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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1084話:脱落した『アトラスの冒険者』

「ところで西域の変わった服飾材というのは何ですか?」


 イシュトバーンさん家への帰り道、ディオ君が聞いてくる。

 ま、ディオ君も何ぞ心当たりはあるんだろうが。


「例えば西域でもかなり西の方のポーンっていう自由開拓民集落で、カラムシっていう植物育ててるんだよね。綿花や麻みたいに服にできるみたい」

「そういうものがあるんですね」

「チョマとも言うんだぜ。かなり丈夫な繊維が取れる。オレが着ているこれもカラムシだぜ」

「あっ、これ麻じゃなかったんだ?」

「出来がいいやつは麻以上に品があるからな。オレは気に入ってるんだ」


 さすがにイシュトバーンさんは色々知ってるなあ。

 ただのスケベジジイじゃないわ。

 しかしイシュトバーンさんが気に入ってるくらいだと相当だな。

 出来がいいやつはって言ってたから、品良く仕上げるのが難しいのかもしれない。


「それからポーン出身の冒険者が、見たことないような鮮やかな黄色のマント着てるんだ。染料苦労したって言ってたけど、聞けばどういうものか教えてもらえると思う」


 ファッションには染料も重要だよなあ。

 特にハッとするようなビビッドな色はなかなかないから。


「海の王国で貝殻はほとんど無価値って言ってたんだ。でも貝殻って可愛いのあるじゃん? 安く買えるんだけど、アクセサリーで使えないかなあ?」

「貝殻はボタンに加工できるものがあるって言うぜ?」

「貝殻を加工したボタンか。洒落てるねえ」


 考え始めるとファッションも面白いな。

 もっともあたしは食べる方に注力したいから、ファッションはあんまり。


「ありがとうございます。色々考えていただいて」

「帝国との貿易を通じてドーラを発展させたいんだよ。ファッションみたいに目に見えるものはいいってわかりやすいからさ。いずれ帝国の力ある店と組んでドーンと宣伝してガーンと売りたいねえ」

「失敗したくねえ部分だな。準備万端で仕掛けたいぜ」


 うむ、一度失敗した仕掛けを提携先が乗ってくれるかっていうと難しいだろう。

 おそらくは一発勝負になる。

 まあプリンスとかリリーとかウ殿下とかに協力してもらって着せて、新聞記者に情報提供すれば食いついてくる人多いと思うけどな。

 あっ、ダメだわ。

 セレシアさんの服は女の子向けだもんな。

 じゃあ広告塔はリリーとあたしか?


 イシュトバーン邸に着いた。


「じゃ、またねー」

「失礼します」

「おう、また来い」


 転移の玉を起動し帰宅する。


          ◇


 フイィィーンシュパパパッ。

 ディオ君を送ってからチュートリアルルームにやって来た。


「ユーちゃん、いらっしゃい」

「純粋にお肉を味わおうじゃないか。何故ならお肉は食卓の帝王だから!」

「そうねっ!」

「明日の夜に持ってくるよ」

「楽しみい!」


 高速クネクネを披露するバエちゃん。

 この技ほんとすごい。

 あたしが見切れないくらいだもんな。


「今日はその連絡だけ?」

「聞きたいことがあったんだよ。今月の新人さんって、もう決まってるんだよね?」

「ええ。三日前に『地図の石板』が発行されてるわよ」

「どんな人?」

「ええと、西アルハーン平原在住の移民の男性ね。ブローン・アーミテージさん一九歳。前衛向けのパラメーターで、固有能力は『マッチョ』」

「予定通り移民からか。どんな固有能力なん? 名前から大体想像できるけど」

「アハハ。攻撃力・防御力・最大ヒットポイントのステータス値に多少のボーナスがつくけど、敏捷性が少しマイナスになるの」


 物理アタッカーとしていい固有能力やん。

 『ジーニアス』ほどオールマイティーじゃないにしても、補正幅大きいのかもしれないし。

 攻撃力・防御力にプラス補正があるなら、仮に初心者だとしても問題なくギルドまで来れそう。


「アドバイザーがダナリウスさん」

「ダナリウス? ああ、ダンか」


 ダンも経験のある前衛だ。

 コミュニケーション能力はギルド一と言ってもいい。

 これまた問題ないだろう。


「ダンはこっちに来た?」

「いえ、何かあったら呼んでくれって」

「うん、あんまり干渉しなくてもよさそう」


 入植地の新人なら、あたしも近い内に様子見てこようかな。

 『マッチョ』見たさ。


「で、もう一つ聞きたいことなんだけど、過去の脱落した『アトラスの冒険者』が復活するってことはないのかな?」

「過去に一度も再登用の例はないけど」

「規定でダメって決まってるんだ?」

「えっ、規定? どうだろう?」


 首をかしげるバエちゃん。


「脱落した『アトラスの冒険者』の中に、ユーちゃん推しの人がいるってことなの?」

「『アトラスの冒険者』に未練のある人がいるんだよ。あたしが積極的に推すとまでは言えないかな。ただやる気はある人だよ。パラメーターが後衛向きでしかも白魔法使いだから、バトルのクエストが完了できなかったっていう理由もわかるんだ。ヒーラーは貴重だし、ギルドまで来れば引く手数多だと思う」

「同情しちゃうケースねえ」

「廃された転送魔法陣の再生が新設よりも簡単にできちゃったりするなら、復活させて損はない人材ではあるよ」


 仮に冒険者として大成できなくても、白魔法使いのレベルが上がってることはいいことだしな。

 もちろんあたしも手を貸すにやぶさかでない。


「この人が今になって『アトラスの冒険者』に戻りたいと言い出した理由が面白くてさ」

「何なの?」

「シスター・テレサにもう一度会いたいんだって」

「えっ?」


 目が点になってやがる。


「二年くらい前の新人さんなんだ」

「ああ、シスターがチュートリアルルームの係員だった頃の新人さん?」

「そうそう。この前画集用の絵描かせてもらったじゃん?」

「あの絵をどこかで見て、恋心が再燃してしまったということね?」

「大正解でーす。応援してやりたいと思わない?」

「やあん、ロマンス!」


 再び高速クネクネ炸裂。

 実に見事だなあ。


「とゆーわけで、明日の午前中にその人連れてくるよ。その時に復活させられるか聞かせて?」

「わかったわ。本部に問い合わせとくね。名前は?」

「ミラって人。ファミリーネームは聞き損なったから知らない」

「二年くらい前にシスターが担当した新人のミラさんね。了解、と」

「じゃーねー」

「ユーちゃん明日は午前中と夜に来るのね?」

「そゆこと! お肉は夜だぞー」

「楽しみい!」


 転移の玉を起動し帰宅する。

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