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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1091話:もやし

 フイィィーンシュパパパッ。

 お肉を携え、チュートリアルルームにやって来た。


「ユーちゃん、いらっしゃい! 待ってたわ!」

「そんなにお肉を待ちわびた?」

「待ちわびたぬ!」


 いいぞ、ヴィル。

 最近のツッコミは間がとてもいい。

 あ、やっぱりシスター・テレサもおるがな。


「今日はシスターも?」

「ええ。御相伴に与ってもよろしいでしょうか?」

「もちろん。お肉一杯あるぞお!」

「「やったあ!」」


          ◇


「に~く~に~わたしかみついて~はなさないというけれど~おいしさのかたちは~かわ~らな~いみた~いだ~」

「おいしい! おいしい! おいしい! おいしい! おいしい!」

「バエちゃんもシスターも絶好調だなー。追加焼けたぞお!」


 さーて、あたしも食べよ。

 しかし?


「この野菜は何なの? 何かの芽を間引いたみたいだけど、それにしちゃ量が多いし」

「もやしよ」

「もやし?」

「洗った大豆を暗い場所で綺麗な水に漬けておくと、七~一〇日でこうなるの」

「……つまり綺麗な水と大豆さえあれば、畑もなし短期間で生産できる野菜? 間引いたわけじゃなくて、最初からこうやって食べることを計算して作ったもの?」

「そお」


 マジかよ。

 そんな考え方があったのか。

 どえらい賢いな。

 どう見ても豆の状態より嵩が増えてて、食いでがあるしな?


「ありがとう。すごく勉強になったよ。こっちの世界でも応用してみる」

「でも日持ちはしないのよ。要注意のポイントだけど」

「いや、料理店とかから注文取って計画的に生産すれば問題ないな。こっちの世界では冬でも食べられる野菜は有用なんだ。となると豆はたくさん作っとかないといけないか」


 大豆はたくさん作っても保存食でいいしな。

 仮にもやしにしなくてもムダになんない。

 大豆以外の種類の豆で試してみるのもありだわ。

 あ、ダンに教えてやるのが一番いいかもしれないな。

 『オーランファーム』なら販売ルートあるし、結構大規模な生産施設でも作れるだろうから。


 シスターが聞いてくる。


「ミラさんはどうでしたか?」

「ミラ君について言いたいことがあるわ。ミラ君は『白魔法』の固有能力持ちで、初期装備が魔道杖だったじゃん?」

「はい、確かに」

「だけどミラ君はそれほど強く固有能力が発現してるわけじゃなかったから、最初何も魔法使えなかったんだよ。あの杖魔物に叩きつけて折っちゃったんだって。で、武器がなくなって『アトラスの冒険者』続けられなくなっちゃった」

「えっ?」


 シスターの動きがピタリと止まりましたよ。


「し、知りませんでした……」

「テストモンスターの時はどうしてたん?」

「テストモンスターが導入されたのは一年前ですので、当時はまだ……」

「おおう、そーだったのか」


 『アトラスの冒険者』本部も考えて、テストモンスターを導入をしてくれたのか。

 何もしてないわけじゃなかった。


「特に後衛向きステータスの新人さんは、武器注意した方がいいと思ったなー」

「でもユーちゃん、何か対策してきたんでしょ?」

「バエちゃんはあたしのことよく知ってるな。その折っちゃった杖を作った職人に会ってきたんだ」

「「職人?」」

「うん。もやしも焼き肉のタレ合うね。実に美味い」

「もう、そういうのいいから」


 笑うな。

 食べることは何より重要なのだ。


「職人も魔道杖が物理的な使い方されてるとは思ってなくてさ。今後、初心者用の杖は頑丈であることを考えてくれるって」


 まー新人は取らなくなるって話だったけど、欠員が出れば補充されるんだろうからね。


「で、折れちゃった杖もまだ使えるってことなの。短杖にリサイクルしてくれたんだ」

「よかったです」

「ミラくんも嬉しそうだったよ」


 シスターからもらった杖だしなニヤニヤ。

 バエちゃんが言う。


「ブローンさんとも会ったんでしょう? うまくやっていけそう?」

「ブローン君まだチュートリアルルームに来てないんでしょ? 『アトラスの冒険者』辞めようかなんて言ってたぞ?」

「「えっ!」」


 そりゃ驚くだろうけど。


「な、何で? ユーちゃんだって問題なくギルドまで来れそうって言ってたじゃない」

「能力的には問題ないよ。でも『アトラスの冒険者』に魅力を感じてなかったみたい」

「どういうこと?」

「ドーラ人は魔物と戦える実力を身につけられる可能性があるってだけで魅力的なんだけどさ。ブローン君は帝国からの移民じゃん? 冒険者って言われても全然ピンと来てないみたいなんだよね」

「そ、そんな……」


 他の移民が働いてるのに遊んでるわけにいかないみたいなニュアンスだったしな。

 興味がないわけじゃなかったみたいだが。


「ブローン君はあたしと移民頭の人が説得したから、とりあえず大丈夫だよ。納得して『アトラスの冒険者』続けてくれる」

「よかったビックリしたお給料下げられちゃうかと思ったあ!」

「バエちゃんにしては早口だったね」


 おゼゼも大事だからね。


「ミラ君とも引き合わせたよ。戦闘面の火力はブローン君でオーケー、回復とドーラの事情を教えることはミラ君でどうとでもなる」


 ギルドまで行けばダンが構うだろうしな。

 馴染むのも早かろう。


「ユーちゃん、ありがとう」

「ユーラシアさん、ありがとうございます」

「新人がものになることは、ドーラの利益にもなることだからいいんだよ。一つ頼みがあるんだ。過去の『アトラスの冒険者』で、ドロップアウトした人の名簿があればもらえないかな?」


 シスターが言う。


「名簿はおそらく存在しません。しかし私が担当した方の脱落者一覧なら用意できます」

「私もわかるわよ。でも、脱落者一覧なんてどうするの?」

「冒険者としてはものにならなかったかもしれないけど、固有能力持ちの有能な人達じゃん? 拾い上げて育てたいんだ。特にミラ君の『白魔法』みたいな、明らかに使える能力持ちは優先で」


 ドーラのためになることなのだ。

 人材はおゼゼより大事。


「わかりました。イシンバエワの分と併せて作製しておきますね」

「ありがとう、助かるよ!」

「助かるぬ!」


 よしよし、ヴィルいい子。


「ごちそーさま。今日は帰るね」

「こちらこそありがとうございました」

「ユーちゃん、またね」

「バイバイぬ!」


 今日ヴィルの『バイバイぬ!』は何度聞いたかな。

 もやしを知ったのは収穫だった。

 転移の玉を起動し帰宅する。

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