第1090話:精霊関係のクエスト
おっぱいさんも何か企みがあるようだな。
あたしが受けるべきクエストでも回してくれるんだろうか?
「ユーラシアさんは、現在のクエストは順調ですか?」
「順調だね。でも今は待ちになってるから小休止かな」
どうやら現在帝国艦隊が積極的に動いていることはないようだ。
ではソロモコが帝国海軍に襲われるとするなら、第一皇子のお葬式のあと、おそらく喪が明けてからなのではないか?
油断は禁物だけれども、フクちゃん何も言ってなかったしな。
「では、こちらの依頼を請けていただけませんか」
「何だろ? あ、石板クエスト?」
おっぱいさんが机の下から一枚の『地図の石板』を取り出した。
揺れる。
石板クエストをもらえると手持ちの転送先が増えるからとても嬉しいのだ。
「『雪の精霊』という転送先になります」
「精霊案件なんだ? じゃ、あたしが請けるべきだね」
「ではお願いいたします」
『地図の石板』を受け取る。
これで新しい転送魔法陣が設置されているはずだ。
明日暇だから行ってみるかな。
ちょっと疑問に思ったことをおっぱいさんに聞いてみる。
「これ、ソル君達がいた時に出さなかったところ見ると、秘密にしなきゃいけないやつなんだ?」
『魔王』や『カル帝国皇宮』よりも?
気を引き締めなきゃいけないやつ?
「というわけでもありませんが、行く先が外国なんです。場合によっては秘密が守られるべきなのかもしれません」
ふーん?
つまり展開次第で微妙と、おっぱいさんが判断してるんだな?
単に精霊が絡むクエストってだけじゃないみたいだ。
面白いじゃないか。
「うん、わかった。頑張るよ」
「よろしくお願いします」
頭を下げるおっぱいさん。
揺れる。
ま、クエストはどう転がるか事前にわかんないこともある。
だからおっぱいさんとはいえ、全容を把握してることはないだろう。
ただし拗れる可能性を見てるってことは要注意だ。
外国へ飛べる魔法陣が増えるのは嬉しいなあ。
『雪の精霊』だと寒い国かな?
「じゃ、サクラさんさよならー」
「バイバイぬ!」
「はい、さようなら」
おっぱいさんと別れ、お店ゾーンへ。
買い取り屋さんで不要なアイテムを処分する。
これで用は終わりだけれども、食堂は、と。
「こんにちはー」
「こんにちはぬ!」
「マウ爺と仲良くしてるところに割り込むなんざ無粋じゃねえか」
「ごめんよ。ちょっとジェラシーが」
アハハ、マウ爺とダンだ。
チュートリアルルームで食事するまでにはまだ時間があるから、お喋りしてこ。
「マウさん、ジーク君とレノアはどうかな?」
「ふむ、三歩進んで二歩下がる様子じゃの」
「いい感じだねえ」
相変わらずレノアがかかり気味でちょこちょこやらかすんだろうが、致命的には程遠いということのようだ。
計算の内だし、経験の内だ。
結構結構、マウ爺もニコニコしてるしな。
「ダンが今月の新人さんの教育係になったんだよ」
「ほう?」
「チュートリアルルームで聞いたのか?」
「そうそう。チェックしてなかったでしょ? ブローン君、『アトラスの冒険者』辞めちゃいそうだったぞ?」
ダンが目を剥き、やや仰け反り気味の姿勢になる。
「何でだ? 普通にやってりゃ楽々ギルドまで来るやつだろ」
「どういう新人だったのじゃ?」
「俺も聞いただけなんだが、ステータス値は前衛向け、固有能力が『マッチョ』ってやつ……」
ダンの説明に頷くマウ爺。
「確かに脱落しそうには思えんケースじゃの」
「だろ? 厄介なクエストでも回されたのか?」
「いや、その子移民でさ。周りの人達が皆畑とか土木の作業で働いてるじゃん? 冒険者やるってのが遊んでるみたいで気が引けるんじゃないかな」
ダンが言う。
「移民ならそれこそ冒険者みたいな毛色の違う役が必要だろ」
「あたしも同感だな。移民頭の人が辺境開拓民っていう、ドーラでいう冒険者みたいな存在だったんだけど、その人しかレベル高い人がいないんだよね。負担が大きいんで、移民の中から『アトラスの冒険者』が選出されるのは歓迎だったんだけど」
思わぬ遠慮の仕方だった。
「あんたが言い聞かせて、『アトラスの冒険者』を続けることを承諾させたんだな?」
「まあ。だってブローン君が冒険者やってレベルが上がって、恩恵を受ける人はいても損する人はいないじゃん?」
ダンとマウ爺が頷く。
「ダンのせいではないんだけどさ。移民は高レベルになれるチャンスの恩恵を感じてないなーって思った」
「考え方が違うってのは、思いもよらねえことだな」
「ふむ、魔物の脅威がないからの」
「帝国には魔物がいねえのか?」
「人がたくさん住んでるところに、野生の魔物はいないかな。飼ってるやつは皇宮にもいるよ」
「「飼う?」」
驚くマウ爺とダン。
「魔物を飼うこと自体がステータスなんだって。あとは研究用とか見世物とか?」
「食うために飼うんじゃねえのか?」
「一番疑問なのはそこだよねえ。ドーラではエルフがワイルドボアっていうおいしい魔物を家畜化しようとしてるんだ。植物の根とかを食べるんだって。イモならよさそうだけど、エルフには何とイモを食べる風習がないんだよ。だから今度紹介しとくんだ」
「あんたエルフにも知り合いがいるのかよ?」
呆れんでも。
画集にアビーがモデルでいるだろーが。
「石板クエストで出たんだ。帝国戦前後あたりで。どういうわけか、あたしのクエストは異種族とか外国とかが多いんだよね?」
「サクラ嬢がそう取り仕切っておるのじゃろ」
「愉快なクエストはあんたんとこ振っておけばいいという、ドーラの共通認識があるんだぜ」
「ドーラの共通認識だったかー」
「だったぬ!」
アハハと笑い合う。
「さっきおっぱいさんに、『雪の精霊』ってクエストもらった。これも外国だって」
「精霊関係は嬢のところが間違いないの」
「雪? 寒い国か?」
「多分。明日行ってみようと思う」
自然現象の精霊は、該当する現象のあるところにいるのが原則だから。
「カゼ引くなよ。もっともあんたなら、カゼの方が逃げていくんだろうが」
「カゼ引いた記憶がないわ。あたしパワフル?」
「元気印だぜ」
「元気印だぬ!」
明日が楽しみだな。
さて、そろそろチュートリアルルームに行く時間か。
「じゃ、あたし帰るね。マウさん、ダン、さよなら」
「バイバイぬ!」
転移の玉を起動し帰宅する。




