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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1095話:燿竜珠の杖の注文

 フイィィーンシュパパパッ。

 魔境で稼ぎ、昼御飯を食べてから皇宮へやって来た。

 今日はイシュトバーンさんを連れている。


「こんにちはー」

「こんにちはぬ!」

「やあ、精霊使い君。いらっしゃい。今日は悪魔ちゃんも一緒で、そちらは?」

「イシュトバーンさん。元商人で、近衛兵長さんやウルピウス殿下とは、ドーラに来た時の知り合いなんだ」

「よろしくな。あんたはこんな隅っこで何してるんだ?」


 イシュトバーンさんはやるなあ。

 土魔法使い近衛兵が、当然のようにこの転送先付近にいる不自然さに早くも気付いたらしい。

 いや、イシュトバーンさんもあたしの転送先で待ってることがあるから、おかしさがわかるんだろうな。

 同類同類。


「サボってるんだよ」

「君は黙っててくれ。精霊使いをエスコートする重要な役目だ」


 アハハと笑いながら近衛兵詰め所へ。


「可愛い帽子をかぶってると、悪魔だってわからないな」

「でしょ? ヴィルを裏町へ連れていってやろうかと思って」

「嬉しいぬ!」


 さすがにふよふよ飛んでいると怪しいので、今日はヴィルを肩車している。


「おい、ヴィルが同伴なのは、何か意味があったのか?」

「前話したじゃん。裏町の名付け屋。ヴィルも二つ名をつけてもらいたいんだって」


 驚き呆れる土魔法使い。


「理由が完全にエンジョイじゃないか」

「アハハ。昨日第一皇子殿下のお葬式だったんでしょ? 魔道で監視してたはずだから、他所の悪魔がいると緊張させちゃうと思って遠慮してたんだよ。今日はいいでしょ」

「……そういえば、宮廷魔道士長がピリピリしてたな。不審な高位魔族が皇子死去の前後にメルエルに出入りしていたようだと」

「あっ、ごめん。あたしの知ってる子かもしれない。誤解させちゃうといけないから、言い訳しとかないとな。魔道士長さん呼んでくれる?」

「わかった!」


 詰め所にとうちゃーく。


          ◇


 近衛兵長さん、ウルピウス殿下に、今日は宮廷魔道士長ドルゴスさんもいる。

 リモネスのおっちゃんがいないけど、お仕事かな?

 ……近衛兵達がお土産のコブタ肉を焼いてるので、匂いで気が散るんだが。


「……とゆーわけで、第一皇子殿下が亡くなった前後に皇宮付近にいたのはフクちゃんなんだ。ごめんね。あたしも魔道レーダーで監視してる可能性に気付いたから、次の日には帝都に近付くなって言っといたんだけど」

「さようでしたか。だから去ったのですな。普段帝都にいない悪魔でしたので、あるいはガレリウス皇子は殺害されたのかと疑える状況でした。事実が判明してよかったです」


 おいおい、フクちゃん疑われてたぞ?

 必要以上に帝都をウロウロしてたら捕まってたかもしれない。

 危ないなー。


 それにしても宮廷魔道士は、帝都在住の悪魔を把握してるらしい?

 実に大したもんだな。

 面白い子がいるなら紹介してもらいたい。


「ところで魔道士長さんにお土産だよ」

「何でしょう。魔道杖?」

「ナラの短杖、小売価格三〇〇〇ゴールドくらいだって。ドーラの杖職人が作ったものなんだ」

「ほう、三〇〇〇ゴールドは安い……ふむ、クセもなくて使いやすいですな」

「ドーラは人口少ないから、魔道杖もあんまり売れるものじゃないんだよね。その杖職人も廃業しようかって話してたから、とりあえず止めて帝国に売り込んでくるって言ってきたの」

「ハハハ、なるほど。確かにこれだけの腕を持つ職人は惜しい」

「でしょ? ドーラは魔宝玉が安いから、ジュエルに魔宝玉を使ったような杖は特にお得だと思うよ」


 杖をしげしげと眺めたり握ったりしていた魔道士長さんが言う。


「……実にいい。一つ、注文してよろしいでしょうかな?」

「じゃあ今度その職人呼んでこようか?」

「いえ、燿竜珠は入手できますか?」

「ファイアードラゴンがドロップするやつだよね? 大丈夫だよ」


 大きく何度も頷く魔道士長さん。

 嬉しそうだな?

 ヴィルがそっち行ったわ。

 何故かイシュトバーンさんまでニヤニヤしてる。

 気持ち悪いぞ?


「幼き頃からの夢でしてな。いつかは燿竜珠の杖を持ちたいものと思っていたのです。しかしドーラからも燿竜珠は入ってこないのです」

「ファイアードラゴンは群れで出現してガンガンファイアーブレスを吐いてくるから、ふつーのドラゴンよりやっつけるの難しいんだ。ちょっと特殊なところに生息してることもあって、倒す人がいないんだよね」

「納得の事情ですな。子供の頃『輝かしき勇者の冒険』を読んで以来、ドラゴンは憧れでして」


 思わずイシュトバーンさんと顔を見合わせる。

 レノアが冒険者を目指すきっかけとなった本『輝かしき勇者の冒険』か。

 魔道士長さんも読者だぞ?

 相当影響力の強い本みたいだな。


「『輝かしき勇者の冒険』とゆーのは、帝国本土でかなり有名な本なんだ?」


 ウ殿下と近衛兵長さんが口々に言う。


「字の読める子供は、必ず一度は読むだろうという本だ。ワクワクするではないか」

「小官が近衛兵を志したのも、あの本の影響が大きいです」

「ドーラで初めてドラゴンを見た時は興奮したぞ!」

「ええ。憧れの存在でしたからな。そのドラゴンが精霊使い殿に一撃で屠られた時は……正直ガッカリしました」

「ガッカリしたぬ!」


 大笑い。

 いや、アトラクションのつもりでドラゴン倒したのに、ガッカリされていようとは。

 世の中理不尽なこともあるもんだ。


「もー子供の教育上よくないな。『輝かしき勇者の冒険』よりも『精霊使いユーラシアのサーガ』を読ませた方がいいよ」

「いつ出版されるのだ? その本は」

「いつになるだろ? あたしの伝説ロードはこれからだからな?」


 未来の名著より商売商売。

 早速もらった注文なんだから、お客さんを満足させる出来にしないと。


「で、燿竜珠を使ったどんな杖がいいのかな?」

「儀礼や式典の時に携える大杖を注文しましょう。あえて要求はそれだけにしておきますぞ」

「うん、わかった。職人に伝えておくね」


 ふむ、職人のセンスに任せたいということだな?

 冒険者を相手にしている片眼鏡の杖職人ナバルさんは、どちらかというと実用的な杖の方が得意だろう。

 けど性格はドラマチックなことが好きそうだ。

 格好いい杖という要求だって満たせるだろう。

 ここで魔道士長さんが気に入ってくれたら、他の注文も入るかもしれないから重要だね。

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