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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1103話:誘われたらどっちについてく?

 フイィィーンシュパパパッ。

 ラルフ君とうちの子達を連れてギルドへ来た。


「こんにちは、ポロックさん」

「こんにちはぬ!」

「チャーミングなユーラシアさん、いらっしゃい。あれ、今日はラルフさんも一緒なんだね?」

「今日ラルフ君ねえ。フィアンセに邪険にされてるから、あたしが構ってやってるの」

「邪険にされてるわけじゃないですから!」

「ヒルデちゃん今日は都合が悪いんだっけ? どっかの男の子とデートしてるんじゃね?」

「そんなことはありません!」

「あるかもしれんぬ!」


 ラルフ君ったら不安そうな顔して。

 冗談だとゆーのに。

 アハハと笑いながらギルド内部へ。

 依頼受付所にいるのは?


「あっ、ナバルのおっちゃん、ラッキー! って、何やってんの?」

「サクラ嬢をランチに誘っているのだ」

「うまくいかないでしょ?」

「うむ、何が悪いのか……」

「サクラさん、昼御飯奢るから一緒に食べようよ」

「はい、ぜひ!」


 ずり落ちるナバルさんの片眼鏡。


「な、何故だ?」

「疑問持つのはおかしいぞ? 自分の身に置き換えてみなよ。超絶美少女精霊使いと片眼鏡のおっちゃん、誘われたらどっちについてく?」

「……なるほど、考えるまでもなかったようだ」

「アハハ、おっちゃんもおいでよ。奢るから」


 食堂へゴー。


          ◇


「美味いなー。そーだ、おっちゃんに魔道杖の注文入ったよ」

「待て、もうすぐ香草炙り焼きが片付くから」


 うむ、お腹の要求を満たすのは大事。

 あたしも大皿の唐揚げを一つつまんで口に放り込む。


「ふう、堪能した。で、どうしたのだ。超絶美少女精霊使いよ」

「おっちゃんに作ってもらったナラの短杖あったじゃん? 帝国の宮廷魔道士長さんに見せたんだ。かなり評価高かったよ」


 あれ、おっぱいさんやラルフ君も興味あるみたいだな?

 ラルフ君が言う。


「魔道杖を輸出品として考えてるんですか?」

「最初そう思ってたけど、量産品を輸出できるほど帝国にも需要はないな」

「帝国には魔物が少ないのでしたか?」

「限定的みたいだよ。人口多いんだから当たり前なんだけどさ」


 むしろテンケン山岳地帯みたいに魔物のいるところが例外なんだろう。


「影響力の強い人に使ってもらって、その引きで注文もらったほうがいいかと思った」


 仮に魔法学校や魔道士部隊みたいなものがあったとしても、帝国国内の職人を使うだろうからな。

 一般人でも使えるものならチャンスはあるけど、どーやったら売れるだろ?


「宮廷魔道士長の注文とはどんなものなのだ?」

「燿竜珠をあしらった、儀礼や式典の時に携える大杖が欲しいんだって。あえて要求はそれ以上出さないって」

「ほう、さすがに宮廷魔道士長ともなるとわかっておるな」


 片眼鏡のおっちゃん嬉しそうだ。

 センスが試されるってことだけど、自信があるのかな?


「的を射た注文なんだ?」

「燿竜珠を使いたいとは」

「そこかい」


 おっぱいさんが言う。


「ユーラシアさん、燿竜珠とはファイアードラゴンのドロップ品の?」

「うん。帝国の人、どういうわけかドラゴンに対する憧れが強いみたいでさ。燿竜珠はドーラからもほとんど入らないからって言ってた。燿竜珠はドーラの相場よりもかなり高く買ってくれそうだから、もうちょっとファイアードラゴン狩ってこようかと思ったくらい」

「『輝かしき勇者の冒険』という本がある。子供の頃、ワクワクしながら読んだものだ」

「ナバルのおっちゃんもあの本のファン?」

「おお、超絶美少女精霊使いもか?」

「いや、あたしはファンじゃない」


 ドーラ人にも『輝かしき勇者の冒険』ファンがいるのか。

 内容に重大な欠陥のある本だと思うんだが。

 ラルフ君が聞いてくる。


「『輝かしき勇者の冒険』ですか。先ほど塔の村でも聞いた書名ですが、どういうものです?」

「勇者がすげー苦労して悪いドラゴンを倒しました、ちゃんちゃんみたいな内容だよ。帝国の読み書きできる子は皆読んでるとか聞いた」


 おっぱいさんが首をかしげる。


「ユーラシアさんはドラゴン何体も倒してますよね?」

「うん。ナバルのおっちゃんだってあたしが一撃でファイアードラゴン五体倒してるのを見てるのに、何であの本を面白がるのかよくわからない」

「現実では簡単に倒せてしまうドラゴンでも、苦心して倒すというフィクションがハートに刺さるではないか」

「ええ? 全然わかんない」

「わかんないぬ!」


 これっぽっちも共感できんわ。

 謎過ぎる。

 一刻も早く『精霊使いユーラシアのサーガ』を出版して、『輝かしき勇者の冒険』なる有害図書は駆逐しなければならない。


「ラルフ君の今の石板クエストは魔境だっけ?」

「はい、ボチボチ進めています」

「十分だよ。これから新緑の季節じゃん? あたしも使える植物がないか探そうと思ってるんだ」

「師匠の現在取り掛かっているクエストは?」

「一昨日サクラさんにもらった『雪の精霊』ってやつだな。昨日行って、ファントムバインドっていう罠に捕まってた精霊を助けてきたよ」


 おっぱいさんが言う。


「まだ完了扱いではないですよね?」

「まだだねえ。ただその子生まれたばかりの精霊で、喋れないから状況わかんないの。数日すると喋れるようになるらしいんで、もう一度行こうかと思ってる」


 やはりおっぱいさんは、精霊を助けて終わりというクエストじゃないことは把握しているようだ。

 何があるのか楽しみだな。

 ラルフ君がおっぱいさんに聞く。


「依頼所でも石板クエストを斡旋するんですか?」

「配布することもありますね。現有の石板クエストが期間の長くかかるものだったりすると、冒険者の手が空いてしまいますから。なるべくムダがないようにしています。ただしクエストは特殊なものか難易度が高いもの、至急のものに限られます」


 なるほどな?

 ソロモコのやつは帝国の出方次第になってるし、『雪の精霊』は精霊案件という特殊なクエストだからあたしに回ってきたのか。


「ごちそーさま。おっちゃん、杖できたらサクラさんに預けて値段教えてよ」

「おお、サクラ嬢と話す機会を与えてくれるのだな?」

「え? サービスのつもりはさらさらなかったけれども」

「事務手続きだぬ!」


 このツッコミはヴィルの新たな芸風らしい。

 いい子だね。


「じゃ、さよなら」

「御馳走様でした」

「バイバイぬ!」


 ラルフ君を連れて一旦ホームへ。

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