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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1080話:お弁当分だけは働く

「サイナスさん、こんにちはーって、いないや」


 うちの子達と灰の民の村までやって来たが、サイナスさん家は留守だ。

 まだショップか。

 予想の範囲内ではある。


「お土産置いてと。じゃ、お弁当をたかりに行こうじゃないか」

「「「了解!」」」


 緩衝地帯へ。


          ◇


「こんにちはー。お弁当を食べに来ましたよ」

「ハハッ、用意してるよ」

「いただきまーす!」


 うむ、美味い。

 初期と比べて脂っぽさがなくなってるし、小麦粉生地の薄焼きで包まれていて食べやすい。

 進歩してるなあ。


「お土産のお肉とクレソン、サイナスさん家に置いてあるからね」

「うん、ありがとう」

「ところで何の用だったかな? お弁当分は働こうじゃないか」

「いくつかあるんだ」

「お弁当分だけは働こうじゃないか」


 どんだけ働かせるつもりなんだ。

 サイナスさんが笑う。


「警戒しなくてもいいよ。一つはここのこと」

「ここのこと、とは?」


 カラーズのこと? 灰の民の村のこと?

 さっぱりわからん。


「いつまでも『緩衝地帯』って呼ぶのもおかしいだろう? 族長クラスの間でちゃんとした名前をつけようかという話になってるんだ」

「言われてみればなるほどだね」


 今後交易が盛んになると、カラーズ以外の人も来るだろうからな。


「君にも意見を出してもらいたいってことなんだが」

「『美少女精霊使い戯れの園』とか?」

「ちょっと恐れ多過ぎるだろ」

「それもそーか」


 だから声を出して笑えというのに。

 うちの子達は遠慮深いんだから。


「しょっちゅうレイノス行ってる輸送隊の意見を参考にしたらいいんじゃないの?」

「今後移民がこっちへ来る機会も増えるだろう? それも加味したいんだ」

「ふむふむ」


 だから時々帝国に遊びに行ってるあたしの意見が欲しいってことか。

 いろんな人に配慮しようとすると、名付けも案外難しいな?

 あたしの得意なパワープレイの出番じゃないし。


「急ぎではないから、考えておいてくれよ」

「ん、わかった」

「それから青の民ディオゲネス族長代理がユーラシアと話をしたいと」

「今年三つめの縁談かな?」

「ハハハ、向こうにも断る権利はあるからな?」

「何で申し込んだ方がいきなり断ってくるんだ」


 まったくサイナスさんは失礼な。

 完全にプロポーズ前提になってるけれども。


「商売の話だと思う。レイノスのセレシア族長の服屋を実際に見てみたいということだ」

「カラーズにいちゃわからんもんな」


 報告は受けてるだろうけど、ディオ君はセレシアさんの服屋を直に見たことはないはずだ。

 カラーズのショップとは売り方も売れてる服の傾向も違うから、どうなってんだ? と感じてるんだろうな。

 レイノスの状況を知りたい。

 しかしカラーズを留守にすると、セレシアさんの増産要請にブレーキをかける者がいなくなるから危険ってことだな?


 これひょっとしてセレシアさんには真逆のことが言えるんじゃないだろうか?

 つまり自分デザインの服はカラーズでも売れていると勘違いして、増産要請を出している可能性だ。

 カラーズで売れてるのは、あたしが見る限りスタンダードな服だぞ?

 ディオ君はおかしいって気付いても、セレシアさんは気付かず突っ走りそうだしな。

 よろしくない徴候だ。

 

「大体状況はわかった」

「協力してあげてくれるかい?」

「もちろんだよ」


 セレシアさんの服屋はカラーズのイメージを象徴している面がある。

 問題があると交易規模が小さくなっちゃうかもしれないしな。

 セレシアさんに釘刺しとくべきだわ。


「ディオ君も苦労性だなー」

「振り回すキャラがいると、振り回される側が苦労するんだ」

「あれ、おかしいな? うちの子達がすげえ頷いてるんだけど」


 著しく納得いかないな。

 しかし青の民の件は早めの対応が必要だ。

 今日中に片付けちゃった方がいいかもしれない。


「今からディオ君とこ行ってくるよ」

「待った、最後に白の民ルカ族長が話があると」

「ルカさんから?」


 意外だな?

 畜産物も革も調子がいい白の民は、今一番問題なさそうなんだけど。

 ケスも成長してるしな?


「酪農を開拓地に広げるとか?」

「家畜増産の話ももちろん出ているよ。が、努力すれば急に家畜の数を増やせるってわけでもないしな。まあ年単位の計画だ。ユーラシアに相談する筋合いのものではない」

「だよねえ。じゃあ何だろ?」


 心当たりがないなあ。


「『アトラスの冒険者』についてだ」

「今月の新人さんかな?」


 ミサイルをチュートリアルルームに連れてった時以来、バエちゃんに会ってないな。

 当然新人さんも始動してる頃合いか。


「いや、新人じゃないんだ。過去の『アトラスの冒険者』ということらしいぞ?」

「どゆこと?」

「何年か前に『アトラスの冒険者』に選ばれたが、うまくいかなかったんだと」


 そーいえばドロップアウトした『アトラスの冒険者』って、パラキアスさんとヨブ君以外会ったことないな。

 でも『うまくいかなかった』となると、バトルがこなせなくて諦めた可能性が高いか。

 あの二人はあんまり参考にならない。


「白の民にも『アトラスの冒険者』がいたのか」

「ユーラシアがやたらと目立っているから、『アトラスの冒険者』自体の有用性が論じられることがあるんだ」

「実にいいね。『アトラスの冒険者』って固有能力持ちの真面目な子ばっかり選ばれるんだって。あたしみたいな」

「ムリヤリねじ込んで来なくても、君が意外と真面目だってことはわかってるよ」

「『意外と』が意外と邪魔だね。最近は新人に手を貸すようにしてるからそーでもないんだけど、あたしが入った頃は半分脱落しちゃうって言われてたんだ」

「もったいない話だな」


 マジでもったいない。

 思い浮かばなかったことだけど、出身地の皆さんが応援してやるってのもありだったなあ。

 脱落者だって戦闘苦手で落ちこぼれちゃったとはいえ、有能な人材なのは間違いないのだ。

 埋もれそうな人材は発掘して有効活用するべきなのでは?


「やるべきことってたくさんあるなあ。ルカさんとこ行ってみるよ」

「手下にするのか? 洗脳か?」

「言い方がひどすぎてえぐい」


 今のセリフはサイナスさんのマネだ。

 さて、どっち先に行くべきかな?


「じゃ、あたしは行ってくるからここで解散」

「ユー様、私達は夕方まで灰の民の村におりますので」

「うん、わかった」


 まず青の民のショップへ。

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