第1081話:使える人が埋もれちゃってる
「こんにちはー」
「精霊使いさん、お久しぶりです」
青の民族長代理ディオ君と白の民族長ルカさんの両方に会う予定だが、先に青のショップに来た。
挨拶してくれたこの人、『陽炎』持ちの輸送隊員だったな。
「商売の調子はどう?」
「上々です」
「んーそうかな? ディオ君いる?」
「はい、どうぞ」
店の中へ通される。
「あっ、ユーラシアさん! こんにちは」
「こんにちはー。ディオ君があたしに用があるって聞いたんだけど」
「はい……どう思います? この店」
「よろしくない兆候だね」
『陽炎』持ちが言う。
「な、何がです? 売り上げは好調なのですが」
「あんたも気付いてるでしょ? レイノスとカラーズで全然売れてる服が違うことに」
「そ、それは……」
レイノスでも定番商品は売れているが、派手に売れているのはセレシアさんデザインの服だ。
一方こっち緩衝地帯のショップでは、ほとんど定番商品しか店頭に置いてない。
「セレシアさんが最後にカラーズに戻ってきたのいつ?」
「年末年始です」
「カラーズの状況がわかってないんだろーなー」
年末年始に服は売れんもんな。
こっちでも年末は食料品関係と緑の民くらいしか盛況じゃなかったわ。
セレシアさんデザインの特異な服。
あれは人口が多く比較的裕福なレイノス、キュートな売り子、セレシアさんの存在感が揃ってこそ売れるのだ。
カラーズや移民相手では難しい。
「セレシアさんはこっちにどういう指示を寄越してるの?」
「増産しろと」
「想像はできてたけどヤバいなー」
ディオ君が言う。
「しかし自分もレイノス店の状況をこの目で見ているわけではなく、好調だという報告も受けていますので、一概に反対できず……」
「だろうと思った。今からレイノスの店見に行く?」
「よろしいでしょうか?」
「もちろんだよ。じゃあディオ君借りるね。あ、白のルカ族長に呼ばれてるんだったわ。先に白の民のショップに寄ってこう」
ディオ君とともに白の民のショップへ。
◇
「こんにちはー」
「おお、これは精霊使い殿と、ディオゲネス殿?」
しめしめ、ルカさんがショップにいた。
やっぱり白の民のショップは問題ないな。
食料品メインのところは強い。
「あとでディオ君とレイノスのセレシア族長の店を見に行くんだよ」
「量は多くないのですが、白の民の産する革はレイノスの青の民服飾店に納めておるのです」
「知ってる知ってる。イシュトバーンさんもいい質の革だって褒めてたよ」
「ありがたいですな」
和気あいあい。
さて、ルカさんがあたしに用とは何だったかな?
「『アトラスの冒険者』関係であたしに話があると聞いたんだけど」
「はい、少々相談したく。ミラ」
小柄で薄い髪色の男性が現われる。
件の人もショップに呼び寄せてあったんだな。
あたしが来ることを予想してたか。
「ミラです、初めまして。精霊使いユーラシアさんのお噂はよく伺っております」
「よろしく」
握手。
うん、見るからにいい人。
さすがに元『アトラスの冒険者』だけのことはある。
「僕は二年ちょっと前に『アトラスの冒険者』になったんですが、落伍してしまい……」
「それは……残念ですね」
「いや、ディオ君。『アトラスの冒険者』って続けられる人、半分くらいだったらしいんだ。固有能力持ちの才能ある子ばかり選んでてだよ? 今は入ったばかりの新人を先輩が助ける制度ができたから、脱落することはなくなってるけど」
二年ちょっと前だと、デミアンが加入した時期と同じくらいになるのかな?
あたしが入ってからだって、手を貸してやらなかったらエルマとジーク君はまずアウト、ノブ君が見出されることもなかったろう。
ソル君ですらダメだった可能性がある。
思うに『アトラスの冒険者』のやってることは放任し過ぎなのだ。
まあ配置する人員の都合もあるんだろうけど。
あたしはスパルタだとはたまーに言われるけど、放任主義ではない。
どっちがいいかって言われればねえ?
「ミラ君は魔法系?」
「白魔法使いです」
「うわ、そんな使える人が埋もれちゃってるのかよ」
日常でもケガすることなんて多いのだ。
例えば村に一人ある程度以上のレベルの白魔法使いがいれば、安心度が違う。
ルカさんが言う。
「ミラが『白魔法』持ちだということは、ドーラ独立直前に知ったのです。再び冒険者をやりたいと、最近相談を受けましてな。」
「何とかならないでしょうか?」
「うーん、クビになった『アトラスの冒険者』が復活した例はないって話だったな……。西の塔の村で冒険者やる手はあるけど。ヒーラーは引っ張りだこだよ」
「いや、貴重な白魔法使いですので、できればミラには村にいてもらいたいのです」
うむ、ルカさんの言い分もよくわかる。
となるとやはり『アトラスの冒険者』に復活できるのがベストだな。
バエちゃんに聞いてみるか。
ディオ君が言う。
「仕組みがおかしいのではないですか? 白魔法使いなら確実に有用ではないですか」
「『アトラスの冒険者』になって初めの方のクエストはバトルでさ。魔物からダメージ取れる人は続くんだけど、戦闘未経験者だとなかなか。ミラくんも魔物を倒せなくて諦めたんだと思うけど」
頷くミラ君。
「しかし、もう一度テレサさんに会いたくて……」
「「「えっ?」」」
シスター・テレサ?
こういう意表の突かれ方は悪くないなあ。
「緑の民のショップでテレサさんのポスターを見て、再び恋心が募り……」
あれっ? 画集を仕掛けたあたしのせいなのかよ。
シスター・テレサはミラ君よりかなり年上だと思うけど。
「そのテレサというのは?」
「『アトラスの冒険者』の運営側の人だよ。チュートリアルルームという最初の説明を受ける場の係員だったの。あたしが『アトラスの冒険者』になる二ヶ月くらい前に辞めて、今は後任の人になってるけど」
「えっ? テレサさん辞められたんですか?」
ガッカリするなよ。
いや、動機なんて何でもいいか。
「今の係員の上司になっただけで、『アトラスの冒険者』に関わらなくなったわけじゃないよ。あたしも何度か会ってるし」
「そ、そうですか」
「明日、チュートリアルルーム行ってみる?」
「ぜひ!」
「じゃ、明日の午前中迎えに来るよ。ショップにいてくれる?」
「はい」
ルカさんとミラ君に別れを告げ、ディオ君を連れ一旦帰宅する。




