、煽ってくるな!』


 アハハと笑い合う。


『今日はルキウス皇子を迎えに行ったんだったか?』

「行った。正念場なんだよね」

『正念場? 何が?』

「プリンス大人気って話を昨日したじゃん? 商人さん達が何人かいらっしゃーい状態になるって話なんだ。海渡ってまで来るんだよ? ぜひとも御満足いただいて、プリンスを持ち上げるお手伝いをしてもらいたいんだよね」

『ふむ? でも今現在やってることで目一杯だろう?』


 悔しいけど、サイナスさんの言う通りなのだ。


「うーん、超すごいお茶はビックリさせられるけど、季節はまだ先になるしな。水魔法を杖に仕込んで、誰にでも使えるようにしたものっていうアイデアが今日出たんで、試作品作ってもらうことにした。ただそれくらいしか新ネタがないの。海の王国に何かないか探しに、明日プリンスと行ってくるけど」

『ドーラの地図を見せてやればいい』

「地図?」


 何それ?

 サイナスさんはたまにあたしの意表を突くなあ。


『元々ドーラからの輸出品なんて、魔宝玉とコショウ、一部素材くらいだろう? 今年になってから目新しいものが出てるけど、人口考えりゃ初めから儲かるものは出てこないなんて、商人サイドもわかってるよ』

「かもなー。で、地図というのは?」

『ドーラ大陸の広さを見せてやるのさ。君、そういうのは得意だろう?』


 つまりドーラの未来を、将来の可能性を宣伝しろということか。

 今は大したものがないけど、古馴染みになっていれば絶対いい目が見られるようになるぞとわからせればいい。

 となると……。


「サイナスさん、ありがとう。あたしの出番だということは理解した」

『うん』

「大活躍してみせるよ!」

『えっ? ちょっと待て! 君が目立ち過ぎてルキウス皇子の印象が薄くなったら本末転倒だからな?』

「あれ? もっともな理屈だ。サイナスさんにしては重みと説得力のあるセリフが来たなあ」


 あたしが止まると思うのは間違いだけれども。

 何故ならプリンスの都合よりもドーラの発展の方が優先順位は上だから。


『今日輸送隊でケスは出勤だけど、アレクはいるんだ』

「うん、覚えとく」


 なら冒険者活動することもないだろうし、スクロールの相談にいくのもありだな。


「サイナスさん、おやすみなさい」

『ああ、おやすみ』

「ヴィル、ありがとう。通常任務に戻ってね」

『わかったぬ!』


 明日はプリンスを連れて海の王国。

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