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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1076話:ドラゴンを倒すだけの実力

「ユーラシア、助かったぞ」


 塔三一階ウシ子の部屋から戻ってきた。

 レイカが上機嫌だ。


「これで私達も地下へチャレンジだ」

「うん、頑張れ。村のため、ドーラの発展のために搾取されてろ」


 アハハと笑い合う。

 フィフィが聞いてくる。


「今の貴方の悪魔とのやり取りは、普通に思えるのだけれど?」

「コツがあるんだ。悪魔はフェアな取り引きを好むから、こっちが何か提供してやって向こうから何かをもらうって風にすれば、比較的友好的に付き合えると思う」

「今の場合、交換したのは情報か」

「では、魔宝玉の分だけ損な取り引きなのでは?」


 そーゆー考え方もできるが。


「情報の重要度が違うんだな。あたしの聞いてたことは世界の安定に関わることなんだよ」

「どういったことですの?」


 魔王が配下を納得させるやり方とソロモコで起きていること、帝国の海外遠征について話す。

 呻く執事。


「まさか世界を揺るがすような事件が起きつつあるとは……」

「必ずソロモコが攻められると決まったわけじゃないけど、どうも帝国軍の遠征は実現する気配だね。まーソロモコはあたしの楽しみだからいいんだ。第一皇子のお葬式が終わると、帝国艦隊が動き始めると思う」

「大変じゃないか」

「大変と言えば大変かな」

「どうするんだ?」

「もし本当にソロモコに帝国艦隊が攻めてくるなら、丁重にお帰りいただくんだよ」

「丁重に、か」

「帝国との関係が悪くなるとまたドーラとの貿易が細るから、都合がよろしくないじゃん? 穏便にすませたいの」

「損得ですのね?」

「そうそう。フィフィはよくわかってるな」


 段々フィフィの感覚が磨かれてくるなあ。


「で、悪魔との付き合い方の話に戻るけど、ヴィルみたいな特別いい子は例外だぞ? 普通の悪魔はすぐマウント取ってこようとするから、取り引きするためにはまず自分を認めさせなきゃ話になんない。ただウシ子に限って言えば、あの子はおゼゼが大好きなんだ。もう面識はあるし、会うなりお土産渡して貸しを押しつければ、話くらいは聞いてくれるはず」

「今日のお土産の黄珠にはそういう意味があったのか。手本だな?」

「まあね。得な取り引きだと思わせれば、少なくとも機嫌よくさせることはできる」


 これは多分どの悪魔でも共通だと思う。

 人間でも一緒か。

 サービスされて気分悪くなることなんてない。

 執事が聞いてくる。


「もし見たことのない悪魔に遭ったら、どう対応したらいいでしょう?」

「そんなことはないと言いたいけど、あたしも今年になってからウシ子含めて三人新しい悪魔に遭遇してるからなあ。ないとは言いきれないか」

「ユーラシアだけだ」


 笑いごとなのかよ。


「まず落ち着いて、怖がったりしないようにね。悪感情を搾り取れると思われたら、玩具にされるぞ?」

「話し合いはムリですか?」

「んー、ドラゴンを倒せるくらいの実力があれば」


 ヴィルみたいに好感情好きという理由がなくても、何らかの事情でフレンドリーな悪魔はいるのかもしれない。

 でもまあ自分のレベルが六〇くらいはないと、知らん悪魔に自分を認めさせて交渉することはできないんじゃないか?

 もしくは悪魔に好かれる体質とか、言うこと聞かせる条件を握ってるとかじゃないと。

 結構難しい。


「ドラゴン……ですか。不可能に近いですね」

「いや、帝国の人はそう思うのかもしれないけど、ドーラだと不可能ではないの。例えばレイカのパーティーだって、今年中にドラゴン倒せるだけの実力を身につける可能性は高いんだ」

「「「えっ?」」」


 レイカパーティーが素っ頓狂な声を上げる。

 あんた達『アンリミテッド』持ってて人形系レア狩り放題だろうが。

 塔の地下が魔境相当なら、きっとクレイジーパペットやデカダンスが出るから、普通にやってりゃレベル上がるぞ?


 フィフィが言う。


「『輝かしき勇者の冒険』を地で行くことができますのね?」

「あんたも『輝かしき勇者の冒険』の読者なのかよ」

「どんな内容なんだ?」

「悪いドラゴンを勇者が頑張って倒しました、ハッピーエーンドみたいな」


 レノアの愛読書だ。

 イマイチ何が面白いのかわからんやつ。


「ドラゴンって強くて悪い魔物なんでしょう?」

「強いことは強いけど、普通の魔物だよ? 別に悪いことはない」

「顎の下に無敵の鱗が生えてるとか」

「『逆鱗』? 無敵ではないんじゃないかな。これだぞ」


 ナップザックから取り出して見せてやる。

 興奮気味の執事。


「『逆鱗』! 素晴らしい。本物です!」

「執事さんは素材の知識もあるのか。あんたらは楽勝で冒険者が務まるなあ」

「私達も勇者様のようにドラゴンを倒せる?」

「え? フィフィは生活のために魔物倒すんじゃなかったの?」

「貴方はどうだったの?」

「魔宝玉狩りしててレアドロップの黄金皇珠拾おうとした際に、レッドドラゴンが襲ってきたんだよ。初めてドラゴン倒したのはその時」


 ジンが言う。


「その話本当だったんですか? いろんな派生バージョンが広まってますけど」

「嫌だなあ。あんまり格好良くないから、引けない状況だった、苦難を押してドラゴンに立ち向かったってバージョンに差し替えてよ」

「ユーラシアがつまらない話を推奨するとは」

「あたしのイメージも考えてよ。ドラゴンスレイヤーの『ド』は貪欲の『ド』とか言われそう」


 アハハと笑い合う。


「私もドラゴンを倒してみたいわ!」

「ドラゴンを倒して得られる『逆鱗』は、苦労する割に売値二〇〇〇ゴールドちょっとにしかなんないぞ? 同じところに生息していてコツがわかれば簡単に倒せるデカダンスは、ドラゴンよりずっと経験値が高い。その上透輝珠一五〇〇ゴールドを必ずドロップし、たまに黄金皇珠二万ゴールドを落とすから……」

「私もデカダンスを倒してみたいわ!」

「食い気味に来たね。フィフィは損得に関して実に敏感だなあ」


 大事なことだと思うけどね。

 効率考えないのは時間のムダだよ。

 ただしデカダンスを倒そうと思うと、荒ぶったドラゴンに襲われる可能性もまた高いのは事実。

 ドラゴンを倒す実力か、少なくとも逃げる手段は必要なのだ。


 レイカが言う。


「では、私達は仕事だ」

「行ってらー」


 レイカパーティーを見送り、フィフィ達に向き直る。


「さて、村長に挨拶までは皆で行こうか。その後冒険者組の三人にレクチャーだよ」

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