第1105話:行政府にも顔繋ぎ
「ただいまー。ウルトラチャーミングビューティーがプリンスをお連れ申し上げましたぞ!」
「御主人!」
「よーし、ヴィルいい子!」
ヴィルに行政府大使室までビーコンを運んでもらい、転移で帰還した。
それにしてもヴィルは飽きずに何度でも飛びついてくるな?
ウルトラチャーミングいい子だからか。
「大使、お帰りなさいませ」
「ああ、ありがとう」
部屋にはクリークさんマックスさんアドルフの他、パラキアスさんオルムスさんまでいた。
オルムスさんが聞いてくる。
「そちらの緑髪の方は誰だい? 冒険者っぽい佇まいだが」
「おお、佇まいだけで冒険者らしく見えるようになったか。師匠として鼻が高いよ」
「鼻が高いぬ!」
「は、ありがとうございます」
「そういうのいいから」
たまには師匠らしいことをしてみたいんだってば。
「彼はラルフ君だよ。あたしの後輩の『アトラスの冒険者』で、カラーズ~レイノス間の交易を仕切っている商人ヨハン・フィルフョーさんの息子。次期カラーズ緑の民族長の旦那さんになる人」
「ほう、ヨハン氏の」
「何か目的があって連れてきたのか?」
「いや、たまたま会ったら暇そーにしてたから」
「極めてユーラシアらしい理由だった」
アハハと笑い合う。
ラルフ君も立場的に将来ドーラの重要なポジションにいそうだからね。
ドーラの実力者達と早めに面識があっていいと思うよ。
美少女精霊使いによる、ドーラをいい国にするための地道な根回しなのだ。
ラルフ君にも行政府の面々を紹介したあと、プリンスが聞いてくる。
「その後船の襲撃事件についてはどうだ? 行政府も変わりはなかったかな?」
「襲撃に使われた船は無事発見、現在オリオンが責め立てている頃合いです」
「だよね。楽しみだなー」
プリンスの乗るはずだった船がどうこうと、ラルフ君に軽く説明する。
襲われることを前提で船を出すとはって驚いてたけど、決してあたしの独断ではない。
パラキアスさんもノリノリだった。
悪いやつめ。
「又聞きだけど、プリンスが帝都で大人気みたいだよ?」
「うむ、あれほどの人数が謁見を求めてくるとは思わなかった。商人達と話をする時間が取れず、おそらくはここドーラで話し合うことになるだろう」
「その内プリンスが付き合ってもいいなと考えてる商人さんは何人くらい?」
「三、四人だろうか」
オルムスさんとパラキアスさんが言う。
「貿易商ベンノ氏が最も信頼できることに関しては変わりないのでしょう? では差益の大きい魔宝玉と戦略的輸出品はベンノ氏に任せ、それ以外を他の商人に割り振りましょうか」
「コショウは言うほど利が乗らない。他の商人でもいいかもしれないな」
「……どう考えても輸出品目が足りないなー」
せっかくプリンスとドーラの注目度が上がってきているのだ。
ここで商人をガッカリさせて帰国させると面白くない。
一度見切られるとあとで挽回するの大変だしな。
かといって急に輸出品は増やせないし、どーすべ?
「……プリンス、明日の昼頃時間取れる?」
「ん? 時間ならあるよ」
「海の王国行こうか。女王も交易には積極的だから、いいものあったら輸出に回そう」
パラキアスさんが言う。
「ユーラシアから見て、有望なものはあるか?」
「海藻から作る変わったお酒があるよ。あとは……塔の村では普及してるけど、コンブっていう海藻の粉末を混ぜた旨みの強い塩がある。他には魚醤とかサンゴとか? でも帝国でどんなものが売れそうかは、プリンスに見てもらわないとわかんないな」
「よし、明日の昼だな。楽しみにしているよ」
「一人で来る? それとも誰かお供がいる?」
「マックス、貴公来てくれ。クリークとロドルフは留守を頼む」
「「「はっ!」」」
より帝国人庶民感覚に近い者を選んだということのようだ。
マックスさんよろしく。
「ヴィル、海の女王と連絡取ってくれる?」
「わかったぬ!」
しばしの待ち時間に、ラルフ君に説明しておく。
「先月の新人冒険者にジーク君とレノアっているでしょ?」
「はい。チトーを含めて、マウさんが指導してるパーティーですよね」
「ジーク君はクリークさんの息子、レノアはマックスさんの娘なんだよ」
「あっ、そうでしたか? 全然似ていらっしゃらないので気付きませんでした」
苦笑するクリークさんとマックスさん。
ジーク君はまるでモブだし、レノアはハチャメチャだからなあ。
確かに二人とも高級軍人の子供っぽくない。
『御主人! 聞こえるかぬ?』
「うん、よく聞こえるよ」
『女王に代わるぬ!』
『おお、ユーラシアか。いかがしたのじゃ?』
「明日の昼、御飯食べに行っていいかな? お肉たっぷり持ってくよ」
『もちろんよいとも。あれか、帝国の皇子とともに来るのじゃな?』
「うん。うちの子達とプリンスとそのお供一人で」
『しかと承った。楽しみにしておるぞ』
「じゃあね。ヴィル、ありがとう。こっち戻ってくれる?」
『はいだぬ!』
よしよし。
帰ってきたヴィルをぎゅっとしてやる。
「師匠」
「ん? どうしたの」
ラルフ君ったら、さっきから何事か考えてたみたいだけど。
美形だから考えてるだけで様になるよ。
「輸出品の中には、最近ギルドの道具屋でも販売している水魔法のスキルスクロールも含まれているんですよね?」
「うん。ペペさんにお茶淹れる用として作ってもらったんだけど、いろんな用途に使えるからって引き合いが多いんだ」
水魔法『アクアクリエイト』も戦略商品だ。
あれを見てドーラには面白いものがあるって思ってくれた商人さんもいるんじゃないかな?
本来は超すごいお茶に合わせて輸出するはずだったのに、前倒しになっているものだ。
マジで輸出品目が欲しい。
「あの魔法、パワーカードに内蔵すれば、誰でも使えるようになりませんか?」
「おおおお? 冴えてるなラルフ君!」
「アイテム一つで誰でも使えるなら、より汎用性が高い」
プリンスも乗り気だ。
「パワーカードはもう生産一杯一杯で、職人の手が空かないわ。杖で作ってもらおう。ナバルのおっちゃん使い倒すぞー!」
「先ほどギルドにペペさんがいらっしゃいましたよ」
「早速試作品作ってもらおっと。あたし達帰るね」
「バイバイぬ!」
別れを告げて転移の玉を起動、一旦ホームへ。
大量に仕事が入ればナバルのおっちゃんも喜んでくれるわ!




