第1077話:フィフィ一行とデス爺とコルム兄
フィフィ一行に説明する。
「塔の村の村長デス爺はドーラの大実力者の一人で、転移術の権威なんだ。おーい、じっちゃーん!」
真昼の一番星を発見。
「何じゃ、騒々しい……ん? 帝国貴族のお方か?」
「大雑把に言うと、カル帝国の開祖帝が毒矢で射られたところを身を挺してかばった人が創始したエーレンベルク伯爵家の、当代の次男の一家だよ。その次男は男爵位持ってたんだけど、ヘマして爵位剥奪の上幽閉。哀れ一家は当代伯爵にも見捨てられてドーラに来ちゃった」
「何でそんなに詳しいのっ!」
「情報収集は冒険者の基本だぞ?」
「そ、そうなの?」
「いやまあ大したことないの。エーレンベルク伯爵家に侍女として使えていた人の息子が近衛兵になっててさ。教えてもらったんだ」
情報収集が基本なのは正しいけれども。
デス爺がヒゲをしごく。
「名門貴族ではないか。何故このような辺鄙なところへ?」
「伯爵に見捨てられたってところで察してよ。父ちゃん男爵のやらかし方が半端じゃなくて、噂が広まるとレイノスにも住めなくなっちゃうじゃん? だからリリーのいる塔の村へってことなんだ」
冒険者やるような連中は他人の素性なんかあんま気にしないから。
あたしはどうなんだって?
気にするに決まってるだろ。
「ふむ、で?」
「フィフィは冒険者やりたいんだそーな」
呆気にとられるデス爺。
まあわかる。
「……執事か侍従かの御仁が、ということか?」
「いや、執事マテウスさんもだけど、下男のオト君とお嬢のフィフィと三人組で」
「……失礼だが、お嬢さんには向いておらんだろう」
「あたしも最初はムリだと思った。でも性格が冒険者向きなんだよね。三人なら十分イケるよ。ちなみにオト君は『頑強』の固有能力持ち」
「ふむ、お主が言うなら」
任せてってばよ。
三人の内一番問題なのは身体能力も固有能力もないフィフィだが、考えの切り替えも飲み込みも早いという武器がある。
取っ掛かりさえ教えてやれば十分通用すると見た。
「執事さん、冒険者やるのに回せる初期費用はいくらくらい?」
「可能なら五〇〇〇ゴールドまでで」
執事は仕込み杖を持ってる。
最低限必要なのは前衛オト君の装備だな。
となれば……。
「スキル買うときはじっちゃんから買ってね。じっちゃん、『プチウインド』のスクロール売ってる?」
「うむ、最近要望が多いので作ってみたぞ」
「やたっ、ラッキー! 一本フィフィに売って」
スキルスクロールを渡されるフィフィ。
「これは?」
「ドーラでは魔法を売ってるって話したでしょ? これがそう。開いてみ?」
「あっ、不思議な感覚が?」
「おめでとう。これであんたも魔法使いだよ」
「こ、こんな簡単に?」
「空に向かって撃ってみ?」
放たれる『プチウインド』。
うん、何の問題もない。
「威力の低い風攻撃魔法だけど、マジックポイントを使わないという特徴があるんだ。ガンガン撃ちまくって感覚掴んで」
「わかったわ!」
「じっちゃん、じゃーねー」
「うむ、期待しておるぞ」
残り四〇〇〇ゴールドか。
母君と侍女二人を置いて、路地を通りパワーカード屋へ。
「怪しいところね?」
「うーん、ズバリその通りでしょう」
「こら、オレの店にわざわざケチをつけるな」
「えっ? 店主の方にケチをつけろって?」
「そんなことは言ってない!」
アハハと笑い合う。
店主コルム兄はあたしの従兄だと軽く説明する。
「で、彼女達は?」
「帝国の元貴族の移民だよ。フィフィはリリーの知り合い。三人で冒険者やるから、パワーカードの説明してあげてよ。ちなみに執事さんには『ホワイトベーシック』持たせてる」
「了解。パワーカードは一〇〇年以上前にロブロというドワーフによって創始された装備品と言われています。基本的に武器防具の区別がなく、七枚まで装備して同時起動できます」
執事が問う。
「……ということは、攻撃力の上がるカードだけ、魔法力の上がるカードだけを装備するということも可能?」
「可能です。仰るような工夫をして戦う装備です」
「ここで売ってるパワーカードは、大体一枚一五〇〇ゴールドなんだ。一人前七枚揃えると一万五〇〇ゴールド、これは普通の装備品よりかなり安いね」
「確かに……」
「フィフィ、あんたはゴッソリ素材やアイテムを採取してきて売り捌くつもりなんでしょ? ということだと装備品はできるだけ軽い方がいいから、パワーカードは向いてる」
「そうねっ!」
探索メインの冒険者にとっては、パワーカードに勝る装備品はないと思う。
「普及品だけでもメッチャいろんな効果のカードがあるからね」
「欠点はどうですか?」
「通常の装備品とは効果が干渉しますね。パワーカード装備体系を採用するなら、それだけを装備するのが無難です。戦闘中に効果のあるマジックアイテムなんてもっての他です」
「伝説の装備なんてものをもし手に入れても使えないってのはちょっと悲しいかな。でも逆に、こんなのが欲しいっていう融通が利きやすいよ」
「例えば?」
「これはコルム兄に特注で作ってもらったやつだけど」
『アンリミテッド』を見せる。
「【衝波】属性……あっ、それで!」
「何なのマテウス。知識を披露してもよくってよ」
「お嬢様、人形系レア魔物は普通の攻撃では効果がないのですが、これを使用すればダメージが入ります!」
「簡単に言うとデカダンスを簡単に倒せるってことだよ」
「一枚買いますわ!」
コルム兄苦笑いしてるじゃねーか。
いや、あたしもフィフィの立場だったら、買うもしくは寄越せって言ってたかもしれないな。
フィフィの判断力は大したもんだと思う。
「どうどう。これは『逆鱗』をはじめとするレア素材をたくさん使った特注品なんだ。足んない素材を持ってこないと作ってもらえないぞ? それなりに高価だし、今のあんた達は七枚の装備枠を埋めるほうが先」
「ドラゴンを倒せないと作ってもらえないということなの?」
「いや、地下で活躍するメンバーが多くなればレア素材も出回るはずだよ。必要になった時頼めばいいと思う」
「ところでパワーカードは御入用ですか?」
「『スラッシュ』と『武神の守護』を一枚ずつ。オト君に」
よーし、あとは念のために脱出の札を買って、まず入り口階にチャレンジだな。
弱い魔物と直に戦わせてみよう。




