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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1104話:できる弟子

 ラルフ君を連れて家に戻ってきた。

 ギルドの食事は美味かった。

 安くて量があるしなあ。

 特に揚げ物は火事の危険が大きく、うちではあんまりやらないようにしているから、おいしいと幸せな気分になる。


 さて、ボチボチプリンスルキウスは帰りの船に乗り込んだ頃だろうか?

 ドーラに連れ帰らなくてはな。

 ヴィルに指示を出す。


「ヴィル、プリンスを見つけてくれる? まだ船に乗ってないようだったら、あんまり近付いちゃダメだよ」

「わかったぬ! 行ってくるぬ!」


 ヴィルの姿が掻き消える。


「師匠、プリンスというのは帝国の在ドーラ大使ですよね?」

「そうそう、プリンスルキウス。帝国の皇位継承権一位の皇子が亡くなってさ。一昨日のお葬式に参列するためにドーラを離れてるんだ。迎えに行かないと」

「転移で連れてくるというわけですか? え、どうやって?」

「せっかちだなー。すぐ種を明かすから待ってなよ」


 あたしがヴィルのいるところにならどこでも転移できるようになったことを、ラルフ君はまだ知らない。

 赤プレートに連絡が入る。


『御主人! もう船に乗ってるぬよ』

「じゃあ船の乗組員を驚かさないよう、プリンスと連絡を取ってね」

『はいだぬ!』


 ふむ、トラブルもなく出航しているようだ。

 一安心。


『御主人、プリンスだぬ! 代わるぬ』

『やあ、ユーラシア君かい?』

「うん、お迎えだぞー。そっちへ飛んで大丈夫かな?」

『ああ、場所はあるよ』

『ビーコンを置いたぬ!』

「じゃ、ラルフ君。行こうか」

「えっ?」


 デス爺製の新しい転移の玉を起動し、プリンスとヴィルの待つ船へ。


          ◇


「美少女精霊使い参上!」

「御主人!」

「よーし、ヴィルいい子!」


 ぎゅっとハグしてやる。

 ニコニコしながらプリンスが挨拶してくれる。


「いらっしゃい。そちらは?」

「ラルフ君だよ。あたしの後輩の『アトラスの冒険者』なんだ。プリンスと同じ『威厳』の固有能力持ちなの」

「ハハハ、お互い精霊使いの前では『威厳』も形無しだな。よろしく」

「よ、よろしくお願いします」


 あたしの前では形無しってどーゆー意味だ。

 『威厳』すげえって、それなりに評価してるわ。


「これは大きな船だねえ」

「武装商船だな。この船ならまず襲われる心配はなさそうだが」

「まープリンスを何日も船上で遊ばせとくのはドーラの損害だから、とっとと行政府に送るよ」

「ちょっとは労わってくれてもいいのに」


 アハハと笑い合う。


「じゃあ船長に挨拶して帰ろうか」

「師匠!」


 何だろ?

 あれ、プリンスが面白そうにこっちを見てる。


「師匠呼びなのかい?」

「そーなの。あたしは尊敬に値する存在だから」


 再び笑い合っているとラルフ君から強い口調で質問が。


「師匠! 今の転移は何なんですか!」

「何と言われても?」


 どこから説明したものか。

 あたしが思いついた便利な転移だよ。


「『アトラスの冒険者』の転送魔法陣や転移の玉ってなかなかイケるじゃん? ラルフ君の転送先はどうだか知らないけど、あたしはカトマスや塔の村に行けたり、お肉の狩場に飛べたりするのはすごくありがたいよ」

「瞬時に遠隔地に飛べる転移が、驚くべき都合のよさなのは理解していますが」

「もっと自由にいろんなところへ行けたら、さらに便利ってことでしょ?」

「えっ?」


 イメージしにくいのか。

 あたしが『アトラスの冒険者』になった理由は、そもそも行動範囲を広げたかったからだ。

 移動手段に関しては貪欲かもしれない。


「今日塔の村で会ったデス爺。頭の輝かしい村長だけど、転移術のオーソリティなんだ。で、じっちゃんに転移の玉を作ってもらったの。ホームとビーコンのある場所二ヶ所に飛べるやつ」

「はい」

「うちにはヴィルがいて、ビーコンを自由に運べるから」

「あっ、ヴィルさんの行ける場所には転移できるようになる?」

「そゆこと」

「そゆことだぬ!」


 プリンスが羨ましそうに言う。


「ユーラシア君のやっていることは、実に自由だなあ」

「自由にやれると嬉しいねえ。あたしも働き甲斐があるよ」

「師匠は何故……」

「ん? 何だろ?」

「新しい転移の玉のことです。何故ホームにも飛べる設計なのですか? ホームにも貴重な鉱石を用いたビーコンが設置してあるのでしょう? 『アトラスの冒険者』の転移の玉が使えるならムダではないですか。師匠がそうするからには、何か意味があるのだと思いますが」


 プリンスが驚いたような目でラルフ君を見ている。


「……そこ気付いたのはラルフ君が初めてだよ。いや、デス爺は察してたかもしれないな。成長したねえ」

「やはり意味が?」

「大したことじゃないんだ。もし『アトラスの冒険者』がなくなっても、機動力は確保しておきたいからさ」

「『アトラスの冒険者』がなくなる?」

「もしくはクビになる、だね。あり得なくはないでしょ。永遠に続くものなんてありはしないぞ?」


 ショッキングな仮定だったか。

 ……『アトラスの冒険者』は赤眼族監視のための機関だということがハッキリした。

 そしてあたしは、赤眼族が故郷についての知識をかなり失ってしまったことを知っている。

 つまり『アトラスの冒険者』は、既に必要性をなくしているのではないか?


 またあたしの夢に二度現れた、あたし達の世界を統括するという女神たわわ姫。

 彼女も『アトラスの冒険者』を廃止したいらしい。

 たわわ姫が現実なのか夢なのかイマイチわからないけれども、『アトラスの冒険者』の存在意義が揺らいでいるのは確かだとあたしのカンが告げる。


「まーいきなりなくなることはなくても、何らかの原因で転移転送システムが使えなくなることはあるかもしれないじゃん? 今のドーラの治安は『アトラスの冒険者』と魔法の葉青汁にかかってるからさ。代替システムについて考えとくことも必要だと思うよ」


 誤魔化したった。

 不確定の事項で今、ラルフ君を混乱させなくてもいい。


「なるほど……さすがは師匠です」

「じっちゃん製の転移システムの方が問題多いけどね。転移術について完全に理解してるのじっちゃんしかいないし。転移の玉やビーコンに使ってるの黒妖石って言うんだけど、ある程度以上の大きさのはほとんど手に入んないし」


 問題は山積みだ。

 プリンスが言う。


「難しい話はいいだろう? 船長はこちらだよ」


 うむ、挨拶して行政府行きが建設的だな。

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