第1102話:ラルフ君と塔の村
フレンドで転移の玉を使用し、ラルフ君家へ到着。
もっともヴィルとビーコンを使えば、あたしも直接ラルフ君家まで来られるんだが。
便利な世の中になったもんだ。
「案内いたします」
「うん、よろしく。羽毛は結構な量があるんだよ。出せるところの方がありがたいかな」
「ああ、魔法のナップザックでしたね」
バアルのお宝無限ナップザックから、グリフォンの羽毛を全部取り出す。
結構広い納屋の中だったけど、こんもり小山のようだ。
「こんなにですか?」
「うーん、使える部分選別したり洗ったりしたら、嵩が減っちゃうのかもしれないしな?」
要領がイマイチとゆーかまるでわからん。
これで何人分の布団になるだろうか?
あ、ヨハンさん来た。
「こんにちはー」
「こんにちは、ユーラシアさん。これがグリフォンの羽毛ですか?」
「そうそう。よろしくお願いしまーす」
「これはまた、結構な量ですな!」
「最近グリフォンと仲良くなって、櫛をかけさせてくれるようになったんだよ」
「櫛、ですか?」
「すごく気持ちよさそーなんだよ」
ヨハンさん首捻ってら。
まー一度見ないとイメージ湧かないのかもしれないけど。
ラルフ君が聞いてくる。
「師匠はどうやってグリフォンを手懐けたのです? 一般に邪気のある魔物は人馴れしないというのが定説ですが」
「エサやってるんだよ」
「エサ?」
「グリフォンだけじゃないんだけど、大きい鳥みたいな魔物は人形系レア魔物の亡骸が好きみたいなんだよね。でもグリフォンは自分じゃデカダンスやクレイジーパペットを倒せないじゃん? 人形系を倒せる技なんて持ってないから」
「わかります」
「うちのパーティーで人形系を倒すと、グリフォンはすごく欲しそうな顔するの。で、あげたらあたしのことをエサくれる人と認識したみたいでさ。グリフォンって生息数少ないはずなんだけど、近頃は寄ってくるからよく遭えるんだ」
納得いってないようなラルフ君。
邪気がある魔物ったってゴブリンや大型鳥の魔物は知性があるからか、割と話ができるぞ?
言うことを聞かせられるかは別として。
セオリーなんて全てに通用するもんじゃないと思いなよ。
ヨハンさんが言う。
「では、この羽毛はお預かりします。少々研究が必要かと思いますので、製品化にはお時間いただくと思いますが……」
「ゆっくり研究してくださいな。また羽毛が必要だったら言ってね」
よし、これはこれで楽しみな案件になった。
グリフォンはもふーするとふっかふかだもんな。
きっといい布団になると思うよ。
「じゃ、よろしくお願いしまーす。ラルフ君、行こうか」
「はい」
転移の玉を起動、ラルフ君を連れて一旦ホームへ。
◇
フイィィーンシュパパパッ。
ラルフ君とヴィルを連れて塔の村へ来た。
「ラルフ君は塔の村初めてかな?」
「はい。ここが西域街道の西の果てですか」
「大きい塔でしょ? 『永久鉱山』で素材や魔物が尽きることないから、冒険者の天国みたいなところだよ」
デス爺にもラルフ君を会わせておきたいな。
えーと、きらきらしい頭は、と。
「おーい、じっちゃーん!」
「何じゃ、お主はいつもいつも騒々しい」
あれ? フィフィパーティーもいるじゃん。
早速ラルフ君に目をつけたらしい。
「そちらの素敵な殿方は?」
「あたしの後輩の『アトラスの冒険者』ラルフ君。婚約者がいるから、割り込もうったってムダだぞ?」
「そんなことしないわっ!」
「ムダだぬ!」
ヴィルのダメ押しに笑う。
ラルフ君にも説明。
「こっちが村長のデス爺。元灰の民の村の族長だよ」
「お噂は聞き及んでおります」
「じっちゃん、ラルフ君はカラーズとレイノスの交易を取り持ってくれてる商人ヨハンさんの息子なんだ」
「何と、そうであったか。よろしくの」
こっちはオーケー。
カラーズの交易全般はサイナスさんに聞いてるだろうけど、緑の民にも関わるラルフ君のことはデス爺にも話しておきたかったしな。
「そちらが帝国のエーレンベルク伯爵家に連なる令嬢フィフィリアのパーティーだよ」
「ど、どうして帝国の貴族令嬢がドーラで冒険者に?」
「その辺は『悪役令嬢のドーラ西域紀行珍道中(仮題)』で書いてくれないかなーちらっ」
「何なの、『ちらっ』て。ええ、書くことにいたしましたわよ」
「やたっ! 執事さん監修して、内容を徹底的にエンタメに寄せて。『輝かしき勇者の冒険』以上の大ヒットにするぞー!」
ラルフ君が聞いてくる。
「本にするということですか? 輸出も狙ってる?」
「狙ってる。高飛車な令嬢がドーラの山ザルに転落するところで掴みはバッチリ。笑いあり涙ありの西域道中で名作認定だろ。フィフィも処女作大ヒットで文壇の名士の仲間入りだぞ?」
「め、名士?」
「やらかし父ちゃんのせいで零落れたかもしれんけど、あんたの才能は潰れたりはしないのだ!」
「そうねっ!」
ハッハッハッ、ノってきたぞー。
ここで話しておかねば。
「ごめんね。リリーの帰りはいつになるかわからないんだ」
「どうしてっ!」
「久しぶりに無事な姿を帝国本土で見せたでしょ? いっぺんに押し寄せた縁談で身動き取れなくなってるそーな」
デス爺は予測してたみたいだな。
執事さんが聞いてくる。
「有力候補はどなたですか?」
「アーベントロート公爵家の次男、ツムシュテーク伯爵家の天才剣士、老舗『ケーニッヒバウム』店主の孫だって」
「皆凛々しい貴公子として名の知れた方々です」
「そ、そうね。リリー様の幸せは祈らなくては」
「ところがリリーは乗り気じゃないみたいなんだ。時間はかかりそうだが必ず戻る、って言ってた」
あたしもリリーが素直に嫁に行く気は全然しないんだよな。
まああたしのカンは当たるから、ひと悶着あるんだろ。
解決にはあたしの力を借りることになるかもしれんなんて、御丁寧なフラグを立ててくれてるリリーはさすが。
「ところでフィフィはじっちゃんに何の用だったの?」
「『経穴砕き』のスキルスクロールを買いに来たのよ」
「おお、しっかり冒険者してるなあ」
ラルフ君も頷いてる。
貴族の令嬢上がりが思ったよりもバッチリ冒険者に染まってることに驚け。
リリーが帰ってきた時にはビックリするくらい成長してそう。
「じゃ、あたし帰る。健闘を祈る」
「バイバイぬ!」
転移の玉を起動し、ラルフ君を連れて帰宅する。




